ある日突然
土の器 それは人間
砂の器 それはvampire
共に、神に創られし命であると信じ、人間社会の中で穏やかな日常を生きているvampireの一族。
自分たちは、決して「異形の者」ではない。
それでも、人間は自分たちを狩りたがる‥
「ねえ、人間は土でできてるのに、
どうして僕たちは砂でできてるっていうの?」
「どうしてだろうね‥
人は死ぬと土に還るけど、
僕達は、その瞬間砂に変わって、風に散って消えてなくなるからかな‥」
「消えちゃうの?」
「そう。 消えちゃうの。
だから人間みたいな、お墓、無いでしょ」
「…人間は神様が創ったんだよね‥‥
じゃあ僕たちは… 誰が創ったの?」
「僕達を誰が創ったか?
それは神様に決まってるよ。
この世界の万物はすべて…
神がお創造りになったのだから 」
レイはハッと目を覚ます。
暗闇の中で、壁に青白く浮かぶ時計が午前2時を指していた。
「夢… 久しぶりにみたな… 」
ベッドから降りて、窓を開ける。
雲の無い夜空に、こちらを凝視するかのように輝いている三日月。
シンと冷たい真夜中の空気が、レイの柔らかな髪を揺らす。
外見こそまったく同じ人間と、自分との間にある種族の境界。
それを知られずに、いつまでこの場所に留まれるだろうか。
明日もまた、今日と同じ1日を暮らせるだろうか?
フフ…
己の心配性加減を笑った。
明日、いやもう今日か。7時には店に行くことを思いだして、レイはベッドへと戻る。
「おやすみ、ルキ…」
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「おはようございまーす」
「まりちゃん、おはよう。今日いつもより早いね」
「ちょっと、昨日、準さんに怒られちゃって。。お店のお花、枯らすな!って。では!店内のと庭木にお水あげてきまーす!」
まるでメイド喫茶のウェイトレスとみまごう白のエプロンワンピに50年位昔にあったアニメ、キャンディキャンディのようなツインテールを揺らしながら走っていったのは、サロン・ド・ルチアに入店して2年目の山下まりあ21歳。
レイがこの店を開いてから何年も常連客として通っていた。そして美容学校を卒業後は、レイの元で修行したいと入店したのだ。
最近ではヘッドスパの指名も入るようになっていた。
「準くんを指導係にしたのは正解だったみたい」
まりあが大きなバケツに水をはっているところを微笑ましくながめていたその時、
開店前の自動ドアを、力づくで開けようとする男が目に入った。
あわててその男へ走り寄る。
「ちょっ、ちょっとすみません!!」
「レイ!! 」