第十二話
NPO法人「飛龍会」の会長室。
役員の佐々木と会長が話していた。
「佐々木よ、今回の件で私は、責任を取るよ。辞任する。」
佐々木は言う。
「会長、何を言っているんですか。責任を取ることって辞めることですか?立て直すこともが責任を取ることじゃないんですか。」
会長の眉間には、シワの跡が数本あった。
「ここまで頑張ってきたが、私にはどうやら管理能力に欠けているみたいだ。」
「何をおっしゃいます。私は会長のもとでしか働けません。」
会長は、マグカップのコーヒーを口につけ、静かに机に置く。
「佐々木・・・俺はな、今まで救えなかった子供たちへの償いとして・・・償いではないな、悔しかっただけなんだよ。その想いひとつでやってきた。その結果がこれだ。」
「・・・」
「失うものが大きすぎた。家族にも悪いことをした。」
「息子さんのことですか?会長、息子さんや奥様のことは、私も知っています。でも今は飛龍会の立て直しを考えるべきです。今、会長がお辞めになられたら、飛龍会はバラバラになってしまいます。」
会長は両目をつむり、しばらく黙っていた。沈黙が部屋に流れた。佐々木は頭を垂れ、拳を握っていた。