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馳せる  作者: 南田あさひ
3/15

襲撃

 「はあ、はあ、はあ・・」

 「もう一回」


 朝十時。坤国国境から北に数キロいった森。


 ハセルはかれこれ二時間は跳び続けている。

 目の前にいるアサカという人間は、綺麗な顔をしている割に中身は鬼畜だった。


 (このくそ白髪やろう)


 かれこれ三日、この悪魔のような特訓は続いている。


 「コントロールが全くできていない。正直、ここまでの奴を俺は見たことがないんでね」

 その言葉にハセルは舌打ちをした。


 (わかってんだよ、んなこと)


 「能力を伸ばすことよりもまず、コントロールすることを覚えろ。大きな力は己を滅ぼすことにも繋がる」


 現状、ハセルは最高で三十メートルほど跳ぶことが出来る。しかしアサカが言っているのは、三十メートル跳ぶことができても十五メートルは跳べないだろ、ということだった。


 「まあ丁度いいか。少し休憩にしよう」

 「俺は平気だ」


 (あれだけ言われて引き下がれるか) 


 「お前のためじゃないよ。俺が今からちょっと用事あるの」

 「用事?」

 「そう、まあ大したことじゃない。お前はここで休んでろ」


 (こんななにも無い森で?)


 「俺を監視するのがあんたの仕事だろ。監視対象一人にしていいのかよ」

 「いいんじゃない、別に」

 「なっ!」


 (この適当人間め)


 ハセルは目の前の男がどうしようもなく異様に見える。


 「じゃ」


 特に何を言うでもなく、アサカは早々に立ち去った。


 (なんであんな人間に監視なんか任せてんだよ。逃げ放題じゃねーか)


 ハセルは苦虫を嚙み潰したような顔をした後、盛大なため息を吐いた。


 「はあ・・・」


 空を見上げ、三日前の会話を思い出す。

 

  【いいのか?】

 【なにが】

 【俺に修行をつけて。俺は監視対象だろう。力の使い方を教えたら俺は逃げるかもしれない】

 アサカは【ああ、そんなこと】と、妙に納得したような表情をした。

 【お前は確かに監視対象でもあるが、同時に保護対象でもある。もしもの時があれば俺がお前を死んでも守るつもりだが、自分でも身を守る術を持っておくべきだ。と、お偉いさんたちが思われたわけだ】

 

この時のハセルはアサカが、あくまで任務であるということを暗に示したように感じた。それでも、死んでも守るという言葉は衝撃であった。

 

 (の割に守る気全く感じねーけど)


 所々に白い雲のある空が好きだ。上手く言えない。でも好きだ。


 「・・あったかい」


 草っぱらに背中をついて寝転んだ。


 これがずっと続けばいい。

 ・・・なんて、無理な話だ。


 「・・・っ!」


 突然、突風が吹いたような気がした。


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