婚約って何ですか?4
こん、やく、しゃ...?
親父の放った言葉に頭が追いつかない。
婚約者って、あの婚約者だよな?
コンニャク者の聞き違いとか...?いやコンニャク者ってなんだよ。
などとくだらない思考に陥るほどには焦る俺に反して、俺以外のみんなは冷静だった。
「なんだ、優進。そんなに驚いて。」
ハッハハーと呑気に笑う親父や兄貴。河合さんの家族は、変わらずみんな優雅な笑みを浮かべている。
え、この状況についていけてないのってもしかして俺だけ...?
「お父様、えっとすみません。僕と河合麗華さんがなんておっしゃいました?」
そうだ。婚約者だがなんだか聞こえた気がしたが、聞き違いに違いない。
だっておかしい。
同じ学校とはいえ、なんの接点もない未成年の俺たちが結婚だなんて。
いくらなんでもそんなのって_____
「だからー、高校を卒業するタイミングでお前たちには結婚してもらう。ってことだ。」
開いた口が塞がらない、とはまさにこのこと。
今の俺はたいそう間抜けな顔だろうが、親父の放った衝撃的な発表に、口を開かずにはいられないのだから仕方ない。
いや、だって、普通におかしいだろ。
ボケーっとする俺のことは全く気にしない様子で、式はどのタイミングであげるかーとか、同棲はするのかーとか話を進める両家族。
いやいやいや。
婚約の当人である俺、ってか俺たちの意思は?
さっきからニコニコ微笑みを耐えさない河合さんは、了承済みなのだろうか?
色々な疑問が渦巻くが、あまりの勢いと、事の重大さに口を挟む余地もない。
ってか、河合さん、君はそれで良いのか!?
小説や漫画に出てくるみたいなクラス1のイケメンとか、ヒーローキャラならまだしも、俺だぞ?休み時間は読書と勉強に費やし、友人は数人。自慢じゃないが彼女ができたことは奇跡で一度だけ。
悲しいぐらい自虐が浮かんだところで、彼女が俺の方を見る。
何だかよくわからんが、
た す け て。
目で訴えかけたのが通じたのか通じていないのか。彼女はニコリと不敵な笑みを浮かべ、
「末永く、よろしくお願いします」
と、頭を下げるのであった。