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クリスマス・バトル! ①

 頭半分おっきな体も、ほとんど表情のない整った顔も、間延びした喋りもみんな好き。例え服装に無頓着だろうと、世のあらゆるコトに関心か薄かろうと、話すのさえ面倒くさいと言われようと、欠点を補って余りある愛がそこにはあるのよ!


 ………たぶん。


 外見に惹かれて集まってくるお姉さん達より付き合いも長いし、お隣さんという他を引き離すポジションにもいる、松尾未散18サイ、告白連敗記録更新中。

 諦めません、オッケー貰うまでは!



「ね、ね、この色見て想像するのはなーんだ?!」


 髪に編み込んだ緑と赤のクリスマスカラー。

 この鮮やかなリボンを、よもや明後日の返答で誤魔化したりはできない、はず。答え合わせ途中の問題集から顔を上げた直ちゃん──大山直哉──は、しばし小首を傾げて考え込むと、それはそれは億劫そうに口を開いたわけだ。


「未散のテスト結果…赤点で青くなる…」


 …どんな珍回答よ…。しかも青くって色さえ合って無いじゃない!


「どっから来るの、その発想!ボケてる、直ちゃん」


 思いっきり睨みつけると、大仕事と言わんばかりにゆっくり体を起こした彼がずいっと目前に問題集を突きつけてきた。


「ボケはそっち」


 あっらー、見事な×の山。おや?おっかしいなぁ結構自信あった問題までことごとくペケって、コレ変。


「ありえない…」


 思わず出た呟きを、こんな時ばかり性能のいい耳が捕らえてやる気のないご返答が届けられた。


「回答欄がずれてる」


 ええ?!

 …そっか!それが原因なんだ。

 それじゃあ、一個空白を置いてこっちがこう来ると…あ、合ってる。よかったー、12月も半分過ぎた頃数学全滅は洒落にならないもんね。

 よかったよかったと胸をなでおろしていたというのに、先生は冷たかった。


「コレじゃ確実、落ちるよ?」


 無表情で言わないで。せめて慰めるとか、無理なら叱るとか、人間らしい感情は無いの?

 まぁ、そこも好きなんだけど。こう、いつでも誰にもでもフラットに怠そうって、いいよね。人間離れしてるのも魅力っていうか、他の人に行ったらドン引きされるところも格好良く見えちゃうっていうか…。

 怒って照れて、1人百面相を終えた頃気づいちゃったんだけど。

 折角クリスマスへ話を持って行ったはずなのに、遠ざかってる…。これじゃあどこからどう見ても、家庭教師とその生徒だよ~ちっともイベント感が無いよう。


 これじゃ、今年も記録更新だね。

 こっそり溜息を吐きながら、人形めいた無表情を諦め半分に眺める。

 直ちゃんに直接告白するのは、去年やめた。

 どんなにムードを作ろうと、好きを連呼しようと「はいはい」って面倒そうに流されるもんだから、さすがのあたしの強メンタルもヒビが入っちゃったのだ。


 好きを自覚してから通算4年、無駄な努力は虚しいと知る。


 それでも諦めの悪いあたしは、路線を変えて再チャレンジを計った。

 その名も『なし崩しにカノジョの位置に納まっちゃえ』大作戦。

 もてるくせに、ほとんど女の人に興味を抱かない直ちゃんだから、一番近くで過ごした人がカノジョの地位をゲットなんて、冗談みたいな話がまかり通っちゃうかも知れない。

 微かな希望に望みを掛けたってのに、敵は手強かった。さり気ないお誘いは気づかれることもなく、めげずのトライも歯が立たない。

 絶対外したくなかったクリスマスも、この調子じゃ覚えてるかどうかも怪しいし、ここはやっぱアレ、なのかなぁ。


「直ちゃん、ゲイ?」


 しまった、声に出しちゃった。

 探るような視線の先には、やっぱり表情を崩さない人。感情の読み取れない瞳と愛想笑い込みで見つめ合うこと30秒、重い口がゆっくり開いた。


「男に迫られたことあるけど、鳥肌立った。それに俺、童貞じゃない」

「…あー、それは失礼致しました…」


 どストレートに返されると、毒気を抜かれると言うか、返答に困ると言うか。

 二の句が繋げなくて、ぽりぽり頭なんて掻いちゃってると、ため息混じりの声が聞こえたりして。


「俺と同じ大学狙うなら、真面目にやって。勉強しないなら寝るから」


 先生、どうしてこんな無気力人間が大学通ったんですかねぇ?コミュ力は大学入試に含まれません?

 それでもまだ、何とかなるかもしれない。

 だからイブまで後4日、諦めないんだから!


 

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