大会編20・想い届いて
ギラとイツキが街中を捜索しているところに、珍しい魔族がいた。
乱暴そうな馬と牛の獣人が、人すら入りそうな大きな鞄を持って裏路地に入っていく。
「ねえギラさん、突然だけど何ヶ月か前、この大陸で麻薬を取り扱った魔族がいてね、その人はここの裏の辺りで売買してたの」
「ほほう、興味深い話だ。それはそれは大きな鞄を持っていたのだろう」
二人が後をつけると、裏路地の最初で二人は待ち構えていた。
「はっはぁ、素人同然の尾行だなぁ小娘!」
「へっへぇ、男と女、カップルかぁ? 好奇心は抑えた方がいいぜ」
牛と馬は金棒を持って、ギラとイツキを睨む。
「イツキ殿、後ろに……」
「隠れなんかしないわよ? こちとらネロに負けてムカッパラなんだから!」
ギラは構えを取り、イツキは秘術の新しい方の銃を装備する。
「私牛肉の方が好きだからこっちね」
「なら、俺は競馬でも始めるか」
牛と馬が金棒を振ると、二人は別々の方向に跳んだ。
試合は割愛。鳥もちで滅茶苦茶になった牛とぼこぼこになった馬は、今複数の魔族とともに様々な悪事を企んでいることが発覚し、ギラがそれをナミエに伝え、厳戒態勢を敷くこととなった。
問題は彼らが持っていたものが、アリスの使っていた麻薬『ヴァルハラ』であることだが、それはしばらく後の話である。
ネロとエレノンはたった今、魔族とそれ以上に恐ろしい者を見つけてしまった。
「ぎゃあああっはははははははああああぁぁぁ!! 痛いなァ!? 痛いよなァ!? 私だって熱いんだからお前はよっぽど熱いんだろうなァ!?」
二匹の、蟻と蛙のような魔族が既に息絶えているのが見える、死因は分からないが、切り傷のような派手な傷がないので、毒や打撲によるものだろう。
今、異常な目をした女はゴミ箱に蜂のような魔族を左手で無理矢理押し込みながら、右手でフラスコから液体をかけている。
液体を浴びた蜂は叫ぶ、肌はシュワァとあわ立つ音が僅かに聞こえるが、ほとんどが蜂の想像を絶する悲鳴にかき消されている。
「うひひひゃははひゃは!! あっちィ! なんだこれ!? 滅茶苦茶手が熱くて痛いィ!? お前は全身がこうなんだよなァ!? あああっははははははっはひ、ひひ……」
笑いすぎて息も絶え絶えなイェルーン、左手で蜂を押し込んでいるがために同じように酸を浴びて、その手は真っ赤に染まっている。
最初ネロ達が見た時は、蜂はばたばたとゴミ箱から足を天に向けていたが、だんだんと足がゴミ箱に沈んでいく。
「あ~、もう死んじまったのか? 可哀そうに……健やかで実りある人生を送れたことを祈る。お前だって親が居て、友達がいて、ほらこの蛙やアリンコみたいな仲間がいて、みんなと一緒にご飯食べて、最近忙しいだの、風邪引いちまっただの言って、くっだらねえ会話に人生の幸福を感じていたんだろう。そ、れ、に、子供だっていたかもしれねぇ。休みの日にはテーマパークに連れて行ってやったり誕生日にプレゼントをやったりごちそう食べさせたり肩車してパパと遊ぼうなんて言っちゃってたりするのかもなぁ、本当に心底そんな生活を送っていたことを切に願うぜぇ、なんてったってそ、の、ほ、う、が、不幸になる人間が多いからなぁあああああああああああああああああああああああ!!」
止めと言わんばかりにイェルーンは蜂の両足を両手で掴み、ゴミ箱の奥底へ突っ込む。
「ぎゃあああああああああイッテえ! 痛いけど……痛いけどよぉ、仕方ないよなぁ」
両腕が真っ赤に染まり血に滲みながら、イェルーンはゴミ箱から離れ、蛙と蟻の遺体をゴミ箱へと運ぶ。
「これが命の重みって奴なんだよォ、この世に誕生した貴重な生命、私の痛みだけで済むなら軽いもんだが、同時に私にとてつもない幸せもくれる。いいこともあって、悪いこともある、これが命の重み、これが人生かぁ……」
独り言が終わった時に、エレノンが前へ出た。
「……待て」
「え、エレノン!!」
「お、……人間……二人……」
冷静に計算するようにイェルーンが呟くが、怒りに燃えるエレノンには関係がない。
「……人殺し」
「魔族殺しですねぇ、それより君達は一体なんなのカナ? 何を待って欲しいのカナ?」
イェルーンはついさっき自分が殺したリーバスとか言う魔族の口調を真似るが、既にイェルーンにとってその存在は夢か何かみたいなものだった。
「……その人達を、どうする気?」
「エレノン! 誰かを待ちましょうよ! たぶんリースさんやイツキさんもここに……」
イェルーンの目が楽しそうに笑うのを見て、ネロはすぐに口をつぐんだ。
「はっはぁ~ん、学校の子なのねェ? よゥし、君達とそのお友達を殺さない代わりに、私を見逃してくれ」
墓穴を掘った、と顔を青ざめるネロをエレノンは睨み、すぐに咳払いしてイェルーンになおる。
「……別に、学校の子じゃないけど」
「嘘嘘うそつきー、トラブルメーカーと転校生の名前くらいは……」
「……イツキはともかく、リースが転校生と分かるあなたも、学校の子。先生に聞けば、調べがつく、茶髪眼鏡の変人」
「やっっっっっっっっっっっっっっっっっばあああああああああああああああああい! なんたる知恵者! いや私も元々イツキくらいしか知らなんだがちょっとテンションあがりすぎて見知らぬ転校生のことも転校生と言う程にはオーバーヒートだったわけだ! 隙をつく素晴らしい作戦だなぁ!」
「……黙れ、今、私は怒っている」
ネロが止めようにも、エレノンの激昂は間違いないらしく、今にも球がイェルーンに向かって飛びそうである。
「怒っている。そう、嫌なことでもあったの? 元気は出した方がいい、人生ってのは意外なところであっさり終わるから、一秒一秒を後悔なく生きるように……」
「怒っているのは貴様にだ! どうしてそんなに無残に人が殺せる!? ゆ、許せない……!」
エレノンの叱責を浴びても、イェルーンには意味が全く分からない様子だった。
「そう言われても、そういう秘術だからねぇ……」
人殺しタイムを終えてテンションが下がりつつあるイェルーンとの会話はいまいち要領を得ない、そのためにますますエレノンの怒りが強くなる。
「違う! 人生が大切ならば、人生を重要なものと思うのなら、他人の人生も大切にしようよ……!」
「そうは言っても、やっぱり自分の人生が一番でしょうよ。これはもう生き方の問題。えじゃないか、別に君らに危害加えるつもりはないし」
「……駄目、許さない。あなたを捕らえて、先生に連れ渡す。ネロ!」
「は、はい! ラージサイズ二重奏・行進曲!」
規則正しく歩くネロの後ろ、エレノンが板状玉による飛行と二つ分の球のロッドで武装する。
「……あなたが本当に幸せになるには、罪を償わないと駄目、押し付けでも偽善でも、絶対にその方があなたのためだから……痛いのは我慢!」
「い、痛くてもごめんなさいですよ!?」
ネロとエレノンがそれぞれイェルーンに言葉をなげかけるが、イェルーンは気にしていない様子でフラスコから液体を飲んだ。
「私のためねぇ、かれこれ何年かぶりに聞いたわ。エレノンね、覚えとく」
普段より速く歩き、ネロとエレノンの行進がゆっくりとイェルーンを追い詰める。
「……ああ~、しみ渡る。この薬が本っっっっっっっっっっ当に、沁みるのよォ!」
イェルーンの薬の一つのドーピングである。筋肉が膨らみ外套の下一杯に広がる、それは力のみではなく現実離れした速度をもイェルーンに与える。
まずイェルーンが硫酸のフラスコを投げる、ネロがそれを切るが、エレノンがロッドから球を一つ分離し、板にして液体を防いだ。
「ネロ! 無闇に切るのだめ!」
「えええっ!? でも私、切るしか能ないですよ!?」
その隙に、イェルーンはもう二人の間に入っていた。
フラスコを地面に叩きつける。
「忘れろォ、ははは!」
液体が瞬間的に煙になるとその場に立ち込める。
「しまっ……!」
「エレノン!」
ネロとエレノンは顔を合わせるが、間もなく昏倒した。
倒れた二人を眺めて、イェルーンは溜息を吐く。
「よく見たら、よくこの辺にいる女の子じゃァないか。意外や意外、熱いハートの持ち主であるなぁ」
イェルーンも裏路地の住人であるために、裏路地でたむろしているエレノンの顔くらいは知っている。
蟻と蛙の死体をゴミ箱に運び、コンクリート化する薬を撒いてから、更に綺麗さっぱり血液を浄化する薬を辺りにばら撒く。
「にしても今日は大盛況だった。魔族五人に、魔女一人に、女二人。これでしばらくは暮らしていける」
そして、イェルーンはその場を去る前に、倒れているエレノンの顔をすぐ傍で見た。
「エレノンちゃぁん? 私だって本当はこんなことしたくないんだよォ? 不幸な境遇で、お金がなくて、貧しいからこんなことを、いやいやしているんだよォ?」
口をニィと笑顔に歪めて、イェルーンはエレノンの頬を撫でて、その場をあとにした。
イェルーンは人を殺すが、学校の者は殺さないようにしていた。彼女とて人を殺せば探す者が出るくらい分かるし、死神ニーデルーネの存在は知っているからこそだ。
しばらくスノウに抱かれたままのリースは突然スノウから離れた。
「すまない、突然こんなことをして」
「平気。それより、何かあった?」
スノウが変わらぬ調子で聴くと、リースは思い出したように大きな声を出す。
「私はシズヤという女性を捜しに来たのだ! 知らないか?」
「聞いたこともない」
「だったら探しに行く! それにしてもさっきは本当にすまなかった。私はリース・ジョンという。もし何かあれば頼んでくれ」
「はい」
走っていくリースを、ただスノウは見送る。
その後に強さの秘密を聞くことを思い出したが、リースが知るわけがないと締めくくった。
一方のリースが走り回るも、気恥ずかしさと不安に、孤独を嫌がる想いの方が強まる。
イツキもレンもいない、元の場所に戻ればレンと待ち合わせが、しかしその場所の戻り方も分からない。
そんな中で、シズヤを発見した。
裏路地の中に誰が作ったのか、偶然できた広いスペースにチョークとゴミで作られたバスケット場、そのベンチにシズヤは目を閉じて座っていた。
「シズヤ!!」
リースはすぐに走っていくが、突風に煽られてリースは仰向けに転んだ。
「近寄らないで、リース」
起き上がったリースがシズヤを見て、息を呑んだ。
鋭く人を嫌い、憎む目は、かつてシズヤが誰にも一度も見せなかった姿。
いつも穏やかな笑顔で、人を小ばかにするようなシズヤにしては珍しいほど、今のシズヤは雰囲気も刺々しい。
「シズヤ、一体どうしたというのだ? なぜ急に逃げ出した?」
「リースには分かんないの? 私が皆の前から姿を消した理由」
「ああ、ちゃんと言ってくれないと分からない」
そう言ってリースが立ち上がり、ぱんぱんと埃を払う。
シズヤの怒りはいまだ収まらない様子だが、会話をする気にはなったらしく、立ち上がった。
「リース、私は、私は本当にあなたのことが大好きなの、愛しているの、知ってた?」
「ああ、前に聞いた。私も主が好きだ」
「嘘つき!」
風が吹き荒れ、バスケットゴールがみしみしと揺れる。
「嘘? 私は嘘など吐いていないぞ!」
既に小さな体のリースは吹き飛ばされそうだが、こらえながら暴風の中でシズヤを見据えた。
「リースは私のことなんか愛していない! リースはただ、強い私と戦いたくて興奮しているだけなんだよ……ただ私が強いだけで……私が弱かったら、リースは私のことなんかどうでもいいんだ!!」
地面が割れ、巨大なハエトリ草のような植物が二本、リースに牙を向くように威嚇する。
「そんなことはない!! 私は、例え主が弱かったとしても、私は主のことを……」
「嘘だよ、そんなの、嘘だ……」
シズヤが悲しげに俯くと同時に、植物がリースに襲い掛かる。
だが、リースは動かずに左手と右の脇腹を噛まれた。
酸が流れ、服と肉が溶ける音が聞こえた。
「リースっ!? どうして……かわさないの?」
植物はおずおずとリースから離れる。
噛まれた腕も脇も赤くなっているが出血にも至らず、ひりひり痛む程度であろう。
だが、リースは涙を流していた。
この大陸に来てからリースが悲しみに涙を流したことがあろうか、それよりもその表情。
理解されないことを悲しみ、えづき、涙を流すリースは、悲痛でいたいけな少女でしかない。
シズヤは少しだけ後悔を感じた。恋心を間違って受け止められた自分を同情されるべき人間だとは思ったが、かといってリースを虐めるのはお門違いなのかもしれない。
「……私はっ、シズヤと、一緒にいたい」
消え入りそうな声になりながらも、リースが一生懸命そう言うと、泣きながらもゆっくりとシズヤの方へ歩いた。
シズヤも植物も完全に硬直していた。驚きで茫然としていたと言った方が正しいかもしれない。
「確かにシズヤは憎まれ口を叩くし、意地が悪くて私を馬鹿にする。それが腹立たしくて、許せないこともあった」
シズヤはきゅっと自分の袖口を掴み、その言葉を聞いた。
「けれど主は、私のことをいつも守ってくれた。守られたい、なんて貧弱なことを言うのも憚られるが、向こう見ずで常識がないという私を、それよりも滅茶苦茶な方法で助けてくれる主に、抱いているのは、間違いなく……その……」
言葉の途中で走り出したシズヤが、リースを抱きしめた。
二人は勢い余って倒れるが、それを気にする者はいない。
シズヤがリースの背中に手を回すと、リースがシズヤの背中に手を回し返す。
「リース! リースリースリースっ!」
「ああ、シズヤ、私は、私はどうしてしまったのだろう……分かり合えることが、こんなにも幸福だなんて……」
二人の涙は止まらない、その涙にはいくつかの意味があるが、今は嬉し涙であろう。
「ごめんね、リース、ごめん、色々、いっぱい、ごめん」
「私もだ、心配させた。これからは……これからは、どうしたら良い?」
「え?」
充分近すぎるのだが、それでも二人がほんの少し顔を離して、リースが尋ねた。
「好きな者同士が何をするかなど、私には分からないのだ」
照れる様子もなく、本当に分からなくて困っているようなので、シズヤが返答に困る。
「え、ええっと、好きな人同士と言えば……」
手を繋いでなんとか、デートとか、キスとか……と考えたところでシズヤの顔は真っ赤になった。生殖活動など考えにも及ばないところである。
「それは、その、えっと、一緒に居ることから始めよ?」
「……それも、そうだな」
そう言ってリースは、シズヤの頭の後ろに手を回し、シズヤの唇と自分の唇を強引に重ねた。
「んっ!!」
シズヤの目が大きく大きく見開かれる、対するリースの目は涼しげに閉じられていた。
「……ん」
シズヤもゆっくりと目を閉じ、リースが満足するまで待った。
ほんの少しの時間、けれど永遠にも思える時間が過ぎて、ゆっくりとリースは手を離した。
「また、驚かせてすまない」
シズヤはぷるぷると首を横に振った。
「私とて、愛する者同士が接吻をするくらいは知っているのだぞ?」
自分の真下でふふん、と自慢げに笑うリースがたまらなく可愛く見えた。
心臓があまりにバクバク鳴るので、シズヤはリースの上からどいて、座って深呼吸をする。
「どうした、シズヤ?」
同じように起き上がったリースがシズヤに顔を近づけると、シズヤが両手でバッテンを作り二人の顔の間に挟む。
「ちょ、ちょっと休憩! その……私……初めてっ! ……だから……」
「そうなのか? イツキがクラスメイトの初めてはみんな奪ったと言っていたが」
まるでなんてことないようにリースが言って、シズヤは思い出した。
友好の印だとか、元服祝いだと適当なことを言って、イツキに連れられた居酒屋。
自分はまだ飲めないから、とオレンジジュースを煽っていたあの瞬間。
イツキの真っ赤な顔が、どんどん自分の顔に迫ってきて……。
「そ、それは……でも心的には一度目だから! 初めてはリースなのっ!」
弁明するように、それはリースにも自分にも納得行かせるように必死でシズヤが言うが、リースは全く気にしない風であった。
「イツキも初めてが大切だと言っていたが、私はそんなもの気にしないぞ」
「き、気にしてよっ! それは、気にすべきだよ」
そんな思い込みこそ、初心な女のものである、武人であるリースには関係ないし、擦れた大人にも関係がない。
だがシズヤはそれを大切にしたい、それだけでなく、自分の中でこれほど特別になったリースとの沢山のことを大切にしていきたいのだ。
「気にすべきか。その辺りはシズヤと気が合わなさそうだ」
「えっ!? それは合わせて! あ、愛し合うんだから、色々とフィーリングを合わせてというか……」
「私は色々ズレているらしいからな、それは無理だろう」
そう言われてはシズヤも言葉を失くす。格闘の大陸というやつはあまりにも文化が違いすぎる。
「だから、シズヤが私を補って欲しい。私に足りない全てをシズヤが埋めてくれ」
「っ!! も、もちろんだよ!! 私がリースを支える!」
一生懸命シズヤが答えていて、いつの間にか自分がリースにいいように使われている気がして、何か言ってやろうと考えるが。
「そうか、ありがとう。ちなみに、私はさっきのが、人生で初めての接吻だった。私の初めては、シズヤに奪われてしまったな」
そう、嬉しそうに笑うリースの微笑みを見て、シズヤはまた顔を真っ赤にして言葉を失ってしまった。
元の場所に戻ってシズヤを連れてきたリースであるが、シズヤがリースにピッタリとくっつき、しかも両手で腕を持っているのでレンは尋問せずにいられない。
だがシズヤの鋭い視線でそれをいなすと、結局レンも何も聞けずじまいであっる。
ネロとエレノンは裏路地の一区画で完全に硬直しているところをギラとイツキに発見され、その瞬間に意識を取り戻した。
魔族の死体を発見した事を二人は証言したが、その時の記憶が何故か曖昧で、何者かの攻撃を受けたと判断されたが、結局は謎のままである。
エレノンが強い不快感と今すぐ何かをしなければならない感覚に襲われていたが、どうすることもできずじまいであった。
イツキとギラは人攫い計画を立てていた魔族を撃退する大手柄を上げることになった。どうやら秘術によるトーナメントを見に来た客を狙ってどこかに売買しようと計画していたらしい。
この大陸は軍もなく警察も戦闘力がバラバラで、一市民が時折秘術により異常な戦闘力を持っているため戦争には強いが、こういった犯罪には弱い。
問題は、裏路地には死神と悪魔が巣食うことである。
イツキとギラがボスである牛と馬を倒したこともあるが、その日だけでイェルーンが五人、スノウが三人、ニーデルーネが二人、他にも魔族はいたが、結局は全員駆逐された。
そもそもニーデルーネ一人でもイェルーン一人でも魔族が犯罪計画を成功させることはなかっただろう。魔族は弱くはなかった、むしろ暗殺のプロや誘拐のプロとして名を馳せる者もいたほどだ。
しかし暗殺も誘拐も、イェルーンとニーデルーネの十八番と言っても過言ではない、それぞれ相手が悪かったと言える。
ちなみに、無事シズヤが戻ってきたが、時間経過によりピカリが家に帰ってしまったため、一年生最強決定戦は後日行われることとなった。
シズヤとリースの仲は深まり、大陸に巣食う犯罪集団の一つが消えたにも関わらず、まだ大会は一日目。
そしてその一日目の夜、誰もが気付かない部分で新たな動きが起ころうとしていた。




