当たり前だけど旅は辛いものです
大きな荷物に不釣り合いな華奢な体。木の枝を杖の代わりにして一歩ずつ歩みを進める少女。その名もユーカ。長い茶髪をボサボサにして、その顔はいかにも疲労困憊といったところだ。
「ふぃー…ふぃー…な、舐めてました…身体強化エリクサーを飲んでいれば100kmなんて余裕だと…まさか三日もかかるなんて…完璧な計画だと思ったのに…ダメです…ちょっと休みましょう…」
ユーカは道の端っこにリュックを下ろし、その場に座り込む。
リュックには薬の素材の他に、今まで作ったエリクサーやポーション、食料や寝具が入っているせいで、背負うだけでも疲れてしまう。薬を使えば重たい荷物でも楽に持ち上げることが出来る。しかしユーカは使えそうな素材を見つけては寄り道を繰り返し、効果時間を無駄に浪費し、荷物だけが増えてしまったのだ。
効果が切れる→エリクサーを飲むを無闇に繰り返した結果がこのザマだ。
「と、とりあえず調薬しましょう…薬がなくてはこの旅は終わりです…神童がこんな所で挫けてはいけないのです!」
空元気を出し、リュックから素材を取り出し調薬を始める。使う素材は乾燥した肉と穀物。血となり肉となりやすい栄養を含んだ素材が適正な素材だ。
「次の国に着いたらガッツリお肉を食べたいですね…でもまずは到着することが先決です…おっとヨダレが」
肉と穀物をすり潰し、水に溶かして魔力を注ぎ込む。あっという間に完成した。簡易的なエリクサーだがその効果は十分だ。
「それじゃあいただきます!ぷはぁ〜この一杯の為に頑張ったってもんですよ!この力が溢れてくる感覚!たまりませんねぇ〜!」
足取りは随分と軽くなった。ユーカは片付けを済ませ、リュックを軽々背負い歩き始めた。
約2時間ほど歩いただろうか。ようやく目的地である冒険者の集まる国、バレントスに到着した。
「はぁ〜着いた〜…まずは入国手続きですね!ちゃちゃっと済ませちゃいましょう!」
ユーカは自分を移動商人である事を伝えると門番は快く入国を許可した。そして他国の商人が販売をする際にはギルドから許可を貰わなければいけないことを知った。
「色々教えてくれてありがとうございます!あ、お礼にエリクサーでも飲みます?お安くしておきますよ!」
「いや、遠慮しておくよ…頑張ってね…」
無事に入国したユーカが最初に向かったのはギルド…ではなく宿屋だった。受付に代金を払い、部屋に転がり込む。
「まずはお風呂に入って、今日はご飯食べて寝ましょうか!商売は明日からです!寝る子はよく育つんです!」
いよいよ明日から商売開始だ。神童ユーカの名を世界に轟かせる計画の第一歩が始まる。