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クリスマス・バトル! ④

 結局、プレゼントはジーンズになっちゃった。

 だって、自分で買っちゃうんだもん、抱き枕…。あーあ、未だに約束も取り付けられないし、だんだん暗雲が立ちこめてきた気がするわ。

 …いけない、弱気になっちゃうまくいく物もいかなくなる。ジーンズだって直ちゃんは喜んでくれるに決まってる、はず。

 だって、膝が抜けてきたって呟いてたから。


「…真面目にやらないなら帰る…」


 今は恐ろしいこと呟いてらっしゃいますけどね…。


「必死にやりますっ!でもその前に大事な質問、いいですか?!」


 進まない問題集を押しやって、テーブル挟んだ先にある気の抜けた顔にずいっと近づくと、手に汗握って聞いてみる。


「ずばり、直ちゃんのクリスマスの過ごし方を教えて下さい」


 また…ぼーっとしてるよ。あれきっと「クリスマスって何の日だっけ」とか、どうでもいいこと考えちゃってるんだよ。そんで次に「キリストの誕生日だ」ときて、「俺、仏教徒なんだよね」なんて脈略のない思考回路を辿ってるの。絶対そう。


「教会にも行かないし、お祈りもしないよ」


 ほら、ね?恋愛のイベントとしてじゃない、本来の過ごしたかについて真剣に答えるんだもんなぁ。

 笑いを取ろうとか、しらばっくれてみようじゃないの。だって、不審気に聞いてくる目は少しも笑ってない。


「そうでなくて、街中とか恋人同士とか、キラキラいちゃいちゃして笑っちゃうくらいハッピーでしょ?直ちゃんも誰かと甘ーい時間を過ごしちゃったりするのかなって質問なの」


 きっちり説明すれば、天然直ちゃんにもわかったようで、ああっとさもどうでもいい顔して頷くの。


「その日に予定はない、寝てるから」


 ぴっかーんってあたしの瞳が、輝いちゃった!

 コレは希望もっていいと思わない?押しに弱いと言うより抵抗する気のない相手だもの、丸め込んで引っ張り出すくらいは可能よ、か・の・う!


「じゃあ、じゃあ!海行こうよ、海!!」

「クリスマスに?いや」


 ………。

 速攻否定の言葉を吐いたのは、ダレ?


「なんでですかぁ?」


 半べそで取りすがっても、無表情が変わることはない。僅かな逡巡も見せずしれっと言うんだ。


「寒いから。車も錆びるし」


 塩っ気たっぷりの寒風に、ロマンティックが負けました…。

 でもまだ手はあるわ。寒くなくて、車が錆びなきゃいいのね、それじゃ、


「それじゃ、遊園地は?クリスマスイルミネーションが…」

「人混み嫌い」


 焦る余り忘却の彼方しちゃってたけど、そういえば直ちゃんは行列とか、順番待ちが大っ嫌いでしたっけ。当然人が溢れてるところなんてもってのほか。

 昨日買い物に付き合ってもらったから、少しは馴れたのかなと思ったのに眉間に皺がうっすら見えるのは本気で嫌がってる証拠。


「ならどこでもいい。直ちゃんの好きなとこでいいから、連れてって」


 はたっと、静かになった後でどうにも苦悩顔した彼のセリフにがくりと肩を落とすはめになる。

 だって、


「他人の夢の中には、入れないんじゃない?」


 …寝るの、寝ちゃうのね…それはもう決定事項なのね…。

 頓挫も挫折もあったもんじゃない。スタートから間違ったんだわ。

 イベントも記念日もどうだっていい、直ちゃんの視界にせめて気にかかる女の子として入ってみたかったけど、まだ早かったらしい。

 どれくらい不毛なチャレンジを続けたら対象物になれるのか、想像もつかない長い道のりなんだけどね…ふふ、ふふふ……。


「未散?泣くほど俺の夢、見たいの?」


 違うって、己が情けなくって悔し涙が浮かぶだけ。

 全く心のこもらない無表情に、八つ当たりの一睨みを送っても、好きなんだってば。執念深く来年にかけちゃうくらい、直ちゃんが欲しくてしょうがないの。


「夢は一人で見るからいい。来年は覚悟しといてよねっ!」


 理解できてないのを知りながら、ビシッと指ささずにおれないあたしなのでした…。

 今年は完敗です…。



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