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エミル


カンカンカンカン


「やばい、やばい、あいつに借りなんて作ったら何言われるか分かったもんじゃない…」


船内を走りながらユールはぼやいた。




船外への扉を見つけ、ばんっと扉を開けた。


視界一杯に海が広がり、太陽の眩しさに思わず手をかざした。




「んー。 今日も良い天気だ、これで何か見つかれば良いんだけど…」


見張り台にむかい歩きながら海を見てユールは言った。




船は床が金属で出来ていて、外側の部分は殻のようなもので覆われている。


殻からは管が伸び船長室の方に伸びていた。




「俺もいつか自分の船を持ってみたいなぁ」


船を眺めながらユールは言った。




そうしている間に見張り台近くに着く。


上を見上げると見張り台の上に赤っぽい髪が見えた。




「さて、なんて言い訳をしようかな…」


そう考え込む。




「…ああ、さっきすぐわかるって言われたばかりだったな…。 大人しく謝るか…」


先ほどダグラに言われた事を思いだし、ユールは諦めた顔で言った。




「…うん?」


歌が聞こえ、ユールは上を見上げた。




「ふん、ふふん」


見張り台の上ではエミルが上機嫌に鼻歌を歌っていた。


下から忍びよってくるユールには気づいていないようだ。




「よっ、エミル」


そんな彼女にユールは静かに近づき話しかけた。


エミルは赤いショートヘアで気の強そうな顔をしており、身長はユールより少し低い。




「ひゃあっ!」


突然話しかけられた、エミルは飛び上がって悲鳴をあげた。




「なっ、ユール! あんたいつから居たのよ!」


「えーと、上機嫌に歌い始めた所からかな?」


恥ずかしそうに、怒りながらエミルは聞くがユールは茶化すように返した。




「そう、殴れば記憶って消えるかしら?」


「まてまてまて、その前に俺が消える!」


清らかな笑顔で拳を握るエミルにユールは焦る。




「全く、見張りのサボりを変わって貰っておいてやる事がイタズラなの? 何か他に言う事は無いのかしら? 」


「う…。それは俺が悪かった、謝るよ」


「…」


エミルは咎めるが、予想外の返事に固まった。




「な、なんだよ」


「あんたが素直に謝るなんて…。 何もおこらなければ良いけど…」


「う、うるさいな、さっき船長に言われたんだよ。 嘘ついてもすぐ分かるから正直に謝れって」


神妙な顔で言うエミルに苦い顔でユールは返事をした。




「あはは、あんたらしいわ、その正直な所がね」


「馬鹿にしてないか?」


「してないわ、良い所だって意味よ」


「どうだか…」


笑うエミルに、ユールはため息をついた。




「じゃっ、見返りの件だけど…」


「は!? 今謝っただろ?」


突然話を切り返すエミルにユールは焦る。




「それとこれとは話が別よ。 そうね…次の食事の果物をくれれば良いわ」


「ちょ、ちょっと待て! 果物はたまにしか出ないんだぞ!」


「それが?」


このくらい当たり前でしょと言わんばかりのエミルにユールは狼狽える。




「ぐ…、分かったよ…。けど果物はいつ出るか分からないからな!すぐには無理だぞ」


「ええ、分かってるわ。 出たときで良いわよ」


そう言うユールは内心、気づかれる前に食べてしまおうと考えていた。




「ユール! エミルも居るのか?」


そんな二人に見張り台下から声がかけられた。




「あら、ジグ。 昼食は終わり?」


「ジグ! どうしたんだ?」


二人は下を覗きながら答えた。




「ああ、さっきな。 ユールにも持ってきてやったぞ」


「何を?」


登りながらジグは言うが心当たりがないユールは聞いた。




「飯だ。 朝から何も食べてなかっただろう?」


「ああ、そういえばそうだった! ありがとうな、ジ…」


そこまで言ってユールは、はっとする。




食事の一点を見たあとユールは振り返った。


「ありがとう、ユール?」


そこには笑顔のエミルがこちらを見ていた。




「ちくしょう…」


彼女の手に渡っていく果物を見ながらユールは嘆いた。


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