優しさ
どどど、どうしようっ!!
さっきから顔の熱が引かない。
運転席には爽やかイケメンの澤田さん。
車の中はこれまた爽やかなフルーツ系の良い香りがする。
ガラの悪い男にからまれて、本当にもうダメだと思った時に、助けてくれた人。
澤田さんが来てくれなかったら、私もう・・・
思いだすと恐怖がこみあげて手が小刻みに震えだした。
自分の両腕をぎゅっと抱きしめて、震えをとめようとするが、なかなか治まらない。
「・・・名前は?」
「へぇっ?」
急に話しかけられて驚いて、変な声が出てしまった。
「君の名前はなんての?」
「あ、立花美沙です。22歳です!」
「ぷっ。歳までは別に聞いてないけど。幼稚園児のインタビューみたいだな。」
そう言って澤田さんはクククッと笑った。
「よ、幼稚園児って・・・!もう社会人ですよ!大人ですよ!
せめて合コンの自己紹介みたいとか、もうちょっと別の言い方でも・・・!」
「なんだよ、そんなに合コン行きまくってるのか?遊び人だなー。」
「えぇっ!!そんなわけないじゃないですかっ!」
真っ赤になってなぜか慌てる私を横目に、澤田さんはまたクククッと肩を震わせた。
も~なんだかからかわれて子供みたい。恥ずかしい・・・。
ふうっと息を吐いてイスの背もたれに背中をつけると、震えが治まってる事に気づいた。
もしかしたら気持ちを落ち着かせるために、からかってくれたのかな。
そう思うと、澤田さんの優しさに心がぎゅっと締め付けられる感じがした。
いやいやいや、ときめいてる場合じゃないって!
まずいまずい・・・
まだ熱が引かない顔を手で仰ぎながら前を見ると、いつの間にかどこかの駐車場に停まったようだ。
「ほら、降りて。」
澤田さんはいつのまにか助手席のドアを開け、私に手を差し出している。
「ここどこですか?」
「いいからこっち。」
私の手を引いてどんどん進んでいく澤田さん。
少し歩くと、突然眼下に夜景が広がった。
「うっわぁ・・・・きれい・・・。」
「だろ?俺のお気に入りの場所。」
大小の色とりどりのネオンが星のように瞬いている。
隣を見ると、澤田さんの横顔が夜景に照らされてとってもキレイ・・・
サラサラの髪が風に揺らされて・・・なんて絵になるんだろう・・・
ふと手元の違和感に気づく。
私の手は澤田さんとしっかり絡まったままになっている。
「・・・!!!」
一気に顔に熱が集まった気がして、手をほどこうとしたが、急にそんなことしたら変かな、とか考えてる間にそのまま固まってしまった。
「立花さん?」
「ははははいっ!!」
めっちゃどもった・・・恥ずかしい・・・。
「そろそろ落ち着いたみたいだし、帰ろうか。」
そう言われて、つい帰りたくないとか思ってしまったけど、そこまで迷惑かけれないので
「はい、ありがとうございました。」
そう言って手を離した。