冬―2―
またまたお久しぶりです
「お姉ちゃんは、きれいだよねぇ……」
「そうかな……?」
ナーシャに本を読んであげていたルノンはそんなことを突然言われて嬉しそうにはにかみました。
◇
ナーシャの家に住まわせてもらうこととなったルノンは、おばあちゃんに何をしたらいいかと聞きました。何にもしないで住まわせてもらうことはできません。
おばあちゃんは少し考えてから答えてくれました。
「ナーシャの話し相手になってくれないかしらね。同年代の子がいなくて、あの子さみしそうだから」
そんな訳でルノンはナーシャのお話し相手という仕事を与えられたわけですが、どうやったらいいのかわかりません。
ただ、お話相手というのだからまずはナーシャに話しかければいいのです。そう考えて、ルノンはナーシャに話しかけました。
「ナーシャ、何かお話しよう」
「うん!しよう!」
ルノンに話しかけてもらえたことが嬉しかったようで、ナーシャは勢い良くルノンに抱きつきました。ナーシャがルノンの胸に顔を埋めているとき、ルノンはナーシャの頭に存在する小さな角を見つけました。
黒く艶がある小さな角です。
「ねぇ、頭にある角って何なのかしら」
そんなことを聞いたルノンにナーシャはキョトンとしています。角のことを聞かれたことなんてありません。そもそも、角があるのは普通のことだとおばあちゃんから聞いていますから。
「ん、この角?私たちにはみんなあるものだよ」
「そうなの?私にはあるのかしら……」
ルノンは自分の頭を触って、自分の角がどこにあるのかを探しましたが角のような感触は何度触ってもありません。
ルノンは神様だからあるはずもないのですが、神様ということを忘れているルノンにはそんなこと知るよしもありません。
「ないの?」
「ないみたいね……」
「じゃあ、お姉ちゃんは妖精さんなのかもね!」
人間が滅んでしまった今、どの種族かを見分けるのはとても簡単になっています。魔族なら必ず角が、亜人なら翼が生えていたり、耳が獣のものだったりと言う特徴が、妖精は滅多に姿を現さず、姿を現すときは瞳が真っ赤で白目の部分がないのです。
このような細かい特徴は神様が見分けるときに使っていたもので、一般的には魔族は角が生えていて、亜人は角が生えていない、妖精は角が生えていなくて赤い瞳をしていると言われています。もちろん人間は滅びたと知られています。
「そうなのかなぁ?」
ルノンとナーシャの間で、ルノンは妖精ということで決まりました。
妖精の特徴とルノンの容姿が似たようなことになっているのは、ルノンが直々に妖精を生み出したからなのであながち間違ってはいません。
「うん、わからないならそれでいいじゃない!」
「そうね、それまではそうしとこうか」
◇
「ルノンはお気楽だなぁ……。もう少し混乱して暴走して周りに被害でも、ねぇ……」
地上よりかなり高いところにある扉の中でノアはモニターに映るルノンを見ながら不満げに言い放ちました。
「いつなんどきでもお気楽はいいことだねぇ、ルノンが記憶がないってことを忘れそうになる」
どこから取り出したのか林檎を片手で握りつぶしながらモニターに映るルノンの顔を殴りつけました。モニターには一つもヒビは入りませんでしたが、その一発はかなりの威力でした。
「春になったらルノンにプレゼントをあげないと……」
ノアは悪い子ではありません。