実習帰りの大学生
不審者です!
私は慌てて走り出しました。
何度も振り返りました。怖くて声が出せません。
とりあえず逃げなきゃ。逃げなきゃ。夢中で走りました。
十字路の角を曲がって、自分のアパートへと駆け込みました。
エントランスにあるオートロックの操作盤に鍵を挿して…手が震えてうまく鍵を回せません。
何度か繰り返して、カチリと鍵を回すと自動ドアが開きました。
「ハァ、ハァ」
私は、二階へあがる階段の途中でへたり込みました。
息があがって、もう走れません。
機械音を立てて自動ドアが閉じていきます。それを見て一安心です。
「ぎゃあああ!!」
誰かの叫び声!?
きっと、私の後ろを歩いていた男の人です。
あれが噂の通り魔です。
彼のすぐ後ろにいた赤い服、赤いヒールの女。気持ち悪いほど赤い口紅。
その女の手には、街灯に照らされて刃物が光っていました。
あの時、私が声を出せたら男の人に「逃げて」って言えたかもしれない。
そうだ警察。警察に連絡しなきゃ。
後悔と恐怖で、また手が震えます。やっとカバンからスマホを取り出しました。
緊急通報。
でも、うまく操作ができません。落ち着かなきゃ。落ち着かなきゃ。
その時です。
コツコツコツ…
エントランスに赤い服の女が入ってきました。その手には血だらけの刃物が。
「あ…あ…」
私を追って来た!?
恐ろしさで叫ぶことすらできませんでした。
でも、オートロックのドアがあります。防犯ガラスの丈夫なドアが私を守ってくれています。
早く家に帰らなきゃ…でも、腰が抜けて立ち上がれません。這うようにして階段を上ります。
女は、そんな私を見てニヤリと笑い、ポケットから鍵を取り出しました。
その鍵を操作盤に挿し込んで、カチリと回したのです。