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冬―1―

お久しぶりです。



「お姉ちゃん、お姉ちゃん!大丈夫?」



 ルノンは激しく揺さぶられ、意識を取り戻しました。

 しばらくの間は視界がぼんやりしていて何がどうなっているのかがよくわかりません。

 体中が痛いと脳に信号を出していて、ここが何処かを聞ここうとしても痛みが邪魔をして言葉をルノンは紡ぎ出すことができません。

 しばらくして、頭の痛みは残っているものの、体の痛みは消えたため、痛みをこらえながらゆっくりと女の子の手を借りながら起き上がって周りを見渡すと、全く見覚えのない景色が広がっていました。

 見渡す限り銀世界で、周りには何もありません。


「……う……。え……?」




      ◇ ◇ ◇ ◇





「あんた、大丈夫かい?いきなり空から落ちてきたけれど……」


 おばあちゃんは木の器に入れた温かい飲み物を差し出しました。

 女の子とおばあちゃんは、今は雪が積もってしまい、見えませんが、このあたりに家を建てて住んでいました。


「え、えぇ……大丈夫よ」


 ルノンは温かい飲み物を受け取って、少しずつ少しずつ飲んでいきました。



 体が程よく温まった頃、女の子がルノンにある質問をしました。


「お姉ちゃん、お名前なんていうの?私はね、ナーシャっていうの」


「ナーシャっていうのね、ありがとう……」


 元気いっぱいのナーシャに心も体も暖かくなったルノンは自分の名前を言おうとして、気づきました。



「私は……誰?」




 自分の名前がわからないのです。

 それに、自分の名前がわからないだけでなくその他に自分がどこから来たのか、なんでここにいるのか、ということなどが覚えていないのです。


「私は、私は?なんで……わからないの?」


「お姉ちゃん……?」


 自分のことがわからないと言うことによって不安そうな顔をするルノンをナーシャは心配そうに見ている。



 おばあちゃんはどうしたものかと、それからこの少女をどうしようかと考えます。

 この寒空の中においていってしまうのは気が引けるし、少女はルノン様に似ています。ですが、おばあちゃんには女の子以外を養うことができません。

 とにかく冬の間だけでも家においてやれないか、春になったら、少女だって街に行けば仕事を得られて一人でもなんとか暮らしていけるはずです。

 今はそれよりも少女の記憶についてです。

「名前がわからないのかい……?」


「そう……みたい。私の名前も何もかも……わからないの」


「……」


「おばあちゃん!お姉ちゃんを私達の家に連れて行こう?私達がお姉ちゃんのお名前を思い出すお手伝いをするの!」



 ナーシャは幼いながらも一生懸命に考えておばあちゃんに提案をしました。


「ナ、ナーシャちゃん……!そんな、これ以上お世話になるのは迷惑よ……」


 ルノンがナーシャの案をこれ以上迷惑をかけられまいとして考えをやんわりと引っ込めさせようとしました。


「で、でもさ!お姉ちゃん帰るところもわからないんでしょ?死んじゃう!」


「でも……」


「お姉ちゃんが死んじゃうの私嫌!それに、こんな寒いのに放っておくなんてできないよ!」


 ナーシャは離すものかと、ルノンに抱きついてルノンが離れるように言っても離れようとはせず、より強く抱きつくだけでした。

「ね?おばあちゃん、いいでしょ?ね?」


「……わかった。でも、ナーシャが頑張らないとだめだよ。一人増えるだけでお仕事が増えるんだ、いいね?」


「……うん!私がんばる!だから、おねがい!」


 ナーシャの決意は甘くはないようだったため、おばあちゃんは認めることにしました。


「はいはい、わかったから」



「あ、私誰かわからないのに?いいの?」


 ルノンはまだ女の子とおばあちゃんにお世話になるということが受け入れられないようで、何度もおばあちゃんに聞いていました。

 その度におばあちゃんは、「いいんだよ」と優しく答えていました。



 ルノンが家に来るということで、自分がこなさなければならない仕事量は増えたものの、ルノンが家に来ることがとても嬉しいナーシャは満面の笑顔でした。


「ありがとう……ナーシャちゃん、おばあさん」


 ルノンは深く二人に向かってお辞儀を何度もしました。

 








          ♢♢♢♢







「記憶を失ったんだぁ……。面白くなりそう」


 ノアがニタリと唇を歪めてつぶやきました。


「人がいないことでのリアクションは期待できないけど、これはこれで、だね」






また少し間が開くと思います。

二話も読んでくださりありがとうございます。

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