見張り台
「なんだ? 喧嘩でもしたのか?」
二人を見ながらジグは言った。
「違うわ、正当な報酬よ」
「横暴だ…」
「ははは、仲が良いな」
正反対の事を言う二人をジグは笑った。
「それじゃ、私は食堂の手伝いに戻るわ」
「ああ、またな」
「おう、悪かったな」
手をひらひらとさせながら彼女は言い、降りていった。
「親父に絞られたか?」
「後で罰が待ってるそうだ…」
「その程度で済んだならましなほうだな」
渋い顔で言うユールにジグは笑いながら言った。
「お前は罰を受けたことがないから、笑い話に出来るんだよ」
「そうか? 俺だって小さい頃はよく怒鳴られたさ」
「お前が?」
ユールは信じられないと言わんばかりの顔をした。
「なんだ、その顔は。 …そうだな、例えば船に積み込む食料箱からくすねたり…勝手にコアを弄って怒鳴られたりもしたな」
ジグは思い出しながら言った。
「コアを!? 想像できないな…」
「お前みたいにコアの知識があったわけでもないからな、興味があったんだ。痛い目を見て懲りたが」
はは、と笑いながらジグは肩をすくめた。
「知識ったって俺もそこまで詳しい訳じゃないぞ、なんとなく使い方がわかるだけだ。 説明しろと言われたらお手上げだよ」
「結局の所、どんな感じなんだ? そのなんとなくと言うのは」
「んー…。 コアが燃料で、それを使って動かすと言うか…。 動かす物も合うものじゃないと動かないから、合うように変えてだな…」
「あー、よく解らん」
ユールは歯切れ悪く説明するが、ジグには伝わらなかった。
「俺に聞くのが悪いんだよ。 国に帰ったら研究区画の人に聞けば良いだろ?」
「あー、あそこは入りづらくてな…」
「まぁ、それはわかる…」
ユールは提案するがジグは渋った。
「空気が重いっていうか、ちょっとの事でも注意されて居づらい…」
「ははは、空気が重いのは分かるが注意されるのは、お前が禁止事項を守らないからだろう?」
「何がダメか言ってくれれば良いんだよ!」
「入り口にでかでかと書いてあったぞ」
「そ…そうだっ…たかなぁ…」
ジグに指摘されたユールはしどろもどろに答える。
「さて、それじゃあ俺は仕事に戻るぞ」
「ああ、昼飯ありがとな」
どういたしまして、とジグは降りていった。
「さてと…」
ユールは見張り台に付いている筒を持ち、横に付いているボタンを押した。
「んー。何にもないな…、当たり前か」
それを目にあてながら辺りを見回してユールはぼやいた。