映画などあれこれ
タイタニックで、沈みながらバイオリンを引き続ける演奏者で泣いたという人がいて、デカプリオは特にどうでもよかったそうだ。
自然の脅威と、人の意地との対立。その最終局面。
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ETで自転車が空を飛ぶとこが良かったという人もいる。
追い詰める科学者や軍人と、宇宙人の友達を大切にしている子供の気持ちとの対立。そのクライマックスの時まで、奴は別に飛んだりなんてしなかった。…傷くらい治したけど。
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鬼火、というフランス映画は知らない人も多いだろうが名作中の名作だ。
日本語タイトルが意味深にみえ、その実は直訳すぎて意味不明なので説明を要する。
ウィルオーウィスプ。ファンタジーやRPGでお馴染み、ヒトダマの事だ。
-ーー死後、地獄に落とされた極悪人のウィルが、お情けで転生させてもらったのにもかかわらず、また懲りずに悪虐の限りを尽くす。呆れた神に冥界でも現世でもない狭間に追放されて、宵闇を彷徨う。それを見た地獄の鬼が哀れに思って灯りを貸してあげたーーー
それがヒトダマ、ウィルオーウィスプの物語。西洋では民間伝承、誰もが子供の頃に聞く話だという。
映画、鬼火はアル中の元リア充が自殺前に昔の友達巡りをする話だ。
主人公はメンヘラで、元有名作家。
ボーダーと言ってわかる人には分かるだろうか。漢字では境界性人格障害と書くらしい。
友達は皆、彼を救おうと手を差し伸べるのだが、彼には見捨てられた自分の姿しか見えなくて、友達の話に一切耳を貸さず、結局自殺する。
自立というか精神的にこの世に産まれていない主人公の、外面的にはイケメンオシャレ有名リア充金持ちだが豆腐メンタルなハートと、ダサくて貧しくて人生諦めながらもなんとかやってる友達の優しくも実らない説得との対立が主人公の自殺によって幕を閉じるシーンは、隠れボーダーたちに大人気だ。エンディングで流れる、皆きっと僕の事を忘れない、とかいう遺書もいじらしく、情けなさのダメ押しをしている。
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太陽を盗んだ男、伝説の長谷川和彦監督の名作、ジュリーが原爆を作る話。
高校教師の沢田研二が野球の延長戦が見たくて政府を脅迫する。幼い欲望が強大な力を持ち権力を屈服させる対立だ。
延長戦を放送した時点でもういっか、ってなって迷走するところは笑える。後半は刑事の菅原文太が意地になる、いわばよくある魔王と勇者の対立に180度転換している。
最後の爆発は場所がずれているので別に感動はしない。
音しかしなかったし、そもそもインプロージョン型は爆縮レンズの造り方がハードモードで、単にプルトニウム入れる構造じゃ毒蒔きちらすだけで東電とかわらない。おおっと。
思い付きで書くが、刑事に取り上げられた玩具をださいターザンごっこなんかじゃなくてメディアや嘘や知恵を駆使して死に物狂いで取り返したのち撃たれて血塗れになりながら最後に起爆ボタンを押す話にしていれば、倫理面やいい話かどうかは抜きで感動の焦点は合った筈。
何でそうしなかったんだろう? テロリストが英雄視されるのが問題ならとっくにアウトだろうし。予算かな。
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2001年宇宙の旅、これ原作は続きもので小説では3001年まであるが結構しょうもない。
超絶テクノロジーの宇宙人と、当時の科学の最先端との対立。結局飲み込まれておしまい。
最先端科学知識&特撮技術でスターチャイルドみたいな内面世界を描くという見方が出来る人には、面白いかもしれない。
出来ない人にはHAL9000まで、単に機械の反乱をなだめる人の話。
人の理解が及ばないものを作りたいという意図は成功しているが、ついていける人は作者も含めてどこにもいない。3001年では背伸びした不可解さを捨て、ありがちな強敵を毒殺する話に堕ちている。
執筆時ものすごいおじいちゃんだった事を考えれば、よくぞここまで書けたものだと驚愕するものの、西洋人の知恵や勇気とは要するにこの程度だという、それだけ。
いかにチューリング完全だろうがシステムはおろかアーキテクチャも不明のマシンにネイティブコードもあるまいし、アセンブリレベルのをボーマンがひたすら頑張って移植したのかな。まさか本場イギリス仕込みのジョークで、pythonってことはないよね。
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ポンヌフの恋人、コーヒーをぶっ掛ける前に熟睡してしまい、最後起きたらなんか川に花火が上がったとこしか記憶にない。
多分恋人同士が対立して奇跡的にハッピーエンドになる話だと思う。
注! 後でググった所によると、出会いシーンをノッティングヒルの恋人と混同していた模様。私に如何に恋愛映画愛がないか…。
でも例外だってある。
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ベティ・ブルー、女それ自体の本質にある狂気の暴走を、人生諦めた作家志望だった負け犬(自分ではそれがカッコイイと思ってやっている男)が最終的に受け止め切れなくなる話。
絵がとても綺麗。トイレでコカインをやる前までが現実路線で、その後は妄想路線にレーンチェンジする。
端々に対立と爆発が散りばめられている。
相手が自分の愛した人間でなくなってしまったならばむしろ殺してしまう方がいい、という現実にはほぼほぼ不可能な理想の愛、という名の幻想。
どこにでもいる狂った女を、楽しませる為の冒険の終着駅。エスカレートする女の不可解な激情に、対する優しく冷酷な主人公のポリシーが、もう何をやっても対応しきれなくなる。
西洋人は病んだ老犬を薬殺する。
それは果たして救済だろうか。否、勝者のいない敗北に他ならない。耐えきれない苦しみを投げ出す事しか出来ない、業。ベティが完全に動かなくなるところが焦点。
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存在の耐えがたき軽さ、重たい田舎娘と軽薄で無節操な医者がチェコでプラハの春の頃、出会って別れて再会して死ぬ。
物語の面白さと、ニーチェだか哲学の命題、エターナルが重くて人生が軽いとして軽いのは悪いことが? みたいな面倒臭さがバランスしている。
医者が何故プレイボーイにならざるを得なかったかは、しょうもない田舎娘に依存する姿から窺い知ることが出来る。偉そうな理想や刹那主義を言いながら、彼は自分を認められないで弱さや自信の無さを抑圧している。田舎娘は医者の表層的な部分、裏切りの行為に耐えきれず逃げ出すが、浮気相手に諭される。浮気女は医者の一番の理解者であるが田舎娘の役は決して出来ない。何故なら彼女も同じ寂しい人間だからだ。
自らを重い人間だと言う、写真家に転職した田舎娘が実は精神的に一番自由に描かれている。医者や浮気女らの、相手を束縛しない自由など所詮綺麗事の誤魔化しで、大人ぶった、自身への欺瞞に過ぎず。軽さとは花のように咲く儚い一瞬の輝きで、写真板に浮かび上がる暇もないほど短い人生のその瞬間。それだけが本当に重要な部分であるという証明が犬に看取られて死ぬところでQ.E.D.
浮気女は未練がましく見せかけの自由、アメリカへ渡米してあさましく生き残り、ずっと後悔するのでした。
でも実はこの映画、まだ観ていなくてあらすじなどから想像して書いた。
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ザ・ライトスタッフ、水平飛行で史上初めて音速を超えたベルX-1のテストパイロットが、若者が下らない国家の威信:宇宙開発競争に惹かれ、駆り出される愚かな姿に眉をひそめて肩をすくめ、まだ別の飛行機によって最高高度の記録を更新したのち派手に墜落するまでの話。
別に死にはしないし、話はアポロ計画まで続くけど残りの後半は余興。
弾道飛行で飛ばされるだけの、猿にも出来る簡単なお仕事に憧れる超エリートのアストロノーツは国家に英雄扱いされ、その日陰で腕と能力と運を駆使して自分自身の実力そのもので機体をコントロールするテストパイロットは予算を削減される。冷戦を背景に、肋骨を骨折しても壁に立ち向かう男の姿と、狭い宇宙船の中で小便もオムツに垂れるしかない作られた英雄の、決して一度も語り合ったりしない葛藤。素晴らしいの一言。
失速した飛行機が木の葉のように墜ちてゆく長い長いシーンが終わったら私はいつもDVDプレイヤーの電源を切ります。
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レオン、マチルダが可愛い。それが暗殺者になり弟の仇と対決する。最後にジャンレノが爆発。
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その他いろいろ