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ダーク・ハート  作者: 駿河留守
始まり
5/36

不信なふたり

 次の日の放課後。今日もキョーコちゃんは私の家に泊まる気満々だった。このまま当たり前のように1週間は続くだろうなと思った。今日はさすがに食材が足りないのでスーパーによって帰ろうとキョーコちゃんと話しながら校門へ向かう。いつものようにどうでもいいたわいもない話をしながら。

「あたしのバ彼氏が最近、妙なありえない情報を手に入れたってラインで連絡して来てさ」

「聞いてもどうせ興味ないことだろうけど、一応聞いてみようかな」

「この町に不死鳥がいるらしいのよ」

「へーソウナンダ」

「まったく同じ答えを返したわ」

 笑いながら校門を出ると目の前に見覚えのある市内の中学生が着るセーラー服の子がいた。髪はツインテールで雰囲気からして頭を撫でたくなるような猫のような子だ。その横にはぼさついた髪に若干猫背の年齢からして20代中間あたりの中肉の男の人もいっしょにいた。

 まるで誰かを待ち構えているように目立つところにいる二人は下校する生徒たちの中でひときわ目立つ。

「あ。あの子」

 その男の人の隣にいた猫の女の子に見覚えがある。というか昨日出会っている。こんな平凡な街で私が遭遇した刺激的な出来事の中心にいた人物だ。言われたくても分かるよね。そう、昨日の人質にとられた女の子だ。そのことにキョーコちゃんも気付いたようだ。

「ねぇ、あの子」

「分かってるよ」

 猫の女の子と目が合ってゆっくりと私の元に歩み寄ってくる。昨日のこともあるからきっとそのことについてだろう。何も言わずにその場からいなくなってしまった猫の女の子は私に何かを伝えたいのだ。その内容は言わずとも分かる。そういうことを昨日の私は成し遂げたのだから。

 最初にどんな対応をしようかな?

 命の恩人だからきっと私じゃ考えられないようなお礼でもされるのかな?

 ありえないことを想像として膨らませるせいで顔がほころぶ。

「陽子?変な顔してるわよ」

 猫の女の子との距離は短くなっていきついに接触。と思いきや真横を素通りした。

「・・・・・・あれ?」

 いやなんで?どう考えても用があったのは私だよね?もしかして、私に向かって手を振っていると思って手を振り返したら実はその後ろの人に向かって手を振っていて私は全く関係なくて恥ずかしい思いをする、あれと同じ感じってこと?キョーコちゃんだと思って声を掛けたら全く別人だったとか言うそういう恥ずかしい勘違いだったの?

 一気に気恥ずかしさが湧き上がってくる。で、その場でうずくまる。

「いやいや、違うからね。本当はあの子が私に用がないことくらい分かってたし―――そんなことくらい私が分からないはずがないじゃん」

「陽子大丈夫?」

 自信ないです。

 すると男の人が私の横を素通りして猫の女の子の首根っこを掴む。

「うにゃ!」

 猫みたいな声を上げる。

「お前、あの人じゃないのか?」

「そ、そうだけど・・・・・・」

 何かぼそぼそ話しているようだ。

 しばらく様子を見ていると男の人の方が私の方にやって来た。

「子安陽子さんだよね?」

 突然、見知らぬ男の人に名前を呼ばれた。

「陽子。この人怪しいわ」

「いや、怪しいものじゃないって」

「そういう人に限って怪しいのよ」

「いや、だから決して怪しいものじゃ」

「キョーコちゃんの言うとおりだよ。あんな中学生の女の子といっしょに行動している大人の男の人にいい人なんていないっておばあちゃんが言ってた」

「いや、だからね」

「あの藤崎って言うおじさん、実は貧乳が趣味なのよ」

「え!そうなの!よかったね!キョーコちゃん、貧乳好きがいて」

「まるであたしが胸がないみたいじゃない」

「お姉さんないじゃん」

「おいガキんちょ。あんただってないじゃない」

「お姉さんと違ってまだ発展途上だから」

「おうおう、中学生のくせに言うじゃねーか!」

「あの~」

「おっさん黙ってて」

「俺はまだおっさんて言う年じゃないだが・・・・・って!なんで俺が怪しいおっさんみたいになってるの!」

「この子がそう言ったから」

「未來!」

「事実じゃない。JKがたくさんいるここに来るのを楽しみにしてじゃない」

「嘘っぱち言うな。ほら、周りの人たちがドン引きしてるよ!誰のせいだよ」

「あんたの存在じゃない?」

「君ひどくない?」

 なんか気付いたらこの猫の女の子と仲良く息ピッタリに会話がかみ合っている。

「未來ちゃんって言うの?」

「は、はい。鬼島未來と言います。えっと、子安さんその・・・・・昨日は本当にありがとうございます。おかげであの状況から怪我なく抜け出すことが出来ました」

 頬を赤く染めて恥ずかしがりながらも二つに束ねたツンテールを翻して頭を下げてお礼をする。これだけをするためにここまで来るというのは確かに気恥ずかしい気もする。あの藤崎って言うおじさんが場を和ませてくれたおかげだね。

「なんであの時陽子に何も言わずに帰ったのよ。非常識よ」

「・・・・・・誰ですか?」

「私の友達のキョーコちゃんだよ」

「あの時現場にいたのよ」

「いただけですか。・・・・・・使えないな」

「おい、ガキ。しっかり聞こえてるぞ」

「あの時はすぐに病院に連れて行かれてしまったのでお礼もすることができませんでした」

「無視?」

 確かにあの場でただ強盗に指示に従って手をあげていただけのキョーコちゃんがとやかくいう資格なんてどこにもないよね。

「いいんだよ。お礼がほしくやったわけじゃないから」

 でも、こう改めてお礼を言われるとうれしい。

「その・・・・・命を救われたと言っても過言じゃないので」

「そんな言いすぎだよ」

「ちゃんとしたお礼をしたいな~って思ってここまで来ました」

「そんなお礼何て大げさだよ。ここまで怪我なかったことを教えてくれただけでもうれしいよ」

「でも、せっかくですし。この変態のおごりで焼き肉でも行こうと思ったんですが」

「行きましょう」

「即答かよ!」

 焼肉か・・・・・・。すごく久々。

「ちょっと待て!なんで俺のおごりなんだよ!」

「こいつそれなり給料のいい仕事をしていたのにもかかわらず使う先がエロ動画の有料会員だし、ベットの下から数十冊のエロ本が発掘されるくらいそんなことばっかりにしか金の使い道のないド変態なんで大丈夫!」

「大丈夫じゃねー!俺の財布もメンタルもボロボロだよ!ほら、どんどん俺の周りから人が遠ざかっていくよ!」

「私牛タンが食べたいです」

「わたしもカルビとか食べたいな」

「え?行くこと決定なの?」

「あたしは牛ホルモンがいいわね」

「さすがにあんたは連れて行かないからな!」

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