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馳せる  作者: 南田あさひ
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生意気な子供

大国、坤国には有能な治保管が多数いる。その中でも秀でた存在、心力という特殊な能力を有するものがいた。

 治安保護機構(SPO)本部。

 

 「やあ、よく来てくれたね」


 出迎えた男は底のない胡散臭い笑みを浮かべている。

 

 「悪いね朝早くに呼びつけてしまって」


 応接室に二人は向かい合って座っている。


 「あなたが直接俺を呼ぶってことは、割かし重要なことなんでしょ?」


 見定めるような視線と飄々とした態度は、治安保護機構トップである大徳にまで上り詰めた出雲に対するあり得ない振る舞いであった。


 「アサカ君、君に今回してもらう仕事って言うのはね」


 そんなアサカの無礼にも出雲は気にする素振りも見せない。それどころかどこか楽しそうである。


 「入ってきてもらえるかな」


 そんな合図とともにドアがガチャリと音を立てた。


 「子供・・ですか」


 入ってきたのは黒髪のツンツン頭の少年と黒スーツの男であった。黒スーツは出雲の部下だ。何度か見たことがある。


 「子供じゃない俺はもう十六だ!」


 「はあ」


 アサカは子供が苦手だ。


 「彼はハセル君、この間国境付近で気を失って転がっていたのを保護したんだ」


 「それで俺にどうしろと」


 (どうも嫌な予感がする)


 アサカは諦めた様子で次の言葉を待った。


 「君にこの子を預かってもらおうと思ってね」


 「・・・は?」


 アサカは間の抜けた声を出した。


 (予想外過ぎて反応に困る)


 「どういうことか説明してもらえますか」


 「いやね、色々調べた結果、この子にはどうやら心力が備わってるらしいんだよ」


 その言葉にアサカの表情が変わった。


 「それが俺がその子を預かる理由にはならないでしょう」


 「いや、そうじゃない」


 そう言って出雲は立ち上がってハセルの元へ歩いて行った。


 「彼の情報がない。どこで生まれたのか、親は誰なのか。今までどうやって生きてきたのかも。そもそも名前すらわからない。なにも話してくれないしね」


 「ハセルって名前があるじゃないですか」


 「それは私が名付けた。良い名だろ」


 相変わらずの笑顔で、語尾に音符でもつきそうな声音はこの状況を楽しんでいるのだろう。


 「なるほど。それで俺に監視をというわけですか」



 後に貰った資料を読むと更に詳細に書かれていた。

 要約すると、


1.出生などの記録が全くと言っていいほどないこと

2.心力を所有していること

3.少年を発見した際、右手首に0929という数字が記載されたタグのようなものがついていたこと


 「如何せん情報がないとね、この子の存在が明確化されない。聞きたくないことを無理やり聞くのは忍びないし、心力を持ってるわけだから野放しにもできないってことだ」


 「あなたが合法的にとは、ちょっと気持ちが悪いですね」


 嫌味だ。

 しかしここで待ったをかけたのはハセルであった。


 「ちょっと待て!俺は納得しちゃいねえ」


 「はいはい。わがまま言わない」


 出雲はハセルの首根っこを摑まえてアサカの前に突き出した。


 「くそっ、放せ!」


 「じゃ、あとよろしくね」


 言いたいことだけ言い終えるとアサカとハセルを置いて、出雲はその場を後にした。


 「・・・はあ」


 何度目かのため息を吐くとアサカは立ち上がった。


 「行こうか」


 「ちっ」


 ハセルは悪態をついてはいたが何も言わなかった。ただふてくされたような顔で後をついてくるだけだった。

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