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盗賊との戦闘

 どれくらい走ったのだろうか、気がつくとそこは森の中だった。


 正直な話、僕は授かるであろうスキルに甘えてこれまで生きてきた。


 日々の鍛錬(たんれん)は厳しいものだったが、どうせ良いスキルを貰えるから地道な努力に意味なんかない。


 そんな甘い心を持っていたので、英雄であるゴーシュの鍛錬が受けられるというとてつもなく恵まれた環境にいながら、そのことに感謝することなく鍛錬の時間を流れ作業のように無為(むい)に過ごしていた。


 だから、僕がこんなスキルを受けたのは、これまでの甘ったれた自分に対する罰のようなものなのかもしれない。


 日々の鍛錬を怠らなければ、どんなスキルを授かろうとも英雄の息子に恥じない働きを果たせたはずなのに。


 そのことにやっと気づいたが、今気付いたところでもう遅い。


「きゃあああ!誰か助けてぇ!」


 自責の念で胸がいっぱいになっているところに、女の悲鳴が森に響いた。


 咄嗟(とっさ)に声のする方向に駆け出した。


 だが、動き出したのは困っている人を助けたいなんていう英雄みたいな理由ではなく、誰かを助けることによって、これまで楽な方に逃げていた自分から目を背けられるという理由だった。


「っはは、最低だな自分」


 そうやって自嘲しながら走っていると、盗賊らしき集団に襲われている少女が見えた。


 細身の盗賊の一人が少女の髪を引っ張り上げて、下卑(げび)た表情を浮かべていた。


「くぅ、誰か……誰かぁ!」


「ギャハハ!いくら叫んでも、こんな森の深くに助けなんて来ねぇよ!」


「おい!手荒(てあら)真似(まね)はすんな!いくらエルフの女とは言え、傷が付いたら高く売れねぇだろ!」


 リーダーと思しき男がそれを咎めた。


 盗賊らの、女の子を物としか見ていない態度に(はらわた)が煮えくり返った。


「……そこまでだ」


 僕の登場に怪訝(けげん)そうな表情で振り返る盗賊たち。だが僕が一人だと分かると、馬鹿にしたように笑い始めた。


「ギャッハハハ!ヒーローにでもなったつもりか?てめぇ一人で俺たちに勝てるわけねぇだろ!」

 

 そして粗末なナイフこちらに向けながら突進して来た。


「遅い」


 ギリギリまで引きつけて寸でのところで刺突をかわす。


 目論見(もくろみ)が外れてバランスを崩したところを、肘打ちで大きく吹っ飛ばした。


「おい、こいつ結構やれるみてぇだぞ」

「いや、束になってかかれば余裕だろ」


 迅速に一人を倒した僕に対して少し警戒が強まったが、人数有利は崩されていないからかまだ余裕そうな態度を崩さない。


 いくら鍛錬をサボっていたとはいえ、腐っても英雄の息子だ。


 ざっと数えたところ人数は十人、全員ナイフを構えてはいるものの、強そうなのはリーダーらしき人物のみで、それ以外の下っ端はナイフの構え方からして戦闘慣れしてなさそうなので、注意すべきはリーダーだけだ。


「おらぁ!」

「甘い」


 無策で特攻してきた下っ端一人の刺突(しとつ)を、先程と同じようにギリギリでよけた後、屈んで足を引っ掛けて転ばせる。


「へぶっ!?」


 突撃した勢いをそのままに顔面が地面に叩きつけられ、間抜けな声と同時に骨が折れるような痛々しい音が響いた。


「どうした?束になれば勝てるんだろう?」

「死ねぇぇぇぇ!」


 僕の安い挑発に乗っかって、今度はリーダーを除く全員が耳まで真っ赤にして一斉に突っ込んで来た。


 感情的になった者の動きは非常に読みやすいため、特にピンチになることもなく集団を(さば)いた。


「あとはお前だけだぞ?」


「ひっ……来るなぁ!こいつがどうなってもいいのかぁ!?」


 残ったリーダーは冷や汗をかきながら、少女の首筋にナイフをあてがった。


 その脅しははったりだと分かったので怯まずに突っ込む。


 先程奴らが言っていたように、エルフ……しかも若い女となればかなりの値段が付く。


 エルフは人里離れた森の中でひっそりと暮らしていて、人目に触れることはほとんどない。その上魔法の扱いに長けており、戦闘力はかなりのものなので子供一人を連れ去るのにも相当な労力を払ったはずだ。


 だからこそ、そう簡単に殺すことは出来ないと踏んだ。


「ま、待て!」

「待たねぇよ」


 僕の予想通り、リーダーはエルフの少女を人質に取れば僕が何も出来なくなると思っていたようで、間髪入れずに突っ込んだ僕に対する反応が遅れた。


「へぶしっ!?」


 無防備な顔面に全力のパンチをかます。吹っ飛ばされたリーダーは地面に頭を叩きつけられ動かなくなった。


「大丈夫か?」


 安心したのか、その場にへたり込んだエルフの少女に声をかける。


「あう、あ……」


 少女は何かを伝えようとしていた。先程大声を出して助けを呼んだせいか、声が掠れていて何を言ってるかよく分からない。


「あ……あぅ」


「……?後ろに何かーーー」

「グガァァァァァァァァァァ!」


 少女が身体を震わせながら僕の後ろを指差したので、それにつられて振り返ったと同時に大きな咆哮(ほうこう)が響いた。


 そこには僕の身体の五倍ほどの大きさの魔獣がいた。

もう遅いが流行っていると聞いて、申し訳程度のもう遅い要素を取り入れました()

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