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東洋の楽劇隊  作者: 伊藤 黒犬
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04 閃光

 かつん、と石造りの塀に当たった銃弾が地面に転がった。灰色の雲のかかった、青白い月明りが銃弾を光らせる。

 サングラスの支えが片方割れて足元に落ち、太陽の頬に赤い線が一すじ入っていた。

 太陽は拳銃を持った覆面の馬乗りを見る。

「次は……」

 馬乗りは言い、照準を太陽の左肩に合わせる。

「……や、やめて!」

 キヨラが立ち上がり栗色の馬の馬乗りを止めようとするも足元に銃弾が放たれた。足を止め、地面に食い込んだ銃弾を見つめる。驚いた馬が村の外へと走り出し、その勢いにキヨラは再び地面に座り込んだ。

 太陽は目を細め、拳銃を睨みつける。

「あっ、俺の馬」

「ほっとけ。馬なんて」

 栗色の馬の馬乗りが言いかけたとき馬の方を向いた覆面の横腹に蹴りが入れられる。


 覆面は地面に倒れ込んだ。太陽に刃物を刺そうとした覆面の手にナイフが刺され、後ろに振りほどく。

 馬乗りは引き金を引こうとするも照準が心臓部にあるのに気が付き咄嗟に銃口をずらした。引きかけた瞬間、栗色の馬が大きく前足を上げた。

「おっ」

 その反動でキヨラは馬に突き飛ばされた。銃声が鳴る。

「邪魔しやがってっ」

 馬乗りは銃口をキヨラに向けて引き金を引く……が、銃口から煙が細く昇るのみで弾は放たれない。

 舌打ちし、馬乗りは馬を飛び降り拳銃の代わりに腰からスタンガンを引いた。時、同じものを首に当てられる。

「影が薄くて助かったぜ」

 フードの人物がスイッチを押すと同時に蒼白い閃光が夜闇に音を立てる。馬乗りは白眼になり、膝から地面に崩れ落ちた。

「隊ちょ」

 振り向いた覆面は背後から後頭部を殴られて足元を崩す。血の流れる手を押さえつけ、後ろから背中を殴ろうとした覆面の目と目の間にナイフの刃先がかざされた。

「ひ……」

 喉から息を漏らして覆面は固まる。太陽の前で倒れていた覆面は体を起こし、馬の方へと走り出した。目が合った覆面も、後を追うように走り出す。

「ま、待ってくれ! 俺は馬がっ」

 その後を追おうとするもわき腹を抑えてうずくまり嘔吐する。ナイフをかざされていた覆面は、ふっと失神して石造りの塀に頭を打ち付けた。

 太陽は血の付いたナイフをそのまま肩掛け鞄の小ポケットにしまった。

 馬の足音と男の声が夜の村から遠のいていく。



「……だ、大じょ」

「賊が逃げたぞ!」

 キヨラが立ち上がろうとした時、どこからか声が上がった。家々に火が灯り、窓が開けられ、扉が開いて村人たちが家から出てきた。

「あなた方があの悪党を……!」

 布を被った村人の視線がキヨラとフードの人物に向けられる。

「あっ、いえ、私じゃなくてあの人が……」

 慌ててキヨラが太陽の居た方を向くと、既にそこに太陽の姿は無かった。

「え」

「今夜は是非泊って行ってください、それから」

 集まった村人たちの誘いにキヨラは両手を横に振って立ち上がる。

「いえ、あの、私行かなくちゃだから」

「ちょっと待ってくれ!」

 あぜ道を走り出そうとしたキヨラを、フードの人物が呼び止める。フードを下ろし、短く切られた黒い髪が夜風の下に露わになった。

「頼む。俺も連れてってくれ」

 突如頭を下げた、成人らしきフードの人物にキヨラはえっと声を漏らす。

「で、でも家族の人は」

「この国にはいない。旅費を稼ぐまでの間だけだ、雑用係としてでも構わない」

 フードの人物は頭を下げ続ける。キヨラは戸惑いを見せるも、後ろを振り返り

「多分……大丈夫だと思う。名前は?」

 ぱっと笑顔でフードの人物を振り返る。フードの人物は顔を上げた。

「尹だ。助かった、じゃんじゃん言いつけてくれ」

 そしてにっと口角を上げて見せる。キヨラはあ、と声を洩らして村の反対側の門、獣道の伸びる林の方を向いた。

「あの人が行っちゃう!」

 走り出したキヨラにフードの人物、改め尹はついて走る。

 月灯りに照らされた、灰色の雲の漂う夜空の下を走り去っていく二人を村人たちは長いこと見送っていたが、ぽつぽつと家へと帰っていく。

 星がまたたいて虫の鳴き声が聞こえる。



「いた!」

 林の中で息を切らして立ち止り、キヨラは息をついた。後から尹も立ち止まる。

「あ、あのね、この人も一緒に……」

 呼吸を整えながら歩いている太陽に話しかける。しかし反応は無い。

 口を閉じ、口元に笑みを浮かべてキヨラは歩き出した。え、と呟いて、尹は不思議そうに太陽の背姿を見て

「あ」

 声を上げた。

「どうしたの?」

「その人、肩が……」

 え、とキヨラが振り向いた瞬間、太陽は地面に崩れ込む。

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