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「ロルファ、君の…ディアレーン家のためにも、私と縁を切った方がいい。私と離婚しないか…?」


午後、アルズファート家の庭を散歩中、テトーリオが唐突にそう切り出してきた。

勿論、ロルファはいつか離婚を切り出されるだろうと思っていたが、まさか今日とは…!

今朝の頭ナデナデや微笑みは、なんだったの!?

俯き、肩を震わせる。感情的にならないよう、きつく唇を噛み締める。


「…離婚の必要は、ございません」


「だが…」


「ございません!!」


初めて声を荒らげたロルファにテトーリオは驚いた。

よい噂のない夫のせいで家名に傷がつくかもしれないのに…?


「…わたしは、結婚前に、あなたのことを調べました」


テトーリオ・アルズファート。物腰柔らかな性格、素直で裏表がなく、誰からも好意を抱かれやすい。

その一方、恋愛はかなり奥手で鈍感。加えて理想は乙女のよう。女性関係においては、八方美人な面があるため勘違いした女から言い寄られ、素で「恋人はいない」と言うことが多々あり、その結果、よからぬ噂が蔓延る…………それに本人は気づかない…

この人は馬鹿だ、と思った。

わたしへの夜会での気遣いも、きっと当たり前のことだったに違いない。

でも、それでも…!

──────一目惚れ、だった


「テトーリオは、覚えていないかも知れませんが、夜会で声をかけて下さったでしょう…? あのとき、わたしはあなたを好きになったんです。離婚なんて、したくないです!テトーリオ…………」


テトーリオは今にも泣きそうなロルファを抱き寄せた。

夜会のことは正直、覚えていない。

それでも離婚したくないと言ってくれるロルファに嬉しさと愛しさが込み上げた。

しかし、ロルファの言った噂の中に、テトーリオが心配することはない。

そうではない…!そうでは…


「ホントに離婚しなくていいのか…?」


「ホントにです!」


「ホントにホントに…?」


「ホントにホントにです!!」


「ホントにホントにホントに…?」


まだ言うかッ!!?

な、なら既成事実のことでも!あ、でも一度で授かるとは限らないし…………

でも一度し、してる、し…

ロルファはやけくそになり、もうこの際「寝たのですから責任取るのはあたりまえです」と言おうとした。


「あ…ね、寝たのっ」


「あなたは馬鹿ですか」


ロルファの言葉に重ねて執事のユーシスがつかつかと歩みより、テトーリオを睨めつけた。


「まさかと思い来てみれば…………バカタレが…」


「ユーシス…?」


「僕とテティの仲が良すぎるあまりデキているのでは、とあらぬ疑いを持った輩の戯れ言を気にしているのですよ、こいつは」


「そんなことで…………」


「ロルファ!そんなことではない…!母上にでさえ真偽を問われたんだ!恥ずかしいだろう…………ッ!!」


テトーリオは顔を覆ってワッと騒ぎだした。

他人にとってはそんなこと、でも本人にとっては一大事ということだ。


「可愛い…………」


ポツリ。ロルファが呟くとユーシスがどうしようもないですよ、あれはと言う。

それでも


「それさえも、愛しく思えます」







二週間後。

ロルファとテトーリオの間で変わったこと。

愛称で呼び合うこと。

できるだけ、悩み事は晒すこと。

それから────


「テティ!!」


「っぐ…!」


寝ぼけ眼をこすり、おはようのキスをしようと近づくとロルファに先手を取られた。

テトーリオに股がり頬を固定され、ちゅ、と。

それでも足りないようで、たどたどしく舌を差し込んでくる。


「っふ…」


あの一件以来、ロルファは驚くほど積極的になった。

嫌ではないが、朝からこれだと夜まで持ちそうにない。

それどころか、今すぐ押し倒したゲフンゲフン


「は…………ロルファ…」


「ねぼうしている方が悪いんです」



二人の結婚生活は始まったばかり。

このまま仲睦まじくいけばいい……とユーシスは寝室近くの廊下から、二人の会話を聞いていた。




本編は一応これで完結となります。

番外編は活動報告にある通りです。

一読下さった方、評価して下さった方、ありがとうございました

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