患者さんと私
外に出ると、ぽかぽかした春の陽気。
私は昼休みにお弁当を買いに近くのコンビニに向かっていた。
澤田さん、かっこよかったなぁ・・・
ぽかぽか陽気に心まで浮き足立っているのか、今日出遭ったステキな患者さんを思い出していた。
でもあくまで彼は患者さん!
私は治療する人!
それ以上の気持ちを持ってはいけないと気持ちをクールダウンさせる。
それに恋なんてもう二度としないって、誓いを立ててる。
もうあんな思いは絶対に嫌・・・。
お母さんにも、お父さんにも、絶対に・・・。
物思いにふけっていると、ふいに涙で視界がゆがみ、
ダメダメ!
と頭を振って悲しい気持ちを吹き飛ばした。
下を向いて目をぎゅっとつむっていると、何かにぶつかった。
「うわっ!?」
「美沙なにやってんだ?」
ぶつかったのは同じく弁当を買いに出ていた雄汰だった。
「・・・泣いてたのか?」
「へっ?」
「目と鼻、赤くなってるし。」
「いや~ちょっと、ね。思い出しちゃって!えへへ。」
すると雄汰は私の頭にポンッと手を置いてなでなでしてくれた。
私が辛かった時、落ち込んだ時、雄汰はいつもこうして慰めてくれる。
何かを言うわけでもないんだけど、なでなでされるだけで気持ちが落ち着くんだよね。
「ありがとう、雄汰!もう大丈夫。」
「ん、そっか。じゃあ俺は弁当買ってくるから先戻ってなよ。」
「はーい!」
雄汰のおかげでまた心がほっこり暖かくなって、自然と笑顔もこぼれる。
良かった、あんな気持ちのまま仕事に戻りたくないもんね!
私は軽い足取りで戻っていった。
・・・・
「はぁ・・・ほんと可愛いなアイツ・・・」