白雪姫誘拐される。
ある時、こうもりが化けた近習が白雪姫に近づくと
「白雪姫様、あそこの森に入るとこの世で何番目かに美しくなれる泉が湧いています。」
年中美を追求する白雪姫がその提案を飲まないわけがない。白雪姫は二つ返事で承諾した。その日の深夜
「白雪姫様。泉に出かけましょう。」
「え、こんな深夜に行くの?もっと昼間でいいんじゃないの?」
「いえいえ、今から行かないと森に着くころには深夜になってしまいます。それにあの泉は持ち帰ることが出来ません。行かれないのなら女王様にお教えするだけですが。」
その言葉が白雪姫をいらだたせた。
「分かったわよ。行ってあげるわ。場所を教えてくれない?」
そう、白雪姫は近習についていった。門には護衛がいたが魔女が眠らせている。
「こちらの馬車にお乗りください。」
こうもりはそういうと、窓のない馬車に案内した。
実際、白雪姫を置き去りにする予定の森はこの城からは3週間はかかるのだが、魔女の馬車で一夜にして行けるようにしてある。やけに白雪姫にやさしいように思えるが、魔女にとっては最後のせめてもの情けである。
一夜、白雪姫が眠っている間に馬車は森に到着した。
「で、その泉っていうのはどこにあるの?教えて頂戴。」
「へえ、ついてきて下せえ。」
そういうと、近習は森の中を案内した。白雪姫もついては行くのだが、全くつかないどころか、水辺すらない。すると、白雪姫は突然
「ねえ、あなたも場所分からないんじゃないの。」
「へえ、そうでございます。」
そもそも、この森の中にそんな便利な泉はないのだからその答えは正しいのだが。
「なら、貴方が探してきて後で私に報告して連れていくというのではだめなの?」
その言葉をこうもりはありがたく思った。なんせ、連れまわせとは言われたがどれだけ連れまわせばいいのかを知らないのでここに置いておいて後で迎えに来なければそれでいいのではないかと思った。
「へえ、そういたしましょう。」
こうもりは不敵な笑みを浮かべると、ありもしない泉を探しに行った。と、見せかけて適当なところで飛び立っていった。
この時こうもりは大きなミスをした。こうもりの腰には毒付きの刀がついている。本来魔女は適当なところまで白雪姫を連れまわさせて、その刀で殺してしまう計画だった。それをこうもりは使わなかったのである。使わなかったというより、あまりにも自分の計画がうまくいったので油断してしまったのだ。これが後で魔女にばれて大目玉を食らうことになるのだが、それは別の話である。
さて、当の白雪姫はそもそも30分以上待てない性格なので、すぐに怒り出した。でも、こうもりはもう飛び立って城の方に帰ってしまっている。直ぐにあの近習があの女王の手先であることを思い出し、
「ああ、やられたっ」
と置き去りを食らったことが分かり、地団太を踏んだ。
一方の城の方では白雪姫が居なくなったというので上へ下への大騒ぎである。
「レオ、娘はどこに行ったのかわかるか。」
「いえ、私には分かりません。なんせ私今夜は高いびきを書いて寝ていたものでして。」
そう、レオが必死で釈明しているところに女王がやって来た。
「あら、王様、レオ・バッカード伯爵。あの娘がいなくなったそうですね。」
「ああ、今どこにいるかわかるかね。」
王は女王に対して質問する。
「ええ、わたくしも信じられないことでございますが。あの子は最近思い悩んでおられたご様子。どこかに失踪されたのかと思われますわ。」
そう女王は目に涙を浮かべながら語る。無論自分が原因なのだが。
それはたいしての問題でもないということになる。




