序章:手紙
いきなりこんな手紙が届いて、さぞかし驚いているでしょうね。
驚かせてごめん。
この手紙が届く頃には、多分私はもう、この世にはいないでしょう。
私はこの手紙を書き終えたあと、自ら命を絶つつもりです。
何をいきなり、と思うかもしれない。でも、ごめん。私はもう、耐えられない。
悪夢のようなあの日。私は大切なものを失いました。
毎日毎日あの日の夢を見ます。
獣の目をした悪魔たちが、私に襲い掛かってくる夢。
毎日を過ごすのが、苦痛でしかない。
弱い私は、これから一生、あの日のことを背負って生きていく自身がありません。
だから、何も言わないままなのはつらいけど、お別れです。
勝手だというのは分かっています。
迷惑だというのも分かっています。
所詮自己満足でしかないこんな手紙、即座に破り捨ててくれて構いません。
その頃には、もう私は生きてはいないだろうから。
こんな薄汚れた世界に未練はないけれど、欲を言うならば、もう一度あなたの顔を見たかった。あなたと話をしたかった。
でも、今の私にはあなたに会う資格なんてない。
だから、私は一人で闇の中で死のうと思います。
ごめんね、勝手で。
ごめんね、何も言えなくて。
ごめんね、弱い私で。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう……。
最後に一言、言わなければなりません。
私が死ぬ前に、あなたに言いたかった、たった二つの言葉です。
最後にその言葉を書いて、この手紙を締めくくりたいと思います。
ありがとう
さようなら
―――せめてあなたの未来だけは、光に満ちたものであることを願っています。