蓋然性のある職業
2作目です。
振り返ってみるとちょくちょく不思議な出来事って起こってますよね
人生で一回くらいでいいから不思議な出来事に遭遇したいと、そう思って僕は生きている。
出来る限りなら、普通じゃ体験できないような毎日を過ごしていたいけど、当然そんなスペクタクルな出来事に遭遇する確率なんてそうそうないのは知っている。
だから一回だけ。
そんな不思議な出来事に遭遇する確率が一番高い職業は何て言っても学生だと僕は思うのだ。
普通あり得ないなんてことがポンっとありえてしまう、そんな突飛な事が起きてもしょうがないと思えるのは学生以外何もないだろう。
漫画では大体そうだった。
しかし、学生という職業は時間が限られている。どんなに今不思議補正がかかろうと学生終わればただの人なのだ。
学生…ああなんてすばらしいのだろう。僕はこの一日一日を大事に生きて行っている。ただ問題があるとするなら。学生を初めて早10年、僕の身に不思議が降りかかることなんて一度もなかったことだ。
「…な~あ、いい加減俺以外の人とも遊べよ。俺がいない時そんなんでどうすんの?」
昼休み、友人の浩平がそんなことをぼやきながら僕を追い払おうとする。
「そんなこと言うなよ。僕が知らない人と会話することは大の苦手だって分かってるんだろう、それに僕は君以外に友達を作らなくても困ったことは一度もないさ」
「俺が困るの。目くるめく学園生活がこのままじゃお前一色になっちまう」
それに関しては僕も同じ問題を抱えている。
「第一そんなんなのに、何で俺に話しかけられたん?結構俺クラスじゃ浮いてるような見た目してると思うんだけど」
と、地毛であるという金髪を触りながら、自分のコンプレックスを僻むように聞いてきた
「君と一緒にいればきっと何かしらのイベントに巻き込まれそうだからね。当然初めて声をかけたときは、膝はガタガタ、口もブルブル震えてたよ」
「あーそういえばそうだった、あの時は告白でもされんじゃねーかとビクビクしたわ」
「まさか、君にはぜひとも不思議な出来事の主役になってもらいたいのだ。
容姿は整っていて、やや背も高め。スポーツもそこそこでき、気さくに話しかけやすい。さらに地毛が金髪という、なんとも物語の主人公にうってつけの男なのだよ。
君こそ何かしらの主人公になる可能性を秘めている、まさに最強の男だと僕はそう睨んでる」
「へいへい、人をダシに使うのもいい加減にしてくれ、好意もないのに一緒にいられるとこっちも息が詰まる」
「好意ならあるぞ、君といるととても気楽にいられる。思わず不思議を探すことを忘れてしまうほどだ」
「そ…そうか、………そういうことを真顔で言うなよか、勘違いするだろ」
「なぜだ?別にいいじゃないか本心なんだから。おっと昼休みも終わりだな次の科目の準備に取り掛かろう」
僕はスカートを整え自分の教室へ戻って行った。
今日こそ不思議な物語があらんことを