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憤怒の黒王  作者: 馬爪奏
3/5

新たなる黒王

「早くあんな村潰しちまおうぜ。」

「そうだな。あんな村、一瞬だよ。全員、殺してやるよ」

「ぷぷっ。はっはっはははは!!」男たちはゲラゲラとわらう。

あのクズめ。僕が潰してやる。そう思うほどにやつらはわずらわしい。

「痛っ」足先には硬い感触を感じる。それと同時に一瞬、宙に浮く。

目の前の光景に目を取られすぎた。

「誰だ!」奴らが振り向く。やばいばれた。逃げないと。いや何をいっているんだ。戦うんだ。戦わないと取り戻せない。僕達の家が待っているんだ。戦うんだ!

僕はふと横を見る。

あ、あれ井上は?どこにいった?顔が青ざめる。

血の気が引いていく。どこだ。どこにいるんだ。僕はパニックになった。「やめて!やめて!触らないで」井上の声が聞こえる

『怒れ。怒るんだ。あいつを取り戻すんだろ。ほらあそこだ。敵に捕まっている。このままだと奴らに殺され、連れ去られ、玩具にさせられる。だから怒るんだ。』どこからか声が聞こえる。この声どこかで...まあいい。

とりあえずあのゲスどもを殺すんだ。。

「ゆるさない......俺はお前らを絶対に殺す。」

「あー?今なんて言った?殺すって?はは、誰に言ってんだよお前は。」

「もおいいよお前ら...」

「どうせお前は俺のスピード勝てないまま死ぬんだ。姿も見えず。気ついたときにはこうさ。」にやりと笑い親指を喉売に当て横へ引く動作をしてくる。

魔法を使うのは初めてだ。だが、やれる気がする。いや、やらないとだめなんだ。

「おい、……出ろ。奴らを食らいつくすがいい…」


......


あれ..?何もおこらない。なぜだ

「出ろ。出ろ!出ろ!!」だめだ反応がない。

「ははっ。あいつ何やってんだ?まさか魔法すら使えないのか。あんなに【殺してやる】とか言ってたのに。だっさ。さすがグラドのやつ。なさけねぇー。」相手は僕を嘲笑う。

やばいダサすぎる。なんで、なんで魔法を使えない。このままだと井上が...

井上の方を見る。やばい...井上が...井上が殺されてしまう。僕が見たのは、井上にナイフを振りかざす光景。やばい殺される......

「助けて柏木くん!!」

『俺に体を貸せ。そうすればあいつらを殺してやる。そしてあの女も助けられる。だから貸すんだ。』

またあの声だ。誰なんだ。それより井上を助けられるって?

「ほんとに助けられるのか?」

「あぁ当たり前だ。約束しよう。」

「わかった。絶対助けろよ、彼女は僕の大切な人なんだ。」 僕の雰囲気はガラリと変わる。

「あー久しぶりだ。人の体ってのはよお。」

「あぁ?何を言ってやがるまた可笑しい事を言ってやがるのか?」相手は微笑する。

視界から消える。

次の瞬間、背後で肉を切り裂く音。


ナイフを持った男は遅れて気づく。闇が触れた瞬間、叫び狂うほどの痛み。

攻撃は貫通はせずに井上には当たらない。腹部を吸収するように消えていく。

「な、何をした?まさか罠か?卑劣な奴め。よし決めた。殺す。できるだけ苦しめて。」やつは続けて言う

「"オーバーブースト"」

「この魔法は、身体が強化され、スピードが急速に上昇する。お前はこのまま死ぬんだ。ざまあねぇな。」

「ふん。言ってるがいい。」

「今にも後悔させてやるよ」

相手は周囲の岩から岩へと素早く移動する。彼の表情は自信に満ち溢れている。

「しね」やつが攻撃を仕掛けてくる。

「弱すぎる。よわい。よわい。話にならん

よ。」

俺は攻撃を闇で受け止める。やつの腕は、闇へと引き込まれる。

「あ゛あ゛あ゛いたい゛、何なんだ今の…何なんだよお前は...やめてくれ頼むから。何でもするよ。何でもする。金が欲しいのか、わかった、わかった。じゃあ...」

サクッ

闇の刃が首をすり抜ける。


ボトッ

闇が喉元をなぞった。

次の瞬間、男の声は消えた。


「ああ。つまらん。弱すぎる。あまりに弱い。さっさとこの女を連れて帰ろう。」

この地に静寂が訪れる...


よくなった?


........どこだ。

暗い。真っ暗で何も見えない。僕はあの後どうなった。それよりここは.....もしかして僕は

ーー死んだのか。体が動かない。


腕を動かそうとする。

鈍い金属音。冷たい感触が皮膚に食い込む。


「目覚めたか。」

刹那、光が差し、闇を切り裂く


「誰だ...?ここはどこだ!」僕は焦りを感じ、声が大きくなる。

「どこって何を言ってるんだ。感じないか?ここはお前の内側だよ。」

「体の中?ふざけたことを言うな。」

「ここはお前の奥底。魔法書が宿る場所だ。」

てことはこいつが魔法書...?

「心の狭間?てことはお前は魔法書本体なのか?」

「あぁそうだ。だが、俺の姿はまだ見えないだろう。そこでお前に一つ提案がある。」

「提案?」姿が見えないとはどういうことなんだ。

「提案だ。お前に俺の力を貸そう。だが条件がある。」


「お前は僕の力じゃないのか?」

魔法書は声を尖らせる。

「あん?お前は何を言ってるんだ。俺がお前の力?舐めたことを言うんじゃねえ。まず俺はお前の力じゃない。お前が選ばれたとでも思っているのか?」

僕は強張り、黙り込む。条件って言ってたっけ?

「あぁ、条件だ。」急な反応にびっくりする。

心を読まれた?

「そりゃ読めるだろ。俺はお前の体内にいるんだ。」

「それより条件だ。」

僕はその条件に身構える。

「一つ目、この地、グラドを到達すること。

 二つ目、その頂点に立つこと。」


差していた光が影で隠れる。

そして雰囲気が落ちる。

「三つ目、そして、"奴"を討て。

これが俺の言う条件だ。だが条件を守れなかった場合、お前は死に至るだろう。さぁどうだソウよ。」

"奴"?その言葉を口にした途端、急にトーンが下がり、空間が歪むように重くなった。たった一つの言葉だけでだ。

この空間に強い風が吹くように。

嫌だ。支配なんてしたくない。全身が震えるほどに。

「この条件を呑まないとどうなるんだ?」僕は、震える声で言う。全身に寒気が伝わるのを感じる。

「......ユメカが死ぬ。奴は敵を惹きつける。ただそれだけだ。」

僕は全身が震え、硬直する。鎖に繋がっていることすら忘れそうになる。

「彼女はこの先、幾度となく命を狙われるだろう。だがお前には、力がない...どうやったってユメカは守れない。だから俺が力を貸そうって言ってんだ。条件は、呑むのか、呑まないのか、どっちなんだ」

その瞬間僕の頭には、ユメカの笑顔が浮かんだ。支配は嫌だ。でも………守りたい、僕は君の笑顔を守りたいんだ。だから僕は...

呑むさ...

「あ、?今なんて?」

「呑むさ!!!」この暗い空間に声が反復し反響する。

「このままじゃユメカは守れない。だから...だから僕が戦わないといけない。約束したんだ。僕が必ず守るって。強くなりたい。力を貸してくれ魔法書!」

声を発した途端、この空間は大きな音と共に激しく揺れ出す。まるで僕に答えてくれるかのように。暗く見えないところから鎖が飛び出す。それは心臓に絡みつき、黒い血が鼓動と共に流れ込む。絡みついていた鎖は黒く染まり、僕のいるこの場所だけが輝くように、黒く光が差す。


「契約は成立した。」


「王となれ、ソウ。

 全てを踏み越える“黒王”となれ。」


「俺の名はゼルク。忘れるな。」


鼓動がもう一つ増える。

闇が静かに笑う。

そのまま鼓動が重なる。そのまま止まらずに。




「あ、目覚めたよ。おじいちゃん!目覚めたよ。お兄ちゃんが。」

「おお目覚めたかい。ソウくん。」

妙に視界が暗く見える。

「井上!あれ井上は?」

「柏木くん!日覚めてよかったぁ。このまま起きないかと思って…ほんとに目覚めてよかった。」井上は泣きながら僕に抱きついてくる。その姿は光り輝くようにだ。

井上に触れると温かい鼓動が流れ込んでくる気がする。

「柏木くぅん。」そう呼びながら。僕は井上さんを抱きしめる。

「井上も無事で本当に良かった。おれ井上がいなくなったらどうしようかと、」

僕も釣られて泣いてしまう。僕達はしばらく泣いた。膨大で抑えきれない幸福が全身に流れ込んでくる。この一瞬だけは、世界の全てが肯定された気がした。

さっきまでの出来事が嘘みたいに。




「それで?ほんとに戦ったことは覚えてないの?村に帰ってきたときも?」キラが言う。


「あぁ。覚えてない。だけど奪わせない。その時、声がしたんだ。」

「声?」僕は頷く。

「井上はなんか見てないのか?」

「う。うん...途中から気を失ってたみたいで。」

「その声はきっと魔法書の声だ。彼らはそれぞれ自我を持っている。」


「魔法書に自我...か」


「てか井上傷はどうなった?」

「ジルさんが魔法で直してくれたみたい。」

「そんな魔法もあるのか。」

「そんなことも知らんのか。」

「治癒の魔法は、基本の魔法の一つ。」


その後も僕たちは、いろいろな話を聞いた。

窓の外を見る。そこに広がる大地には大岩や山、たくさんの岩石。前から気になっていたグラドとはここら地底のことのようだ。


「あー、そうだ。それより、渡したいものがあったんだ」ジルさんが口を開く。

ジルさんは、一通の手紙を手に持ち、僕たちに差し出してくる。

「ドルク大聖堂?」

「ドルク大聖堂には、長が住まれている。

どうやら君を、大聖堂へと。ぜひ感謝を申し上げたいらしい。何を企んでいるのかはわからないが、そういうことなんで大聖堂に向かいましょう。」ジルが言った。

部屋の空気が寒くなった。ジルの視線が、ほんのわずかに逸れた。その一瞬だけ視界がさらに暗くなった。

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