親子
ユールと別れたジグは船長室に戻っていた。
「親父」
「ん? ジグか。 ユールはどうだ? それと、親父じゃなく船長と呼べ」
「わかったよ、ダグラ船長」
ダグラは注意しつつユールの様子を聞いた。
「随分心配してるんだな…見た目とは大違いだ」
「なに…あいつはバカこそやるが、自分の仕事に遅れたことはなかったからな、気になっただけだ」
「なるほどな。 …特に変わった様子はなかった、思い過ごしじゃないか? 変な夢を見ただけだろう」
「そうか。なら良いが」
ジグの言葉にダグラは頷く。
「他になければ、俺は仕事に戻るぞ?」
「ああ、ギリムの所か。 丁度いい、これを届けてくれ」
「これは…」
ジグは渡された塊を眺める。
「外殻用のコアだ。補充が必要と連絡が来ていたからな」
「わかった、届けておく」
「任せたぞ」
そう言ってジグは船長室から出た。
「…俺はそんなに怖い顔か?」
「…えっ? いや…」
扉を閉めるときに、そんな会話が聞こえてきたが気のせいだろう。
部屋から出た彼は整備室に向かって歩いていた。
「相変わらずここは暗いな」
そう言ってジグは壁を触る。
ここは船の外殻、殻で覆われている部分の裏側にあたり、外側程ではないがゴツゴツとした壁があり、無数の管が這っている。
暫く歩くと部屋がありジグは扉の前で止まった。
「ギリムさん、戻りました。 船長から届け物を持ってきましたよ」
そう言いながら扉を開け中に入る。
「ん? おぉ、戻ったかジグ。…届け物か?」
中で作業をしていたギリムは手を止め振り返った。
「はい、これです。 補充のコアだそうです」
「おお、そうだった。 外殻の中継用コアがヘタって来てたんで頼んどいた奴だな。助かるよ」
「いえ、俺は届けるよう頼まれただけですから」
「相変わらず固いな、お前は」
ジグを見て笑いながらギリムは言った。
「よし、じゃあ俺はこれを替えに行くわけだが…来るか?」
「はい、是非お願いします」
「お、おう」
真剣な顔にギリムはたじろいだ。