第2話 9月5日(月) 09:01
「はあ……」
ため息が後から出てきて困る。ぜんぜん授業にも手が付かない。それどころか、さっきの担任の態度が頭から離れない。
「なんなんだよあれ……」
もう一度小鳥遊の机を見る。遅刻して来るような様子もない。一体どうなってるんだ……。
ため息を吐いて、空でも見上げて気分転換をしようと思ったその時だった。
「え……?」
向かいの校舎、部室棟の屋上に小鳥遊の姿を一瞬だけ見たような気がする。もう一度目を凝らしてみると、確かに小鳥遊がタオルを被った所だった。
「間違いない……あれは小鳥遊じゃないか……どうしてあんな所に……?」
――ゴツンッ
急に頭に衝撃が走った。
「立花くん、なにをよそ見しているんですか?」
「え……?」
ふり返ると、鬼のような顔をした現国の先生が立っていた。
「す、すみません!」
慌てて謝ると、現国の先生がため息をひとつ吐いて、苦笑した。
「君らしくないわね? 立花くん」
「申し訳ないです」
「言わなくても分かると思うけど、君も受験生なんだからね」
「はい、すみません」
謝罪して教科書に視線を移す、と現国の先生が教壇の方に戻っていった。
もう一度、もう一度だけ向かいの部室棟の屋上を見てみたけど、小鳥遊さんの姿は見えなかった。
「見間違えだったのか? ……いや確かめてみるか……」
俺は、今は誰も見えない屋上に向かってつぶやいた。
― 続く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。