ミース・トーラ
ミースは歩く。そして世界を創っていった。
トーラは歩く。そして世界を壊していった。
ミースとトーラは本能で歩いているが、あてもなく歩き回ることもあれば
目的をもって行き先を持つこともあった。
そして極々たまに、ふたりが出会うこともある。
※ ※ ※ ※ ※ ※
ミースとトーラは、遠くの闇に白く黒い光がぼんやりと浮かんでいるのを見つけた。
「あれはなんだろう?」
ミースとトーラは不思議に思い、その白黒のぼんやりへと足を向ける。
距離が縮まると、その光はちいさな球であることが見てとれた。
その球はうっすらと白く瞬いており、闇のあいだをゆらりゆらりと漂っている。
遠目だったので、白黒の光に見えたのだ。
触れると、ほのかに暖かかいことがわかった。
「これは、なんだろう?」
ミースとトーラは首をひねった。
はじめて目にするモノだった。
「「君は、だれ?」」
ミースとトーラは、訊ねてみた。
球はポッと斑に光っただけで、返事は返ってこなかった。
しかしミースはその球を、とてもとても美しいと感じた。
しかしトーラはその球が、とてもとても暖かいと感じた。
ミースとトーラは随分と長いあいだ、その美しくて暖かい球を見つめていたが、
やがて、それぞれ別の方向へと歩きだした。
ミースは歩く。そして世界を創っていった。
トーラは歩く。そして世界を壊していった。