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event9 2/2 節分・前編

 節分という行事について、彼の最も古い記憶は4歳の頃のものである。通っている幼稚園でももちろん『豆撒き会』なる行事はあったのだが、3歳の彼は運悪くその時期に熱を出してしまっており、参加出来なかったのだ。

 知識としては知っている。

 家にいる鬼を追い出すために豆を撒くのだ。鬼が豆に弱いなんてにわかには信じられなかったが、テレビコマーシャルの中の鬼達は豆に怯えて走り去っていく。いや、しかし、もしかしたらあの豆は特別なもので、あれじゃなければ効かないのかもしれない。それこそ、それを確かめられるのが幼稚園の豆撒き会だったのだろうが、病欠してしまったことでそれを確認することは叶わなかったのである。


 しかし彼はそれについて特に残念だと思うことはなかった。

 なぜって、鬼である。

 絵本や紙芝居、それからテレビアニメなんかで見る『鬼』という生き物は、わずかな例外を除いて遍く悪だ。

 自分達よりも身体は大きく、その上好戦的である。


 出来ることなら生涯に一度もお目にかかりたくない相手であるわけだから、何も好き好んで対峙しなくても良いではないか――。

 

 4歳の彼は、またしても熱に浮かされながら、そのようなことを思った。長期休みが明け、数日登園すると熱を出すという厄介な癖が当時の彼にはあったのである。


 しかし、それを不憫に思ったのは父母、それから2歳上の姉であった。

「章ちゃんが可哀想だから、お熱が下がったら豆撒きしようよ!」

 夕飯の席で姉の紀華がそう提案した時、その食卓にいたのは父母を含めた3人のみで章灯は別室の布団の中だった。弟思いな姉の発言に反対するものなどいるわけもなく、彼の預かり知らぬところで山海やまみ家の節分延期が決定したのである。



リアルタイム(?)投稿なので、続きは彼の熱が下がった2/4に更新いたします。

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