48話
音音と零士の元に、言い様のない不気味な声が届いたのは、そのときだった。
「世喰らい」を一部破壊し、次の攻撃に移ろうとしていた、そのとき。
「なっ、何だ?!」
地面を揺らすような不気味な声。まるで呪いを発するかのように、黒く不気味な声。それは、天へと上る。まるで「世喰らい」を呪うかのように、不気味な言葉が天へと響く。
「あれは、何?」
言葉であれを表現するなら、呪詛を纏う。
「ハッ、なんだろうと関係ねぇよ。ぶった斬れば、いいんだろっ!」
零士は、剣を構える。そして、魔力を注ぎこんだ。
「紫雨流・奥義『宵雨の型・雨月』」
ジュワッ、と言う音と共に、「ムラクモ」を取り囲むように風が渦巻く。その様子は、剣を取り巻き、隠すように渦巻いているかのようだ。
「残宵・時雨落とし」
鋭い、茜色の閃光が、空を滑走する。飛翔する。しかし、呪詛の壁に、阻まれてしまった。
「おいおい、何だよ、ありゃ?」
「はぁ、あれには、攻撃が効かないっぽいわね。時に零士。貴方、私ら名義で支部に届いたメッセージ知ってる?」
その言葉に違和感を覚えながらも、零士は、頷く。
「俺は、そのために、招集された組織のメンバーの一人だからな。それが?」
「私らのところには、本部名義で『お前等の活動を潰す』とメッセージが来てんのよね。だから、私らの仲間も、そっちのA支部に向かったんだけど、あ~、貴方抜きで大丈夫なの?」
のんきそうな言葉。
「あ~、大丈夫だろ。馬鹿が多いが、その辺は、桜子がカバーしてくれるだろ」
零士の言葉に、こんな状況ですら音音は笑う。
「あ~、貴方、やっぱり桜子ちゃんのことが好きなのね」
「はぁ?急になんの話だよ」
零士は、呆れ顔で返す。それに対して、音音は、フッフッフッと不気味に笑う。
「相変わらず素直じゃないわね~。分かっているわよ。貴方が、桜子ちゃんのために色々やってんのは知ってんだから。も~」
ほっぺたを人差し指で突く音音。このノリに、詩春を思い出す。
「やめろ、鬱陶しい!」
「ほれほれ~」
緊急時にも関わらず、そんな風に振舞えるのは、やはり、心と力に余裕のある二人だからなのだろう。




