ギリムの講義
「お前、そんなにコアに興味があるのか?」
「はい、とても」
ジグは即答した。
「ユールにも聞いたのですが、あいつの説明はよくわからなくて…」
「はっははは、そりゃそうだ。 あいつがちゃんと説明出来たら気持ち悪いだろ?」
「それは…まぁ…」
爆笑するギリムに苦笑いでジグは返す。
「っても俺だってそこまで詳しいわけじゃねぇ。 わかるのはここに繋げれば、こっちが動く。 長い距離を通すには中継がいるだの、そのくらいの初歩的な事だ。これが何で出来てるかなんて質問には答えられないぞ」
「それでも十分に凄いですよ」
コアを掲げながら話すギリムに感心しながらジグは言った。
「そんじゃまぁ、行きながら話すか」
「はい」
二人は部屋から出て歩きだした。
「まずコアが何から取れるかってのは知ってるよな?」
「はい、ネルレイズの核…ですよね?」
「そうだ、よく知ってるな。ネルレイズ、海獣…呼び名は色々あるが、つまりはあいつらの核、心臓だな」
ジグの答えに感心したようにギリムは言った。
「取り出したコアは単体では意味をなさないが、同じネルレイズから取れた骨を加工した物にぶつけると…」
そう言ってギリムは取り出した板状の塊にコアを軽く当てた。
…キーン…
「光った…」
甲高い音をたてて光だしたコアを見てジグは驚愕した。
「そうだ、この状態のコアは常にエネルギーを発している」
「エネルギー…ですか?」
「ああ、この船内の明かりや食堂の火なんかにも活用出来るぞ」
ギリムは説明するが、ジグはぼーっと淡く輝くコアを眺めていた。
「ちゃんと聞いてるか?」
「あっ、すみません…」
ギリムは笑いながら言った。
「まぁ、このままじゃエネルギーが生まれるだけだ。 これを他に伝えるには…」
「伝えるには?」
「実際にやったほうが早いな。こっちだ、ついてきな」
そう言ってギリムは壁の一部を指差した。
「これだ」
「これですか?」
壁に埋め込まれた箱の前で二人は止まった。
「この中にコアが入るんだ、ほら」
「これは…壁に這ってる管ですか?」
箱を開けると真ん中に窪みがあり、そこにコアがはまっている。
窪みの周りからは管が外に伸びていた。
「そうだな、あれと同じものだ。 あれはネルレイズの皮膚から出来ていてな、コアが発しているエネルギーをどういうわけか伝えてくれる」
「どういうわけか…」
「うるせー、詳しい事は研究区画のお偉いさんに聞きやがれ」
途中から丸投げしたギリムをジグは笑った。
「しかし、殆どネルレイズから出来ているんですね…」
「そうだな、あいつらは見境なく辺りを破壊する災厄だが…居なかったら俺らは生きてなかったかもしれんな」
「皮肉ですね」
「ネルレイズ様々だ」
渋い顔をするジグにギリムはふざけて言った。