言葉の分からない味方のために、今日も僕は人を殺す
僕は僕の上官の言葉が分からない。
テレビ電話で映る彼は、緑色の顔をしていて、ライオンのような顔をしている。
詳しくはわからないけど、多分、宇宙人。
本当に僕らは何も知らないまま、何も分からぬまま、ただ偶然生き残ったからここにいる。
「△□××△」
ほらね。
一応指示はくれているみたいだけれど、何言ってるのか、何一つ分からない。
それでも僕はこう答える。
「イエッサー!」
怖いからだ。
ちなみに、英語で答えたけれど、僕の生まれは日本で、ここは元日本だ。元北海道の上方何万メートルとかそのぐらい。
説明されてないし知識もないから分からない。
とにかく空高く。
軍事訓練なんて受けてなかった僕が、急に兵隊にされたのだ。
当然のように兵隊になった後も訓練なんてなかった。
研修ビデオを見せられただけ。外国語字幕なし。いや、宇宙語字幕なし。
正しい受け答えなんて知ってるはずがない。
だから、映画かなんかの影響で『イエッサー』と答えてしまった。
それに何を言ってるのか分からなくても、するべきことは分かっている。
僕はこれからUFOから降りて、青森を占拠するのだ。
シールドを展開する全身タイツみたいな制服を着込み、反動なしでビルを粉砕できるレーザーマシンガンを片手に。
元日本人だった僕は、これから現日本人の青森県人を虐殺しなくてはいけない。
なぜならば怖いからだ。
僕は僕が死ぬのが嫌だから、それだけの理由で何万人も殺す。
そうして、偶然にも生き残ってしまった青森県人も兵隊にされるのだろう。
恐怖による支配。
宇宙人は捕まえた人間の心臓に小型爆弾を埋め込んでいるらしい。
これも言葉がわからないから、僕の勝手な予想だけど。
ただ、逆らった強面の男は小さな爆発音と共に、胸に穴を開けて死んだ。
もう、この星は終わった。
未来はない。
僕の未来だってそう長くはない。
地球を制圧したなら、僕も処分されるに決まっている。
それでも、少しでも長く生き残るために、僕は虐殺しつづけるのだろう。
僕は最低な人間だ。