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アキザクラ  作者: ゆずの香
第一章
6/49

偶然の

・・・・


「はい、はい。これから向います。失礼します。」


ふぅ・・


今日歯医者では酒を飲むなと念をおされたが、仕事なんだからしょうがないだろう。

あんな小娘の言うこと聞いて大事な客との席をすっぽかすわけにいかない。


小娘、か。

あのお団子頭の子、ずいぶん熱心に俺の事説得しようとしてたな。

まぁ仕事だから立場的にあー言うしかないんだろうが。

面倒になって「わかりました」と営業スマイルで答えてやったが、理解したつもりのただの演技でしかない。


まだ歯ぐきはズキズキと熱を帯びていたが、気づかないフリをすることにした。


車が信号で止まった時、ふと窓の外に目をやると、今朝歯医者で見た小柄なお団子頭の小娘が歩いていた。


なにか様子がおかしい。


やたら足早に歩く彼女に違和感を感じ、彼女の後ろを目で追うと、ガラの悪い男が二人。

ニヤニヤと気持ちの悪い顔をして彼女の後を付かず離れず歩いている。


危ないな・・・


そう思った俺は車を少し先の路肩に停めて、男の居たほうに向かった。


ところが居たはずの場所の付近にはすでに誰も居ない。

通行人すら一人も居なかった。


「まずい・・・!」


反射的に俺は店の影や路地を一つ一つ探していった。

いくつか目の路地に、彼らは居た。

彼女はおさえつけられて動けないながらも必死に抵抗していた。


おれはスマホを出し耳に当てて言った。

「もしもし、警察ですか!女性が襲われてるのですぐ来て下さい!」



すると男達はチッと舌打ちをして逃げていった。


なんだ、あっけないな。

喧嘩売られたら買ってやろうと思ったのに。

まぁスーツが汚れるのも面倒だし、逃げてくれて良かったか。


スマホをスーツの内ポケットにしまうと、腹にドスンと衝撃。


「澤田さん・・・!ありがとうございますっ!!」


下を見ると、お団子頭の小娘が腹にしがみついてこちらを見上げていた。

  

「ほ、ほんとうに怖かった・・・!」


大きな目に涙をいっぱいに溜めて彼女は何度も何度も礼を言った。


そりゃ怖かったろうな、俺が来なけりゃ確実に犯されてたもんな・・・

「無事でなによりだな。夜道は危ないから気を付けろよ。」

当たり障りなく慰めの言葉をかけてその場を去ろうとすると、小娘は俺の腹から離れない。


「・・・おい?大丈夫か?」

「あ、歩けないです・・腰がぬけちゃって・・・。」



お姫様抱っこで車まで連れて行き、助手席に乗せてやると、彼女は顔を真っ赤にして、

「すみませんっ!すみませんっっ!!」

と何度も頭を下げていた。


「いや、いーよ、少し落ち着くまでドライブでもしようか。」

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