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馳せる  作者: 南田あさひ
6/15

任務

 「朝早くにすまない」

 

 ハセルがアサカとの日々を過ごして二月が経とうとしていた時のことである。


 二人は今治安保護機構(SPO)本部、十一階にいた。


 「何かあったんですか、屋座蔵さん」


 心力専門対策部。名前の通り、心力の関係している事件や事故を扱う課である。


 「大額(ぬか)大臣の秘書が重要書類を盗んで逃亡した」

 「それはまた大ごとですね」

 「誰だよ大額って」

 「偉い人」


 ハセルの問いに、アサカはスーパー適当に答えた。


 (どうせ俺はあほだよ。ちいっ)


 「秘書の女は今頃フェリーに乗って他国へ逃亡中だ。参皿美廼船の乗船券を購入していた」

 「計画的ですね」

 「ああ、だが大臣が書類の紛失に気づいたのが割と早かった。そこは助かったよ」

 「なるほど。それで俺に女を捕まえろと。でもこれ、心力専門対策部(俺たち)の仕事ですか」

 「機密書類の中には心力の情報も多数含まれている。他の部署には任せられない」


 完全に蚊帳の外なハセルはつまらなそうに突っ立っていた。


 「で、そこにいる二人は?」


 アサカは屋座蔵の隣に立っている二人の黒スーツ姿の男に目をやった。


 「ああ、こいつらは」

 「心力専門対策部所属の賀谷ミヤビといいます。こっちは白杉リンカ。今回の任務にあなたの部下として同行するようにとの命を受けました」

 「はあ」

 「あなたがあの夕暮アサカさんっすか!俺ずっと会いたかったんすよ!サインください」


 アサカは少し黙って、


 「要ります?特に、そこの顔と声がうるさいほう」

 「なっ!失礼な。俺は白杉っす、覚えてください」

 「賀谷は能力持ちだ。必要になる。白杉はまあ・・料理が上手い。必要になる」

 「やっぱ要らんでしょ」

 「ひどいっす!俺絶対ついて行きますからね」

 「はあ・・」


 アサカは頭を抱えていた。そんなこんなの話を聞いてたハセルは一つ疑問があった。


 「なあ、心力専門対策部なのにその、なんつったっけ。うるさいほう、は心力ねーのかよ」

 「だーかーらー!白杉っす」

 「白杉は能力はないがその分剣が経つ。なにも全員が心力を持っているわけでもないし、基準をクリアしたら誰でも入れる。反対に規定値以下なら心力を持っていてもこの部署には入れない。そういうことだ」


 屋座蔵がそう説明した。


 つまり、選ばれた一握りの人間だけが入ることが許される特別な部署。


 「ところで」


 賀谷がハセルのほうを見た。


 「その子も連れて行かれるのですか」

 「そのつもりだけど」


 アサカは何でもないように言う。


 「しかし、何が起きるかわかりません。危険すぎます」

 「ハセルは監視対象であって、その任は俺に任されている。俺に別任務が入れば自ずとハセルも同行させることになる」

 「ここに残っている別の者に頼むのではいけないのですか」

 「やめろ賀谷」


 待ったをかけたのは屋座蔵だ。


 「なぜアサカに監視及び保護の任が下ったのか、その意味を考えろ。ハセルは我々にとっても有益な情報を持っている可能性があるし現に一度何者かに狙われている。アサカという存在がいるということ自体が抑止力になるのだ」


 そこまで言うと賀谷は黙った。


 「俺は守られたりなんかしねえ。自分の身は自分で守る」

 「とまあ、本人もこう言ってるんで」

 ハセルは二か月前、己の弱さに絶望してから特訓に明け暮れている。

 「では任務を言い渡す。大額大臣の秘書、夢佐木等ウララを国境を超える前に速やかに捉え連れてくること。以上だ」

 「「「了解」」」


 四人は港で用意されたボートに乗って出発した。


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