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紫天の剣光  作者: 桃姫
第三章
27/57

27話

 交換派遣は、一箇所とのみ行われるものではない。A支部は、B支部とC支部の二箇所と同時に交換派遣をすることにしていた。そのため、現在B支部に二人派遣していて、四人が派遣されてきている。この後、C支部に二人派遣して、二人派遣されると言う風なことになる。そして、C支部に送られる人員は、B支部派遣の時と同じ理由で桜子、シルフィーが送れないため、今回は、リーヴァ・ヘルナンドと藤堂百合に決まった。百合は、当初、嫌がっていたが、決まってしまっては仕方ないと、泣く泣く了承した。無論嫌がっていた理由は、零士と離れることになってしまうからだ。そんなこともありながら、B支部の交換派遣から一ヶ月の時を経て、ようやくC支部との交換派遣が成立したのだった。現在、A支部に滞在する、他支部のメンバーを上げていく。B支部より派遣されている橘璃桜、神道扇、赤羽獅音、黒減清華。D支部より表向きの理由は一時的に休養のため、比較的安全地であるA支部に来たヒレクシア・オルビア。彼女たちはそれぞれ、B支部の面々が特殊寮第一棟、オルビアが第三棟。これによりC支部の面々は第二棟が用意されている。また、C支部から来る二人が何者かは計りきれていないところがA支部にはあり、少し警戒をしている。

 C支部には、通常のランク分けの他に、C支部特別対策班と言うものがある。C支部は、Aランク候補生の人数が少ないため、害蟲の接近に対して弱い部分がある。しかし、特別対策班は、訓練場の利用許可を常時与えられ、自主的な訓練を常に行い、切磋琢磨し、自分のランクよりも実力的に強い傾向がある。また、特別対策班には、チェスの駒と同じ役職が与えられ、キング、クイーン、ナイト、ビショップ、ルーク、ポーンとなっている。現在は、キング、クイーン、ポーンが空席の分も含め一人の役職になっている。

 そのC支部特別対策班の人間が送られてくる可能性が高いと言われていて、戦力的には期待できるが、人間性を信頼できるかどうかは別の話、と言うことだ。よく言われる話に、強い者ほど、狂っていると言われることがあるくらいに。それに特別対策班は変人揃いだという話も有名だ。

 そんな注目の高い人間が二人も来るのだから、B支部の交換派遣を招き入れる時とは打って変わって、魔装空挺のポートには、人だかりが出来上がっている。案内役は、前回と同じく零士だ。魔装空挺が降りてくると同時に、人だかりに、建物内に入るように指示が出る。しばらく騒いでいたが、自分たちがここに居たら、魔装空挺が降りられないと言われ、渋々建物の中に入った。

 相変わらず大きい魔装空挺が零士の前に、強い風とともに、舞い降りる。そして、魔装空挺の出入り口に階段を付け、扉が開くのを待った。数秒ほどして、扉が開いた。そこからでてきた人物を見て、零士は思わず、息を呑むのを忘れた。

 この世の美貌をそこに集約したかのような、そんな人物がそこに居た。流麗に靡く銀色の髪は、陽の光にキラキラと眩い輝きを帯びる。

 その顔は、格好いいとも綺麗とも可愛いとも、どれとも言いがたく、どれとも言える。表現の仕様がないほどの美貌。

 その奥から共に降りてきたのは付き人だろうか。零士が着ている軍服のような制服と違い、スーツ姿、と言うより、執事服姿だった。

 階段を降りてきて、呆然とする零士に、話しかける。

「君が紫雨零士君かい?」

 その言葉に、零士は一瞬で警戒をする。なぜ、自分の名前を知っているのか。そう考えたからだ。まあ、ある意味では、零士も有名なので、知られていてもおかしくは無いのだが。

「はじめまして、こんにちは」

 笑みを浮かべ、挨拶をする。零士も、「お、おう。はじめまして」と言い返す。すると握手の形で手が差し出される。

「よろしく」

「ああ、よろしく」

 そして、手を握ろうとするが、握ってはいけないような気がした。そう、まるで、優雅な立ち振る舞いが、高貴な人を髣髴とさせ、自分とは違うと、壁を張ってしまう。そんな感じだ。だから、手を握らず、指先を持ち、そっと膝まずいて、手の甲にキスをしてしまった。零士自身も、なぜ、そうしたか分かっていない。

「いいのに、そんな堅苦しくしなくても。それより、君は、僕のキングにならないかい?」

 その言葉の意味が分からずに、零士は、思考停止してしまう。だが、すぐに、そういえば特別対策班は、そう言う役職があるのだ、と思い出した。

「お、おい!(キング)!こんな奴を王にするって言うのか!俺の王は、(キング)だけだと言ったはずだ!」

 付き人のような人物が怒鳴るように言った。忠誠を誓っているのか。それにしては、敬語は使っていないが。

「裕騎。君は勘違いをしているようだね。君は、あくまで、僕の所有物さ。それは変わらない。君は王仕えているのではないよ。僕に仕えているんだ」

 裕騎と呼ばれた青年は膝をつき頭を垂れる。

「僕はね、零士君。君が欲しいんだ」

 零士は、訝しげに見つめる。なぜなら、感覚的に分かるからだ。相手の力量が。このじわじわと締め付けるような圧迫感。

「お前、ランクは?」

 そう告げた瞬間に、裕騎が怒鳴ろうと、零士を見るが、それを止めた。

「僕のランクかい?ランクなんて飾りに過ぎないと思うんだけれど、それでも言うとしたらAランク候補生だよ」

 その言葉に、ますます零士の顔は険しくなる。

「嘘付け。お前、上だろう?」

 上と言う表現は、分かるものにしか分からない「Sランク」の隠語だ。

「どうだろうね。まあ、Aランク候補生と言うのは、まだ学んでいる身分だからね。本来のランクなら、僕も裕騎もAランクだろうね」

 諦めたような顔で零士は言った。

「まあ、お前がそれでいいならいいんだが、それで何で俺を誘う?俺はD+。ただの落ち零れだ」

「そうだ!ただの落ち零れなコイツは、ほっといて、A支部を回ろうぜ!」

 裕騎も零士の言葉に乗る形で、零士を責め立てる。

「まったく、裕騎、君と言う奴は……。君に僕の崇高な思考力の一欠けらでもあれば、また違ったんだろうか。まあ、いいさ。考えておいておくれよ」

 銀の髪を靡かせ、立ち去っていく。それを追って裕騎が立ち去っていく。

「けっ、こっちはお前の名前を知っているのに、お前が俺の名前を知らないのは不公平だから教えておくぜ。俺は、熾神(さかがみ)裕騎(ゆうき)だ。覚えておけよ、落ち零れ」

 嫌味交じりのその言葉だが、零士は、嫌味ではなく、彼の名前に食いついた。

「熾神……。ああ、そうか。凄腕の兄貴を持つと、Aランクでも苦労すんのか?随分と性格が、捻じ曲がっているようだが」

 零士の言葉に、二人の歩みが止まる。

「おい、待て。何でお前が、知っている」

「何が?」

 零士は、何気なく言ったつもりだったが、裕騎にとって、兄のことが出るのは、予想外だった。だから、強く反応してしまった。

「兄さんの名前は、公開されてないだろ。何で、お前が兄さんのことを知ってるんだ!」

「それは、彼もまた、上の人間だからだよ」

 あらぬ方向から、意外な真実を教えられ、驚く。

「コイツも、上?バカなこと言わないでくれ!」

 いかに裕騎と言えど、主からわけの分からないことを言われたら激昂する。

「馬鹿?僕がかい?それはないね。君は僕の崇高な思考を馬鹿にするのかい?それこそ、僕に対する冒涜さ」

 裕騎は震え上がる。零士も凄みのある声に、戦慄を覚えた。

「わ、わるい。だ、だけど、コイツが」

「行こう、裕騎」

 その言葉に裕騎は黙る。黙らざるを得なかった。

 二人は、去っていく。人のある方に行くとたちまち歓声沸きあがる。男も女も、つまり、同性からも異性からも憧れ、敬いの目で見られるほどの美貌。格好がいい、美しい、綺麗、どれをとっても説明することができないほどの美しさ。それは、誰が見ても美しいと思うほどの顔。体捌きのよさも凄く、寄って来る人波の間をスラスラと抜けていく。

 あれは、相当な達人だ。いや超人だろう。そう零士は思った。

「いけ好かない奴」

 そんな感想を呟きながら零士は、二人の背中をチラリと見て去った。


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