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アキザクラ  作者: ゆずの香
第一章
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問診

その人、澤田悟(さわださとる)さんは、ものすごいイケメンだった。

清潔感のあるストレートの黒髪はサイドで分けられ、軽く後ろに流している。

近づくとさわやかなフルーツ系の香水の香りが鼻をくすぐる。


・・・澤田さんの香水かな。いいにおい・・・


凛々しい目元は私を見下ろしていた。

 

背、高いなぁ・・・


なんて見とれていると、「あの?」と声をかけられ、じっと見つめたまま固まっていた事に気づき、慌てて中に通す。

横で受付の友香さんが「クックッ・・」と肩を揺らして笑っていて、私は思いっきり赤面してしまった。


なんとか顔の熱を冷まそうと、心を落ち着かせながら、症状を詳しく聞いていく。

「数日前から歯ぐきに違和感はあったのですが、今朝起きたら歯ぐきが腫れて痛くて・・・。」

澤田さんの歯ぐきは一部、大きく腫れて熱をもっていた。

「澤田さん。昨日お酒をたくさん召し上がりませんでしたか?」

「えぇ、接待で遅くまで飲んでましたが・・・。」

経験上、こんな腫れてる人にはお酒は絶対ダメ。

そうわかっていた私は澤田さんの目を見て話をする。

「澤田さん、この歯は治療に少し時間がかかります。

 あとお酒はしばらくお休みして下さいね。」

すると澤田さんは困った顔をして、

「えっ、でも今夜も接待でお酒を飲まないといけないんです。」

でもここは私も譲れない!

「こんな腫れててお酒を飲むのは自殺行為です!

 もっと腫れて点滴が必要になったら、それこそお仕事に障りますよ!」

真剣に訴えると、澤田さんは諦めてくれたのか、

「わかりました、今夜はお酒は控えます。」

と、笑顔で答えてくれて、理解してくれたように見えたのだけど・・・


なんかその顔うそ臭い・・・


でもまぁ私の気のせいかもしれない、初対面の人だしそこまで深く考えるのはやめにした。



治療の準備をしに裏へ回った所で、先輩衛生士の佐伯さんに引き止められた。

「ちょっと立花さん、あなたはこっちの患者さんをやって。

 澤田さんは私がやるから。」

と、別の患者さんのカルテを渡し、佐伯さんは颯爽と立ち去っていった。

澤田さんの所に向かった佐伯さんは、猫なで声で自己紹介したあと、私がすでに済ませたはずの問診からまた再開し、楽しげに会話していた。


「ほら、佐伯さん若い男大好きだからね。」

横から友香さんがひそひそっと声をかけてきた。

「あぁ・・・なるほど、そうでしたね。」


カルテによると、澤田さんは29歳。

佐伯さんは31歳で旦那さんもいるのだけど、若い男の患者さんには態度が豹変する。



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