婚約の掟を作りましょう
...と、こんな感じで婚約してから一週間。
たまに河合さんが話しかけてくることを除けば、割と穏やかに、俺の毎日は進んでいる。
どうやら、俺と河合さんの結婚はうちの会社と、河合さんの会社がうまく提携するのに必要なことらしい。
今の所俺もじきに働く会社。貢献したい気持ちは、ある。
だから、まぁいっかと思い始めつつある今日この頃。考えようによっちゃ、美少女と恋愛というミッションをクリアせずに結婚できるわけだし。
ラッキーかも...
って、
「そーじゃないだろ、俺!」
思わず割と大きめの独り言を言ってしまい、隣のメガネちゃんを驚かせてしまったのはまぁ置いといて、とにかくラッキーなどではない。
結婚とは、一生続く共同生活。相手によっちゃあ天国にも地獄にも変わるもの。俺は、河合さんと会話はおろかまともに目だって何度かしか合わせたことがない。
そんな相手と、結婚?
いや、普通におかしいだろ。
てか今時許嫁って、純粋でいたいけな17歳の少年には荷が重すぎますお父様。
そんなことをグルグル考えていると、単語帳をめくる手は自然と止まり、ぼうっと窓を眺めるしか心を落ち着けられなくなる。
このようなループを、一週間割と何度も繰り返した。近々模試もあるというのに、こんなんじゃまずい。
「高杉くん、大丈夫?」
俺が一人、頭を抱えたり唸ったりしていると、また声をかけられた。
今度は誰だと顔を上げると、そこにいたのは俺の天使。高麗 凛(17歳男)。
癖っ毛で栗色の髪に、ぱっちりした目。小柄で出す声まで小さく可愛らしい。今にも天使の輪っかが見えそう。思わずニヤケるのを必死に抑えるのに、今日も大変だ。
「大丈夫だ問題ない。うるさくしてごめんな?」
そう言った俺に、「んーん」と笑み向ける、こまりん。かわいい。苗字と名前を繋げると"こまりん"になるところ含め本当に可愛すぎる。
あ、そうだ。
「こまりん、俺と結婚しないか。」
こまりんと結婚すれば、丸く収まるんじゃないか?俺たちならきっと、うまくやれるはずだ、うん。数少ない友人を妻にしてしまうのは少し残念だが。
「ふぇ?僕はれっきとした男の子だよ。」
そう言ってぷくっと口を膨らませるこまりん。
やばい、かわいい。やっぱり俺は、こまりんを嫁にしようと思う。