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春―2―


「むかしむかし、今から六千年前のことでありました。女神ルノンが創り出した魔族というものが人間を滅ぼしました――」


 ルノンが創り出した魔族は角が生えていて、人間よりほんの少しだけ強い存在でした。

 人間を作り出したのはノアとルノンどちらかだけで創り出した存在ではありませんでした。二人で一緒に相談しながら、自分たちの世界に一番割合を占める存在を創り出したのです。

 それから、獣人をノアが、妖精をルノンが創り出したのです。

 

 しかし、七千年前にルノンが魔族という存在を創り出してしまいました。


 ノアとルノンは約束をしていました。その約束がないと、自分たちの世界がおかしな存在ばかりの世界になって、世界が壊れていってしまいます。

 壊れた世界は、世界の存在自体がだんだんと薄れていき、いずれはその世界を創り出した神様自体も消えてしまうのです。

 だから、ノアとルノンで『新たに創り出すときは相手に相談してから。片方だけが創り出すのではなく、それぞれ一種ずつ創り出す』という約束をしました。

 しばらくの間世界は平和で、新たな種を創り出す必要がなかったのでノアからもルノンからも、創り出したいという提案は出ませんでした。


 なんにも起きなかったからなのでしょうか、ルノンが魔族を相談もなく勝手に創り出して、世界に放ってしまったのは。

 ノアが気づいたときにはもう、魔族は世界に存在を固定していて、神の一存だけでは消すことができなかったのです。


 もちろんノアはルノンに文句を言いました。それを聞いたルノンは、一笑してノアに言い放ちました。


 ――いいじゃない、そろそろ人間に飽きていたの。そんなに文句があるのなら、ノアも創り出せばいいでしょう?――


 ぽんぽんと簡単に創り出していいものではありません。それこそ、世界の均衡が崩れて壊れてしまいます。


 一ついいことがありました。

 魔族が人間が滅びてしまったことで、温厚な、さして人間と変わらない種族に変化したのです。

 消すことができないなら、変化さればいいのです。魔族が人間と同等になるまで少しずつ、長い時間をかけてノアは手を加えて行きました。

 ルノンが人間界に行きたいと言い出したのは、その作業が終わった頃でした。

 長い時間をかけて変化させたものですから、手を加えたノア以外憶えてなどいなかったのです。その上ルノンは、気の向いたときしか人間界を見ません。魔族を創り出してそのまんま、放置して、一度も人間界の様子を見なかったのです。


 いざ、再び人間に興味を持ったルノンが人間界に行くと、雷に直撃を受けて落下して、記憶喪失になってしまいました。

 そこでノアは思いつきます。

 ルノンを懲らしめる方法を。

 ルノンは曲がりなりにも神様で、魔族には信仰されていてルノンがいないとノアだけでは世界が成り立ちません。それにノアも根に持ち続けているわけでもありません。

 ただ、自分の行った行動を後悔、反省してくれればいいのです。

 早速ノアは準備に取り掛かったのです。








「お姉ちゃん、本当に行っちゃうの?」


 ナーシャが目に涙を浮かべてルノンをみています。

 春になったからルノンはここを出ていくのです。おばあちゃんかいていいと言っていたのは、冬の間だけですから。

 無理を言っておいてもらうことは不可能ではないでしょう。ナーシャとこんなに仲良くなり、仕事もよくできるのですから。

 しかし、それはできません。

 ルノンは自分が何なのか思い出さなければいけないのです。思い出さなければいけないという焦り、自分を思い出さないといけないとどうにかなってしまうのではないなという不安がルノンの中にはあります。

 それを誤魔化して、ずっとナーシャたちと一緒にいるわけには行きませんから。


「えぇ、ごめんなさいね……ナーシャ。さよなら。おばあちゃんも今までありがとうございました」


 ルノンも涙ぐみながらお礼の言葉を言いました。


 そして、ルノンは自分を知るための旅に出たのです。

 


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