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ダーク・ハート  作者: 駿河留守
開拓
7/36

不審な男

「聞く話によるとやっぱり怪しいわね」

「でしょ」

 次の日の帰り道。校門を出たところで昨日のふたりのことを思い出した。胡散臭い男の人の藤崎上武と猫みたいな女の子の鬼島未來ちゃんのことだ。キョーコちゃんはそのふたりが二人っきりで暮らしていることを話すとすぐに怪しいと踏んだ。私の同じだ。

「数時間だけの会話だったけど、感じとしては普通の人なんだけど」

「でも、血の繋がりのない中学生の女の子といっしょに暮しているっておかしいことじゃない。家族が他にいないって言う理由は分かるけど、他にも選択肢はあったはずよ」

 こういう類には結構敏感なキョーコちゃんなのである。

 確かにそうだ。何をされるか分からない胡散臭い男の人とふたりで暮らことに抵抗も恐怖も感じなのだろうか。

「それにあの藤崎って言う男。私たちと会った時にひとつ嘘をついたわ」

「嘘?」

 何の嘘だろ?私には全く心当たりがないよ?

「あの男は青の事件の後すぐに未來ちゃんを病院に連れて行ったって言ったじゃない」

「そうだね。だから、すぐに私へのお礼が遅れたって」

「あんた救急車が走り去る音聞いた?」

「・・・・・そういえば聞いていない」

あの現場にはパトカーの他にも刃物を所持した強盗を取り押さえるための機動隊の車と強盗によって怪我を負わされた人のための救急車もいた。でも、未來ちゃんの見た目には外傷はなく、昨日の様子でも怪我を負っている様子もなく恐怖で精神状態が不安定というわけでもなかった。そもそも、救急車があの野次馬の集団の中を抜けて走り出したのならば気付くはず。

「なんでわざわざ嘘をつく必要があったのか?」

「単純に忘れてただけでそれを私たちに指摘されるのが嫌だったとか?」

「そのために嘘をつく必要がある?いくら非常識でも嘘をつく方がもっと非常識。あの男も一応大人なんだからそのくらい分かるでしょ」

 嘘をつかないといけない理由があの場にあったんだ。もしかして、昨日の俺はそれをごまかすための物だったとしたら・・・・・・。

「それよりもこういうの本当に好きだね」

「え!いや、ちょっと気になっただけどよ!」

 そうやって頬を赤く染めてごまかさなくてもこういう探偵じみたことをするのが好きなのがキョーコちゃんなのだ。

「あんたのことが心配で言ったの!」

「へ?」

「中学生の女の子を手中に収めるような非道な奴の手の内に陽子が入ることをあたしは心配してるのよ」

 思わず笑みがこぼれてしまう。本気で心配しているのにそれを素直に認めようとしないツンデレなところがキョーコちゃんはかわいい。だから彼氏が出来るんだ。

「よしよし、かわいいね」

「頭撫でないでよ!」

 うれしいくせに。

「私なら大丈夫。だって、藤崎さんはキョーコちゃんみたいな貧乳好きだし」

「私みたいな余計よ!」

 こんなたわいもないことを話しながら帰宅経路である商店街を歩いていく。おととい起きた刺激的なことはもう起きることのないとこの町の雰囲気が教えてくれているようだ。商店街には商店の他にもゲームセンターなどの商業施設もあるその一角のパチンコ店の階段に燃え尽きるように座り込んでいる人を見つけた。すごく見覚えがあった。

「・・・・・・藤崎さん?」

 声を掛けると顔をあげる。

「子安さん?」

「昨日の胡散臭い奴!」

「何を根拠にそうなったんだよ」

 なんだか疲れ切っているようだ。

「どうしたんですか?」

「いや、昨日のせいでいろいろ悩んだんだよ」

「まさか!陽子を自分の家に連れて行ってあの中学生の子みたいにいいようにさせる気だったのね」

「そのせいでそんなになるまで悩んですか!最低です!変態です!」

「大げさに話を大きくするな!」

 昨日の通常モードでツッコんでくれた。

「じゃあ、なんで悩んでたのよ?」

「もしかして、今日はどんなプレイで未來ちゃんを犯すかを」

「お願いだからそれ以上何も言わないで!あらぬ疑いが広がるから!」

 近寄る藤崎さんから距離を保ちながら離れる。その様子を見て大きくため息を吐く。

「お金のことだよ」

「陽子を買い取る?」

「俺は闇商人じゃねーよ!」

 闇商人ですって言われても疑われない見た目してるけど。

「昨日の焼き肉のことで今月の家計がピンチになったことで悩んでたんだ!昨日の食費だけで俺たちが何食食えると思ってるんだよ!」

「知らないです。だって、好きなだけって」

「子安さんには自重という言葉ないんですか!」

「必要ないわよ。こんな変態ロリコン野郎には」

「だから!未來にはそんな感情は全くない!どちらかと言えば、子安さんみたいなつくべきところにはついてないところにはない方が」

「死ね」

「ごめんなさい」

 さすがに悪いと思ったのか素直に謝って来た。

「ロリコン疑惑が晴れたところで」

「あれ?変態疑惑は?」

 継続中です。

「まさか、そのお金集めのためにパチンコっていう手段をとったわけ?」

 ああ、それでパチンコ屋の前にいたんだ。で、さっきの様子だと。

「負けたんですね」

「負けたんだよ」

「そもそも、生活資金をパチンコで賄おうなんて言う考えがおかしいのよ」

「だって!」

「だってじゃない!自分でお礼のために陽子を焼肉誘ったんでしょ!自業自得よ!」

 キョーコちゃん手厳しいな。

「それにあんたこんな時間からパチンコ屋いて仕事してるの?」

「・・・・・・」

「何で目線はずの?」

「いや~・・・・・・」

「無職なのに未來ちゃんとふたりっきりで暮らしてるの?」

 言い返してこないので事実らしい。この人の胡散臭さはそこからきているみたいだ。

「一体どうやって二人分の生活費を稼いでるのよ?」

「まさか、未來ちゃんが体を売って?」

「あんた!自分でたぶらかすより最低よ!」

「憶測で物事を語るな!」

 だんだん未來ちゃんが心配になって来た。こんな無職で胡散臭さでいっぱいのこの藤崎って言う男の人とふたりっきりで暮らしていたら、いずれ未來ちゃんは不幸になる。あの猫みたいな女の子は私以上に普通の生活を送ってほしい。

「た、確かに今は無職だが以前働いていた時の金がまだ残ってて、それで何とか生活している」

「でも、さっきの様子だと残りは多くないみたいね」

「・・・・・・」

 日汗をかいて黙り込む。図星みたい。分かりやすい人だ。

「陽子。未來ちゃんを助けるわよ」

「了解だよ。キョーコちゃん」

「待て待て待て」

 行く手を阻む藤崎さん。私たちは完全にこの人への信頼性を失っている。人として大人として男としてここまで最低な人はこの世界にはいないと思う。

「まず、俺は未來を異性として見ていない。だから、恋愛対象とかそういうのじゃない」

 それはそれで最低。

「根拠はどこにあるの?あたしも昨日の数分しか未來ちゃんを見ていないけど、子猫みたいでかわいい子じゃない。それを堂々と恋愛対象じゃないっていう根拠はどこにあるの?いくら相手が子供でも未來ちゃんは体が大人になっていく中学生なのよ?そのうち、む、胸も大きくなっていくのよ!」

 自分の物を見て泣き出すキョーコちゃん。

「あんた最低!」

「それに関して俺は何もやってない!」

 泣きそうになるなら言わなくてもいいのに。胸の中で泣きじゃくるキョーコちゃんをなだめながら思う。

「それで未來ちゃんに興味がないっていう根拠はどうなんですか?」

「根拠ってどう証明すればいいんだよ?何したってあんたらは納得しないだろうけど」

 藤崎さんに残された選択肢と言ったら未來ちゃんを手放すということくらいだよね。

「俺って胸よりも先に足に目が行くんだよな」

「・・・・・・・・は?」

 何を言い出すかと思いきやいきなり謎なことを言い出す。

「未來は確かにきれいな足をしている。しかし!俺からすれば細すぎてきゃしゃすぎて気に入らないんだ」

「あの藤崎さん?」

「いいか、足というのは人の体全体を支える大切な部分だ」

「この胡散臭い奴は何が言いたいの?」

「特に女性の足はすらっとしていてもちっとしている感じがとにかくいい。スカートみたいに生足を出していると目が行かない奴とはどうかしている!」

「藤崎さんの方がどうかしていると思いますよ」

「そのスカートの長さと絶対領域も男の心をくすぐられる」

「なめるように見るな!」

「生足の出るスカートもいいがその美しい足のラインが出るズボンもいい。足からお尻にかけてぴったりとしているものがいい。俺の好きな足からお尻にかけての足のラインがエロくてなんとも言えない」

「私は藤崎さんの変態ぶりになんとも言えません」

「それでもやはり肌が露出したスカートがいい。ああ!でも、ホットパンツでもいいな。スカートと違ってパンツを見えるかもしれないという可能性がなくなってしまった代償に限界まできれいな足を見ることが出来る。素晴らしい!」

「こんな人通りの多いところでそんな変態発言をできるあんたが素晴らしいわよ」

「俺の順位からすれば足の素晴らしさを最大限に生かせるのは1位がホットパンツで2位がスカートで3位がズボンだな。スカートが2位になってしまった理由としては未來のようにひざ下まで長いものを履いている女性が多いからだ。男の変な目線を気にしてしまうせいだ。まったくなんて最低な」

「藤崎さんみたいな人のことですよ」

「これは俺の独自の考えだがスカートの長さは生足に対して1:2が一番ベストだ。あ、もちろん1がスカートの丈で2が生足ね」

「そんなことを2度も言われたくないわよ」

「ある大学の教授がこんなことを発表したんだ。スカートの長さは35センチよりも長ければ下着は見える心配はないと。これは緻密なデータと計算式によって導き出された数字らしいんだ。それは俺の見出した比率とほぼ等しいことが分かった」

「・・・・・・・35センチ以上あるよね?」

「陽子。こんな変態の言うことを信じるな」

「この35センチは足の長さによって変わっていくが、主に履いている下着からスカートの裾が25センチ以上なら見えならしい。つまり、そこが絶対領域だ。これを俺は25センチ説と名付けている」

「定規は確か筆箱の中に・・・・・・」

「陽子落ち着きなさい」

 パンツから25センチ。あるよね?

「つーかさ!」

 ここでようやくキョーコちゃんが変態発言を続ける藤崎さんを止める。ジェスチャーや感情をこめて真剣に話す藤崎さんの話を聞き入ってしまった。言っていることは真剣に聞いたところで身のためにならないことだけど。

「今、あたしたちはあんたの足フェチ変態疑惑のことなんて聞いてないのよ」

「そうですよ。本当にその25センチ説は本当なんですか?」

「実証済みだ」

「キョーコちゃん。定規持ってない?」

「身のためにならない話を鵜呑みにしない」

 でも、気になる。25センチ意外と短いよね?

「そんなことよりもその足フェチの話からどうすれば未來ちゃんに手を出さないっていう根拠の証明になるのよ!」

「確かに!」

「陽子も完全に主旨を忘れてるわね」

 気になる25センチ説。

「未來に興味がない根拠にはしっかり繋がる」

「へぇ~。なら続けてみなさいよ」

 キョーコちゃんの様子だとこれ以上はただ藤崎さんのイメージがただ下がっていくだけで無意味なことだと確信しているみたいだ。それにしても気になる25センチ。

「それはさっきの25センチ説が大きく関わっている」

「何だってー!」

「陽子。大げさよ」

 だって、25センチ説だよ。

「未來は確かに将来が大いに期待できそうな容姿の持ち主だ。細身で瞳が大きく鼻も低くてチャームなところが多くある」

「変態」

 キョーコちゃんに罵倒されながらも藤崎さんは聞こえていないようで続ける。

「だが、あいつは俺の男心を大きく壊す行為を常にしている。だから、興味がない!ついでに胸もない!」

「陽子。ホームセンターで人が入れるようなドラム缶とコンクリート買ってきて」

「キョーコちゃん。それは女子高生が買うようなものじゃないよ」

「未來が犯した。俺を大きく裏切る行為。それは・・・・・」

「それは・・・・・・」

「スカートの長さが35センチ以上もあることなんだ・・・・・」

「・・・・・・はい?」

 キョーコちゃんは何も分かっていないようだ。でも、私には分かる。

「それは大変なことですね」

「え!陽子分かるの!」

 逆になんでキョーコちゃんは分からないの?

「しかも、未來は身長も低くて発展途上だ。だから、実際にあいつがスカートをはけばパンツからスカートのすその長さは25センチを優に超してしまっている。それだと男心をくすぐる絶対領域もなければ、俺の大好きな生足を見ることもできない。あいつは色気ゼロなんだ!」

「私の定規15センチしかない」

「陽子落ち着きなさい」

「分かったか?以上が俺が未來に興味がないということの根拠だ」

「納得だよ」

「陽子。洗脳されてるわよ」

 とにかく今は長さが気になる。もちろん、スカートのね。

「ちなみに子安さん」

「は、はい!」

「君のスカートの長さでは大体32,3センチと言ったところだろう」

「ヤダ!短いよ!どうしよう!男の子とかにパンツ見られたりしてないかな!」

「落ち着けって言ってるでしょ!」

 逆になんでそんなに落ち着いていられるの!

「でも、身長的に考えてぎりぎり見えていないであろう」

「そ、そうなの!」

「見える見えないの境界線をさまよいその長さと見せつけるだけの美しい生足にグッジョブ」

「ありがとう!」

「別に褒められてないわよ」

「逆にその・・・・・キョーコさん」

「キモい」

 ああ、キョーコちゃんに関して上の名前をまだ藤崎さんには公表してないんだ。そもそも、キョーコちゃんと藤崎さんには私を通してじゃないと関わりがまったくないし。

「あなたのスカートの長さは30センチ。これは下着からす裾まで長さが25センチキープできない長さだ。つまり、階段を上がるときとか数メートル後方の人間にはパンツが見えてしまう長さだ!」

 ガツン。

 キョーコちゃんが藤崎さんの顔面に向かってどこで拾ったのかコンクリートブロックの破片を拾って投げつけた。鼻血を垂らしながら藤崎さんはその場に倒れる。

「このド変態野郎!」

 顔を真っ赤にして訴える。

 仰向けに倒れた藤崎さんが鼻血を垂らしながらムクリとこちらを向く。

「いい角度だ。地面からスッと伸びるもっちりと餅のような肌質の美しい生足。そして、そのゴールに存在する男の楽園。水色のオアシス」

「水色のオアシス?」

 私には全く意味が分からなかったけど、キョーコちゃんは赤かった顔をさらに赤くしてスカートの裾を押さえて藤崎さんを踏みつける。

「見てるんじゃないわよ!」

「俺の言ったことは間違いじゃなかっただろ!」

「あの角度だったら普通に見えるでしょ!」

「子安さんのは見えなかった!」

「本当なの!色を言ってみなさい!」

 何をもめているんだろう?

「し、白!」

「陽子!あんた下着の色は!」

「・・・・・黒のレースだけど?」

「・・・・・あんたって見た目と違って派手なのね」

 何を急に言い出したんだろうっと思ったらパンツを見られたんだね。

 すぐにキョーコちゃんは藤崎さんを踏みつけるのをやめる。

「こんな奴のそばに未來ちゃんを置いておいたら、将来的にもよくないわよ」

 まぁ、あれだけのことをマシンガンのように言われたらそう思うしかないよね。

「で、ちゃっかりスカートの裾、伸ばしたよね?」

「う、うるさい」

 やはり、25センチ説は本当だったみたいだ。

「だけど、実際に未来をいっしょに住んでいて苦労しているのは俺なんだ」

「どういうことですか?」

「あいつ見た目がいいんだが家の中だと下着はその辺に脱ぎ捨てるは、食べこぼすわ、ひとりで寝れないやら結構めんどくさい奴なんだよ。そこに追い打ちをかけるようにスカートが長くて足が見えない。もう、俺の眼中には未來はないんだよ」

「へぇ~、そうなんだ・・・・・・」

 背後から聞こえた突然の声に藤崎さんが凍りつくように固まる。藤崎さんの背後を覗くとツインテールのセーラー服を着た未來ちゃんが頬ふくらませて不機嫌そうに立っていた。藤崎さんが言っていたように未來ちゃんのスカートの裾は確かに膝のところにある。

「何かいろいろ話していて楽しいそうじゃない」

「あ、ああ、楽しかったよ」

「そう」

 笑っているけど、心から笑っていない。

「まさか、昨日会ったばかりの女子高生に自分の性癖をさらすなんてどうかしてわね」

「いや!これはお前のためを思って」

 藤崎さん。これはもうあなたが何を言っても無駄だと思いますよ。この様子だと結構前から話聞いてみたいだし。

「そんなに足が見たいなら見せてあげるわよ」

 持っていたバックを捨てるように置く。

 そして、その場で逆立ちするように両手を地面について、曲げていた足のばねを使って藤崎さんの顔面に向かって蹴りあげる。

「昇龍腱!」

 蹴りあげられた藤崎さんは再び鼻血を流しながら数メートルに分かって飛ばされる。

「ふん!あんたみたいな奴はこの世からDNAも残さずに消え去ればいいのよ!」

 未來ちゃんはバックを持ってそのまま藤崎さんを放置してどこかに行ってしまった。

「25センチ以上でも見えたじゃない」

「そうだね」

 未來ちゃんの色は青の縞模様でした。

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