落ちこぼれ認定受験(高校生偏)
「高校がさ、違ってもさ、地元は一緒なんだし、いつも通り将翔んちで集まってさ、ゲームやったり話したり、遊べって」
「平やイバにも休みの度に連絡いれるよ」
何て、二人が言うもんだから、一人ぼっちの高校生活は寂しくないと、勇気をもらったんだけれど。
無事高校で友達が出来てしまい。
二人とのコンタクトが少なくなっていって。
週一が月一になって、終いにはたまに、と言う、何とも曖昧な、たまに、という言葉が合ってしまう、そんな状態になっていた。
友達が出来たから将翔や平と遊ばなくなった訳じゃないが、二人も随分と、高校生活を、自由奔放に、謳歌していて、別に僕が割って入り、僕と言う、ダサい友達の(これは勝手な自暴自棄)僕を、高校の友達に張れたくないだろうという、僕の、最大限の配慮だ。
しかし、ほんとうの理由は、二人とも、気でも触れたかのように、いや、俺の気を触れてしまったように、『彼女』たる、なんたる者を、側に置いてしまったことだ。
これでは、尚、尚一層、僕の出る幕は無くなった。
彼女のいる、将翔や平を見たくないし、会いたくもないと、尋常ではない、異様な避け方をし続けてしまっている。
これは、これでは、高校受験を妬んだ、進路が決まって、上がりを決め込んだ二人に、嫉妬を、ジェラシーを、感じていた頃と、何も変わらないでわないかと。
何とも、情けない自分に嫌気がさす。
唯一、友達となっていただいた羽田くんに、この事実をぶつけてみると。
「井場ちゃんも作ればいんじゃん?」『彼女を』と、なんと、何とも簡単に解決策を見出だしてくれたもんだぜ。
「羽田くん、それが出来ないから大変困っているんだよ」
「井場ちゃん、それは簡単な話さ」
「簡単な話なのかい?」
「簡単な話さ」
「是非、聞かせては貰えないかな?」やや前のめりに、椅子の背を抱え、除くように訴えるように、問う。
彼は、羽田くんは真っ直ぐ僕を見つめ、
「女子にコクればバッチリじゃん!」
と、自信に溢れたように、僕を本気で導いてくれた。
「ゥェッ!?……き、君は、天才だな」
僕は、友達になってくれている羽田くんが大好きだ。
ただ、羽田くんには悪いが、本気で相談をした相手を、完全に間違えてしまったようだ。
そもそも、女性に告白何て出来ない、したことも、する所も、イメージすら湧かない。
女子とまともに話したことなんて、先ず皆無だ。
羽田くんとの会話は、その辺で御開きにしたのだが、実際のところ、的は獲ている。
確かに、将翔や平に感じているジェラシーは、僕自信『彼女』をつくることで、解決するはず、なのだ。
しかし、そこに向かうまでに、かなりの成長を、かなりの経験値を積まなければ、女子と言う自分の敵に、勝てないのだから。
その日の帰り道、羽田くんが最後にこう言った。
「俺には彼女居ないけどさー、そんな悔しいならさー、その二人に直接聞いたらー?どうやって告白迄に至ったかをさ」
「く、悔しくなんてさ、無いんだよ?」
尽く、格好の悪い事だ。
いさぎ悪い事、極まりなしだ。
「そっか、なら、安心したよー」
そう言い残し、少し含み笑いを見せながら、羽田くんはじゃあねと手を上げた。
羽田くんには感謝している。
実際、何度も、何度も何度も連絡を取り、聞いてみようと、久々に会って話そうと、何度思ったことか、何でこんなにも、親友たちに会い辛くなってしまったのだろうと、何かに、見えない何かに負い目を感じてしまっている。
ただ、今日は、違う。
僕の数少ない、華麗なる高校生活で、唯一の友達、レジェンドTOMODACHI、その名を羽田くんに、背中を押してもらったのだ。
今日は、聞ける。
二人に「聞きたいことがある、会って話さないか?」と連絡をとった。
遂に、一つ前進だ。
すぐに返事が来た、二人からほぼ同時に、
「久々の連絡だな、童貞拗らしたか?(笑)家で待ってるよ」
「久々だなー、将翔んち?行くよ行くよ」
呆気にとられた。
最も、長い付き合いだからこそなのだろうけど、あの頃と、昔と何一つ変わらない、そんな二人がそこにまだ、居たことに、あっけに捕られてしまった。
すぐに僕も行くと、返事をした。
丁度今日は週末で、明日は学校が休みだ。
長い長い会話を、親友と交わせると思えば、負い目なんか気の迷いだったのだったと、端からそんな自分は居なかったと、浮き足軽くなり、久々に、ここ最近の僕に無かった、何かの安心と、安堵が一緒に来た、そんな気がした。