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春想う

作者: 毛利鈴蘭

 いつも眺めている物や風景の中に、ふとした気付きがあった。ケータイのディスプレイには四月と表示されている。いつも見ているこの画面。なぜかこの時に限ってこの四月という文字に見入ってしまった。

 都会はいつもと変わらぬ風景、いつもと同じ光景を繰り返す。所狭しと敷き詰められたオブジェクトの数々は、ギラギラ、チカチカと私の気をひこうとする。毎日変わることなくそれは繰り返される。ここはそんな世界だ。いちいち辺りを気にしていては気疲れするなんてものではない。だから誰もが知らぬ振りをする。物にも、人にも。

 この四月という表示だってそうだ。ただ単に日時を示すための表記。イマを知るためだけのマーカーでしかない。誰もがそうやってデジタルに見ている。それがこの世界の常識だ。それは私にとっても言えることで、現に今この瞬間、これがここに飛んでこなければ気付きもしなかった。

 私のケータイのディスプレイの上には一つの綿が乗っている。小さな小さなわたぼうしのカケラ。どこかアスファルトの割れ目から懸命に咲いたたんぽぽの夢。そんな夢の種が私に春を告げた。

 いつもと同じこの場所で、いつも視界の片隅に映っていたはずの春をようやく見つけた。

 ふっと息を吹きかけひとつの夢を空に返すと、空にはたくさんの夢の種が舞い上がっていた。


 春、それは生命が息吹く季節。

 春、それはすべてが希望を抱く季節。

 春、この季節から誰もが夢の種を持って羽ばたく。


 耳を澄ませば春の温かな鼓動が聞こえてきた。




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