ダーク・ハート
「陽子。帰るわよ」
「待ってよ。キョーコちゃん」
慌てて靴を履きかえてキョーコちゃんを追いかけていく。清々しい五月日和の今日もどこと変わらないいつもの私の日常。授業中に居眠りをして先生に注意されてキョーコちゃんとたわいのない話をして放課後を迎える。振りだしに戻ってしまった退屈ないつもの日常。変わったことと言えば、この放課後が私の楽しみな時間となったということだ。
ふたりで校門を出てしばらく歩いているとツインテールの髪を揺らしながらセーラー服の女の子が近寄って来た。
「陽子さん!」
「お。未來ちゃん」
「今日も来たの?あんたも暇ね」
「今日はどこに行きます?」
「あれ?無視?」
あれから数日が経って商店街の方に行かずとも未來ちゃんがわざわざ高校までやってきて来るのだ。
「あ!あんたも来たの!この変態プー太郎!」
「うるせー!」
もちろん、付属品として藤崎さん付きだけど。
「藤崎。おこずかい頂戴」
「そんなものはない」
「使えないゴミね」
「何だと!」
「大体あんたは―――」
いつものケンカが始まった。そのケンカを見ていると平穏な日常ですごく落ち着く。
「あのさ。いい加減にあの無職野郎とその子を引きはがした方がよくない?」
確かにそうかもしれない。最初はそう思ったよ。でも、それはうわべだけしか見ていないからそう見えてそう思えてしまう。じっくり中まで見て行けばこのふたりは引きはがさない方がいいって分かるものなんだよ。私は分かったんだよ。それに、
「大丈夫だよ」
「何がよ?」
二人は大丈夫。私以上の固い絆で結ばれている。どちらもいいところも悪いところも悪の心も知っている。誰よりも信頼し合っているふたりを私は引きはがそうなんて思わない。何があっても壊れない。それは数日前のあの事件で強くなった。私と未來ちゃんの間にも同じようなものが生まれた。
これからどんな苦しいことが待っているか分からない。予想もできない。不死になった私に待っている苦難は相当なものだと聞かされている。それでも私はふたりの近くにいたい。未來ちゃんの藤崎さんのふたりの行く末を見ていきたい。見守っていきたい。ふたりの最初で最後の友達として最後までそばにいることにしたんだから。
「陽子?」
「ん?どうしたの?」
「いや、なんか吹っ切れた感じって言うか。何かあった?」
あったことにはあったんだよ。でも、それは誰にも教えられない。
キョーコちゃんの知らない真っ暗で残酷で絶望ばかりがはびこる非日常的な世界に巻き込むわけにはいかない。そのために私はキョーコちゃんに嘘をつき続ける。キョーコちゃんだけじゃない。その他の人たちにも誰にも言わない。これは私の優しさでもあって、嘘をつき続けるという、
「何でもないよ」
私の悪の心。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
こちらの作品はとある小説大賞で1次にも通ることもできなかった駄作です。
去年は1次を通ることができたものの選評で多くの課題を指摘されました。そこでもう少しインパクトを出そうとちょっと壊れた感じのストーリーにしてみようとしたところ、見事にダメでした。
まず、ちょっと好きなように書きすぎた感があります。もう少し読者に分かりやすく面白い作品を目指してこれからも頑張っていきたいので応援よろしくお願いします。




