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17ページ目 知らぬは当人ばかりなり、ですよ。

おひさしうでございます…………え? もう7月も1週間?

 フラムさんは明日にお仕事を持ち越したくないと言って、さっさと応接間から去って行きました。

 決して、「皆さんでお元気そうでしたね、昨夜も、フロアの廊下で」と私が言ったからではない、筈。



 お話は私の雇用について戻って来ました。



「……仮に私が食堂部から執務部に転職して、メリットはなんですか? というか、そういう仕事って経理部とかではないんですか?」


 尋ねながら、私はポケットからメモ帳を取り出します。


 このメモ帳は、文字が書けるなら必要だろうと、カガリさんが下さったものです。日本の雑貨みたいに罫線含むデザインなどはなく、コピー用紙には遠く及ばずとも、さらさらとした表面の紙でできています。製本の仕方はリングやホッチキスではないことしかわかりませんが、表紙もちゃんとあるんですよ。

 愛用のシャーペンを構えて。取り敢えず、真ん中に縦線を弾いて。ページを2つに分けて、それぞれに質問と回答の項目を書いてっと。


 左側に『(1)メリット』と書く私の手元を覗き込んでくるシバさんは、とても興味深そうにしています。

 これ全部が数字なのかと訊かれたので、『1』だけだとペン先で示したら、どれも同じに見えるのだとか。確かに、カタカナは記号っぽいですね。


 そもそも文字自体が記号(キャラクター)ですけど。


「経理、人事、渉外、総務……実動部以外をまとめて全部、執務部で行っているんだ。経理部どころか経理係もなく、私たちが他の業務の傍らで予算を管理していると言った方が正しい」


 話を利く限り、どうやらシバさんたちは新しく経理係を作って、そこにちゃんと予算を専門的に管理する人間が欲しいようです。

 今まで他の業務の合間にやっていたことを明確にするということで、今はまだ何もかもが計画中。人選についてあーだこーだ言っていたら、ちょうどいいところに私がやってきた――――と。


 ……予算管理を片手間でやっていたとか、破綻してないのが不思議なんですけど……?

 え? 王宮も似たような感じ? ……この国の経済、どうやって成り立っているんですか?


 あ、シバさんが目を逸らした。カガリさんも遠い目をしないで下さい。


「メリットってなら、執務部全体的に給料いいぞー。新入りでも年少の倍近くは出る」

「は?」


 年少騎士のお給料が確か、私が頂いたお小遣いより白1つか青5つ少ないってセレンさんが言っていましたね。その倍近く……下手に遊び呆けなければ半年近く、不自由なく暮らせるんじゃないですか?

 道理で、カガリさんが得体の知れないフゥリに50万円も投げて寄越すわけです。


「カガリさん、めっちゃ高給取りなんですね……」

「執務部は技術職だからな」


 なるほど。この世界、識字率が低いんで文字を書く仕事は技術職になるんですね。では右側に『給料がいい(白8くらい)』と書いて……あれ?


「なのにカガリさんは、首が回らなくなる月が2、3ヶ月に1度もあるんですか? なんで?」


 得意気にしていたカガリさんの顔があからさまに固まりました。あれ?

 ぶはっと吹き出す声の方を見ると、シバさんが丸めた肩を震わせていました。喉を鳴らすシバさんの無防備な背中を、カガリさんがバシーンって。痛そう。


 ぽろっと出て来てしまったのは、素直に湧き出た疑問です。取り返す気なんてありませんよ、私。


「なんでですか? カガリさん。借金事情も素直に吐いて頂けると、あなたの被保護者はちょっとは安心できるかもしれません」

「待て、借金はないぞ」

「まだないだけじゃないですか?」

「まだとか言うな」

「気付いてないだけかもしれませんよ?」

「んな訳あるかっ!」


 ムキになっているのが何だか怪しいですが。セレンさんもカガリさんには借金はないと仰ってましたし、今日のところは信じることにしましょう。

 この世界に消費者金融があるかは知りませんが……カガリさんがクレジットカードを持ってリボ払いに設定していたらと思うと、肝が冷えるどころではありませんね。


 いくら口座に供給されても、手数料や利子が膨らんでは意味がありません。下手すればマイナスです。


 シバさんの笑い声が虫の息です。大丈夫ですか。


「……他に私にとって有益そうなことはありますか?」

フゥリ(・・・)君は騎士団全体で見ても最年少だから、多少のミスでも甘やかして貰えるね」


 朗らかに言われても、設定上のこともあってあまり嬉しくない台詞です。眉間にシワが寄っちゃいそうですよ。


「あとは……保護者がすぐ近くにいること、かな?」

「へー。じゃあデメリットは?」

「おいこら、しれっと流しやがったな?」


 カガリさんは茶化すように言いましたが、保護者の必要性は誰よりも私自身がよくわかっています。


 この世界では成人であっても、子どもよりも常識がなく。常識がないために、自分を守る術のない。

 そんな私は、カガリさんの庇護なくしては生きていけません。


 当たり前が当たり前にできない私は、自分の生活を保障できないのです。


 最もなのは、やはり魔法の有無です。魔法のない世界から来た私にとって、魔法があることは魅力的に感じます。ですが、最近になって漸く、炎を出す調理用マジックプレートの存在に驚かなくなりました。

 だって想像してみて下さい。IHだと思った板から、ガス火が噴き出す様を。知っていても受け入れ切れていなければ、それは脅威です。


 それに慣れ親しんだ科学がないのは、やはり不便に感じられます。

 食もありますが、気になるのは特に通信。インターネット回線は勿論のこと、電話線すらないのです。ひとりの時に困ってしまっては、誰に助けを求めればよいのか。


「やっぱり、人員不足で忙しいことだね。死なれては困るから就業時刻は基本的に守らせているし、残業しても振り替えで休日出すようにしているけれども、年度の末と始めとか悲惨だよ……って、聴いている?」


 考え込んでしまったのはほんの一瞬のつもりでも、シバさんには上の空に見えたようです。

 耳を通り過ぎた音を確認し、私はこくこくと頷きます。


「ホワイト企業でも期末は忙しいんですね……」

「それに執務部は騎士団の管理全般を担っているから、どこかの部署で問題が起ればてんてこ舞いになりやすいのも、デメリットだよね」 


 本当、どうして経営破綻していないんでしょうか。


 まあ、騎士団が壊れてしまって困るのは、私も同じです。右手を顎に添え、左手はそんな右肘を支え、私は考えるポーズ。


「……ちなみに転属したら、カガリさん夜静かになりますか?」

「おーい……」

「これ結構切実な問題なんですよ?」

 

 カガリさんやフラムさんたちが騒ぎ声は、当人たちが知らないだけで方々に障りがあります。


「フラムさんのお宅も、その向こうも、そのまた向こうも、そのまたまた向こうもっ!」


 私は1歩踏み込んで、未だに何が悪いのかをわかっていないらしいカガリさんに詰め寄りました。


「カガリさんたちが酔っぱらって帰って来る度に、理不尽に起こされているんです! 特にお子さんのいるご家庭。渡り廊下向こうの清掃のお姉さんの2歳ちゃんはやっと眠ったのにぐずり出して、それが毎晩で隈ができて、折角の美人さんが台無しになっていますっ!」


 毎朝顔を合わせる時の怠そうというよりも憔悴している表情に、何度唇を噛んだことでしょう。旦那さんが犯人のひとりなのが、更に性質が悪い。 


「な! に! よ! りっ! 私の安眠が妨害されます! 毎晩毎晩うるさいんですよ!」


 噛み付かんばかりに訴えかければ、愕然とした表情のカガリさん。ああ、漸く周りの迷惑にも気付いてくれて。


「あの餓鬼、もう2歳になったのか……!」

「問題はそこじゃないです……っ!」


 侭ならなさに振り上げた手は、あっさり受け止められてしまいました。うがーっ!



 ……………………ん?



 カガリさんの肩向こうで覗く薄い色。背伸びした私は、ひっと息を呑みました。

 まだ気付いていないらしいカガリさんは、そんな私に訝しげ。


「どうした、餓鬼」

「――――私も常々、建物のどの壁にも防音魔法がかけられているはずなのに、妙に声が聞こえるとは思っていたんだ。内容までは聞き取れないから、まあ同じフロアの誰かだろうと思っていたが、まさか、騒いでいたのが階下のお前の部屋だったとは……」


 冷え冷えを通り越して冴え冴えとした声と眼差しのシバさんは、色素の薄さと相まって正しく氷のひとのよう。背はカガリさんの方が高いんですけどね、その冷や汗、幻ではなさそうですね。


 にしても……防音魔法なんてもの、かけられていたんですか。音結構ダダ漏れだったんですけど、それは同じフロアだからですか。


 不信は一瞬ですが、怒りは信頼と同じくポイント制です。ひとに依りますけど、どうやら今日が爆発との交換時期の様です。





6月が何時の間にかいなくなっていて,とても驚きな白猫でございますよ.

日々新社会人としてひよこらしくお勉強しておりますが,

カカオ72%チョコと氷砂糖をお供にPCと格闘なので時間感覚が曖昧ですよ.


今回は家計簿関連で,健康が絡む食費のお話をちらっとしますよ.

愚痴混ざって長いのでどーでもいいひとだけどうぞー


白猫は先日,会社の健康診断があって初めて採血をしたら,

ヘモグロビンの量がちょっと少ないだけで総合結果にG(最低評価)を頂きました.

血液検査以外は全部A評価だったのに!


ヘモグロビンは鉄の一種で,酸素を結合させて身体中に運搬働きをします.

少なくなると貧血の症状が出始めます.

水分補給を怠ると,症状は余計に酷くなります.

だから業務中に馬鹿みたいに眠たくなったり,気絶していたりするのかと納得できましたが……


私一応毎日三食以上食べているのですけど?

朝食を抜くとか考えられないお腹なのですが?


でも家計簿をよく見ると,衛生欄のお薬系は引越し前から変化がなくとも,

食費の項目でタンパク質や鉄分を多く含む食材がとても少ない少ない.

お肉が苦手なんですよね……鶏はまだいけるのですが,牛と豚を胃腸が受け付けてくれない.

親という見張りがいなくなり,食べるのをさぼっていたツケを支払う羽目になっています.


ここ数日はビタミン剤を服用しているためか体調がよくなり,

朝の目覚めもマシに,遂に就業中に意識が飛ぶことがなくなりました.


とまあ,家計簿の食費欄に力を入れますと,食生活の偏りも読み解けるようになります.

因みに私の家計簿でよく出てくる食品はお菓子類と牛乳と牛乳を飲むためのアイスコーヒーです.


思いの外,長くなってしまいましたが,

皆様もお財布とお身体共にお気を付け下さいませ(=ΦωΦ=)



……………………はっ,この内容で1話打てたのでは!?

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