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プロローグ
「リーナ、今まで黙っていたが、実はお前は俺たちの子供ではないんだ。」
目の前で、申し訳なさそうにしている三十代前後の男性。そしてその横で涙を流す女性。二人とも、他人の子と言えどこれまで十五年、一つ屋根の下で暮らしてきた私と別れるのは辛いと見える。
でも父さん、私は貴方が明日、旅立ちの前に名残惜しそうにする私を、ここはもうお前の家ではないと蹴飛ばす事を知っている。母さん、貴女のその涙が私と離ればなれになる悲しみではなく、「本当の」自分の家族が生き残る確率が上がった事への安堵から来ている事を、私は知っている。
だから。私は、精一杯の笑顔を浮かべると、何でも無いことを話すように言葉を紡いだ。
「そうだったんですね。それでは、フランツさん、ブリギッデさん。今まで血の繋がりのない私を養ってくださり、本当にありがとうございました。」
それまで、父さん、母さんと呼んでいた私が二人を敬称つきの名前で読んだのに驚いたらしい元両親に一つ頭を下げると、私は自分の部屋へ向かった。
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