34話
見渡す限りの荒野に、咲いた一輪の花。赤く、紅く、赫く。とても赫い、その華の名前は、「朱頂蘭」。アマリリスは、綺麗に咲き誇る。周りは、荒野にも関わらず、そのアマリリスだけは、なぜか綺麗に咲き誇って居た。おかしいことではあるが、荒野の花など、誰も目もくれない。そもそも、荒野に人はいない。いるのは、蟲。蟲も、花は見ない。何も、おかしいものをおかしいと思わない。それは、果たして、どう言うことになるのか。
いや、人が、居た。現れた、だろうか。
「あら、アマリリス。綺麗ね」
「何?この花」
淡い桜色の髪。ゆるくカールのかかったその髪が垂れてきたので、耳に掛け、しゃがみこんでアマリリスを見る女性。大人っぽく、大きく膨らんだ胸部。少し肉つきのよい体。しかし、太っているわけではない。美しい大人の色気を持っている。
その横に居るのは、赤い目を持つ、黒髪の女性。鋭い目つきと肩ほどで切りそろえた髪。胸はあまりない。大きな魔装太刀を背負う、その姿は、一人の剣士を髣髴とさせる。いや、「和」の武士と言う雰囲気か。黒い羽織を着ている。
「もう、ネオンは、情緒が無いのね。アマリリスよ」
「アマリリス?聞いたこと無いわよ、リオン」
ネオンとリオン。二人は、しばらく花を見て居たが、背後からの声で、見るのをやめる。
「そろそろ、蟲が動き出す。動こうぜ」
青年が言った。
「レオン。そう。もう、そんな時間?さあてと、この場所ごと潰すとしますか」
ネオン……、赤羽音音は、魔装太刀・「ユキカゼ」を抜き、魔力を大量に込める。
「叢雲流・奥義『十束』」
白い魔力の斬撃が十字に地面に落ちる。蟲は、来る前に、切り裂かれた。十字の斬撃に。
「狩り残しはやめてくれよ」
レオンが魔装大剣・「エクスカリバー」を抜き、駆けて、蟲のあまりを全て切り裂く。
「これは、私の出番無しかしら?」
リオンは、しゃがんで、両手の上に顔を乗せ、暇そうに、眺めている。
「ちょっと、サボってんじゃないわよ」
「え~、嫌ですよ~」
そして、彼女達は動き出す。
――「死の音を奏でる者」
世界を揺るがすその組織。それは、気づいた時から始まって居たのだ。




