路地で
「お先に失礼します。」
挨拶をして、私はいつもの通り17時で仕事を上がる。
就職する時に、先生には事情を話して採用してもらっているのだが、私はいつも17時に上がり病院にお見舞いに行っている。
母が入院してもう3年。
私は母のたった一人の家族なので、こうして毎日通っている。
「じゃお母さん、また来るね。」
母に別れを言い、病院の外に出ると、すっかり暗くなっていた。
毎日通る病院からの帰り道を歩いていると、後ろから誰か付いてくる気配がする・・・
・・・な、なに?怖い・・・
怖くなった私は足を速めて先を急ぐ。
幸いここは大通りに面していて人通りが多いので、危険はなさそうだけど・・・
とにかく急いで家に帰ろうと思い小走りになった時、
「んむっ・・・!!」
突然後ろから口をふさがれて路地にひきずり込まれた。
そのまま壁にドンッ!と背中を押し付けられ、「ゲホッ」とむせた。
「な、なにするんですか!!」
目の前には見知らぬ男が二人。
見るからにガラの悪い二人は、ニヤニヤしながら私の腕を頭の上に押さえつけてまた口を塞いだ。
「んっ!!んーーーーっ!!」
私の必死の抵抗は全く意味がなく、男二人の力の前に私は無力だった。
目だけ動かし路地の向こう、人通りの多いほうに目を向けると、運悪く誰一人通らない。
車の光は行き来しているが、こんな路地の隙間で起きてる事に気づく人は居ないだろう。
もう・・・だめだ・・・!!
そう思った時、低い声がした。
「もしもし、警察ですか!女性が襲われているのですぐ来て下さい!」
ガラの悪い男二人は驚いて私をおさえている手を離した。
声の主のほうを見ると、そこには背の高い爽やかなイケメンが・・・
「さ、さわださん・・・!」