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私努力して異世界から魔法で日本に帰ります!

作者: りあ

プロローグのみです。

 白い、白い場所だ。

 どうなってるのかわからないけれど、気づいたら白い場所にいた。

 変な話だけど、そうとしか説明出来ない。ただ全てが白い場所だ。


 なんだか本当にわからなくて。だってさっきまで私は駅にいたはず。ブラック企業としか言いようがない会社から、久しぶりに終電前に開放されて、やっと家に帰れるところだった。

 と、言っても明日も会社だから、寝たのか寝てないのかわからないくらいで、また出社しないといけないんだけど。


『明日こそ、絶対に辞めよう』


 そう思ってた。

 お母さんの反対を押し切って、大学から東京に出てきて、必死に就職活動をした結果見つけた会社だから、意地でも辞められないって頑張ってた。

 でもこれ以上無理したら死ぬな、って思ったから。

 こんな会社の為に死ぬのだけは絶対に嫌だった。死ぬくらいだったら、お母さんに謝って田舎に帰ろうって思った。思ったのに。




≪すまない。待たせたね≫


 声が聞こえたのはその時だった。

 白いだけの空間に、気付いたら一人の老人がいた。白髪で白を基調とした、まるでローマ人のような格好をしていた。コスプレイヤーにしては年を行き過ぎてる。


≪コスプレイヤーではないよ≫


 奇妙に響く声だった。別に反響するような部屋にいるわけでもない?のに、声が響いてる。


≪何がなんだかわからないという顔をしているね≫


 説明が必要かい、と言われて、とりあえず頷いた。


≪簡単に言えば、君は電車に引かれて死んだんだ≫


 驚き半分と、なんとなく納得している私がいた。駅までの記憶しかなくて、しかも白いだけの空間とか、よくラノベで見た展開だったし。


≪ただそれに問題があった≫


 問題?


≪ああ、その日のその電車だけれどね。その直前までやはり事故で止まっていたんだ≫


 私の利用している電車は、電車事故が多い線で有名だった。あまりによく止まり、周りの電車にまで余波が及ぶので、その他の線を使っているユーザーからも嫌われているくらいの線だったから、別に一日に二回止まったと聞いても不思議はない。


≪どうやら史上初の一日四回目の事故だったらしくてね。人の負の思いが溜まりすぎていた。そこに君が過労が行き過ぎて、混んでいるホームから落ちてしまい、せっかく走り出した電車をまた止めてしまったんだ≫


 それは……まずそうですね。


≪そうなんだ。君は全く悪くない。もちろん電車会社もそうだし、それまでの事故も、その時に人の気持ちが負に行き過ぎてしまったのも、全てちょうど悪い方向へ向かってしまっただけの話だ。悪いとすれば、君をそこまで働かせていた会社にあると言える≫


 そうだ、全部はあのブラックが……。


≪だが、人の負の気持ちが君に向かってしまった。そこで問題が起きてしまったんだ≫


 私が首を傾げると、その神様?なんだろうか。ラノベであれば、これは確実に神様にあっているパターンなんだけれど。


≪まぁ、私は神で間違いない。続けていいだろうか≫


 ほら、人の気持ちを読んでいるし。……まぁいいです。続けてください。


≪人は皆転生する事になる。それが君が死ぬ時に余りに負の思いが溜まりすぎてしまった為、君の次の人生が酷いものになると決まってしまったんだ。人はその行いで次に生きる道が定まるからね≫


 死んだだけでも不幸なんですが…。


≪そうだ。君はまだ疲れのせいでぼんやりしてそこまで考えられてないようだが、神の間であまりにも君が不憫なのではないかという話になった。別にいつも誰でもこんな事をしているわけではないが、犯罪を犯したわけでもない人がここまで恨まれて死ぬという事はめったにない事なんだよ≫


 そこでだ、と神は言う。


≪異世界に転生してみないだろうか≫


 それより生き返らせて貰えませんかと、言ってみた。今更ながら感情が込み上げてくる。私はお母さんに会いたかったって事を思い出したから。


≪それは無理だ≫


 なんでですか!


≪君の体は元に戻せないくらいになってしまっていたし、それにもう葬式も終わっている。君が不当に労働させられていた事が問題になり大きな騒ぎだ。ここまで来るともう元に戻す事は出来ない。正直、異世界に転生させるのでも神の権限を使いすぎていると問題扱いする者もいる。堪えてくれ≫


 体から全ての何かが消えてしまったようだった。


≪だめだ。このまま消えては転生すら出来なくて、本当に世の中から消えてしまうぞ!≫


 だからって何があるっていうんですか。私は一人で育ててくれた母に恩返しも出来なかったし、恋人も夫も、もちろん子供もいない。何にもないんです。


≪君を連れて行こうと思っている世界には魔法がある≫


 だからなんだっていうんです?


≪魔法を極めれば、元の世界に飛ぶ事が出来るかもしれないぞ≫


 え?


≪君を優遇しすぎる事は出来ないから、その魔法を使えるようにするようにして転生させる事は出来ないが≫


 だったら、努力すればするだけ伸びる才能を貰えませんか?


≪なるほど、それくらいなら問題ないだろう≫


 だったら私行きます。その世界で努力して、魔法を使えるようになって、いつか母に会いに行きます!


≪よし。少しだけ神からの贈り物をつけて、私の世界に転生させよう。君はとても真面目だ。人以上の努力をして希望を掴み、私の世界でいい人生を送れる事を信じているよ≫


 はい。頑張ります。



 私はその時まだ疲労でよくわかってはいなかったのだろう。もちろん神に騙されたとは思わない。ただ新しい世界の道のりは楽なものではない、それをその時わかってなかった。


 ただ希望だけを持って私は転生したのだ。


 私は努力で日本に帰ります!


 その気持ちだけで。

最近電車事故が多いので、ふと思いついて書いてみました。

ただ言いたかったのは、別に誰も悪くないって事なんです。

それだけなんです。

もし続きが書けそうになったら書くかもしれません。

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