プロローグ -襲来-
読んでくれる方へ初めに…。この小説は残酷な描写などが含まれています。もしそういう描写がお嫌いな方は、気分を害する前に読むのを控えましょう。内容は残酷ですが所々面白い場面を入れるよう工夫しています。作者は初心者ですが、是非最後まで読んでくれると凄く嬉しいです。
『それは、突然の出来事だった』
燃え盛る街。そこら中を飛び回る飛行物体。人間を襲う生命体。
武装した生命体が人間を隅々まで抹消してくる。
「おい!威神!お前も早く逃げねぇと俺達殺されちまうぞ!」
俺は焼け野原となった街を只ボーッと見ていた。
所詮人間は宇宙人にとってシュミレーションゲームにしか思っていない。
こんな感じで大災害を起こす事も容易であろう。
火の海は、瞬く間に全世界へと広まった。
その日の朝は、いつも通り平和じゃないとも言えないがまあ普通に平和な日であった。
日本の某中学校に通う二年生の俺威神京は、いつも通りだった。
「おはよう威神くん!タコは地球外生命体だよ!」
「おはよう、何で第一声がタコなんだよ」
こいつは宇宙人信者の菊田浩市。
何故か中一からの付き合いだ。何故、何時、どういう経緯でこいつと仲良くなったのか覚えていない。
「威神ー!お前今日日直だろ、黒板消してくれー」
「何で朝っぱらから黒板が落書きだらけになってんだよ…」
「いいじゃん別にー、もう先生来るから急いでー!」
こいつは田中樹鳥。
一年生の時は入部したサッカー部で良い成績を叩き出して注目を浴びたこいつ。
今年入ったらまた凄い一年が現れてこいつはもうオワコンである。
浩市とも仲が良いらしく、小学校からの付き合いらしい。
黒板を消し終わったので「ほい、消しておいたぞ」とあいつに言う。
「あ、ついでに黒板消し綺麗にしといてー」
とあいつは自分の椅子でリラックスしながら命令してきた。
その態度が気に食わなかったので俺はあいつに黒板消しを投げつけた。
黒板消しは顔面にクリーンヒットし、あいつはその粉末で噎せた。
「指図すんなボケ、お前がやれ」
と俺は言い放つ。
「酷いじゃないか威神君!あぁ~、前が見えないんじゃけ~」
と言いながら水道へとヨロヨロと歩いた。
途中女子の悲鳴が聞こえた。あの真っ白な顔見たらそりゃ驚くだろうな。
その時だった。
女子の悲鳴はあいつの事ではなかった。
廊下からは不気味な声。顔も既に洗い終えていたのか、あいつの悲鳴も聞こえた。
俺はすぐさま駆けつけると、そこにいたのはタコ。
…タコ?こいつはタコなのか?
足は8本、見た目もタコだが、色が真っ白でヌルヌルした液体に覆われている。
「何だ…これ…」
皆の視線が集まる。
そこで科学部の男子が顔を近づける。
タコをまじまじと見つめている…。
その時、タコから謎の液体が放出され、その液体は男子の顔面に直撃した。
悲鳴をあげながら顔を覆い隠そうとする。
その顔は…まるで溶けるようにずりずりと落ちてゆく。
そのうち、男子の顔面は原型をとどめなくなり、タコはその男子にかぶりついた。
恐怖でしかなかった。そこにいた生徒達は悲鳴を上げて逃げ出した。
「おい何だこれ!タコじゃないのか!?」
「わからない!でもとにかくあいつは危険だ!」
「いや、でもタコだし地上じゃそこまで速くないんじゃ…」
タコは未だにあの男子を食べている。
いや、何か様子がおかしい。腹に穴を空けて…卵を産んでる!?
「き、気持ち悪ぃ…こんな気色悪ぃもん見てらんねぇ!」
そう言って田中は俺に背中を向けそのまま生徒達のもとへ向かった。
俺だってこんなもん見たくねぇよ。でも…。
「す、すごい!すごいよ威神くん!これは絶対に地球外生命体だ!」
このタコに夢中の興奮した浩市を保護しなければならない…。
「おい浩市、もう行くぞ!お前もこうなるかもしれないんだぞ!」
必死に急かすが聞く耳すら持たない。
「すごい!すごいすごいすごい!持ち帰りたい!」
「こんな時に何言って…っ!!」
それは一瞬の出来事だった。
浩市の顔面に取り付いたタコは勢いよく謎の液体をぶちまけた。
浩市は顔面の激痛に耐えられずそのまま倒れ込み、悲鳴を上げた。
「浩市!!」
浩市は必死に対抗しようとタコを両手で掴むが、掴んだ瞬間目に見えるくらいの電気を発した。
助けたいが、怖くてどうしようもできない。
「威神、うぁ!…くん!早く…に、ぃぃっ!逃げる…んだっ!!」
浩市が俺を必死に逃がそうとする。
当然友人思いな俺は見捨てる事が出来なかった。
「今回は…いぃっ!僕…の不注意…だ!威神…くん…いっ!…は関係…な、い…んん!僕のせい、で、ああぁぁ!!…君を死なせる…わけ、ぇ…には…いかない!!」
「で、でも…浩市…」
どうすればいいかわからない。ここで浩市を見捨てれば絶対に後悔する。
だが、浩市が終わったら次は俺が襲われる。勿論死ぬのは嫌だ。まだ…まだ死ねない。
「早…く!威神…くん!」
浩市の為にも…俺の選ぶ道は一つ。生きるんだ。
「浩市…お前の仇、絶対取るからな!!」
校庭に出ると、そこはまさに地獄。
大量のタコに喰われてゆく人々。
昇降口の真ん前に倒れていたのは泣きじゃくって目の下を赤くする田中だった。
「田中!どうし…っ!」
田中の腹にはタコがいた。
「田…中」
「威神…ハァハァ…逃げろ、げほっげほっ…もう…ぐわぁぁっ!…俺はダメだ…早く…ハァ…ハァ」
大切な友人を二人も失った…校庭にはタコが何十匹もいる。
すぐに田中は死んだ。
もう、遅い。この謎の生物達からは…逃げられない。
「うわぁぁ!!」
…夢。またこの夢。
時計を見ると、午前7時だった。
「はぁ…」
窓のカーテンを開ける。
街はいつも通り。戦場と化していた。
最後まで読んでくれた方へ…。如何でしたでしょうか。プロローグなので短かったでしょう。本編からはより面白くしていくので是非ご期待ください。あとがきまで読んでくれた方、本当に有難うございます。また次回お会いしましょう。