25話
三年の歳月を経て、一人の女性が、ベッドで目を覚ました。女性は、言った。
「そうですね。まるで、フシギの国にでも行っていたかのような、そんな気分でした」
そうやって、おどけた彼女は、旧友との再会を願った。すると、すぐに魔装空挺が手配された。どうやら、病人を優遇しているらしい。三年も寝ていたから脱退させられていてもおかしくないはずだったが、どうやら、彼女に便宜を図ってくれた人物が二人居るらしい。同期の「夢見櫓の女王」とそして、「漆黒の剣天」。その二人のおかげで未だに隊員で、しかも優遇されているらしい。
「全く、あの二人ったら」
笑みを浮かべる女性の笑顔は、まるで少女のようだった。その名を、ヒレクシア・オルビア。三年前に、清華……「陰清」に刺されてしまった女性である。
「さて、と。零士君は行方知れずで引退しちゃたって聞いたけど詩春ちゃんには、ちゃんと連絡が付いてよかったです。まあ、本人には、まだ言ってなくて、A支部に居ることを聞いただけですけれど」
オルビアは、魔装空挺から外を眺め、旧友との再会を心待ちにしている。
◇◇◇◇
A支部の支部長室にオルビアはいた。
「オルビア!」
将美の明るい声がした。
「清水先生!お久しぶりです。お元気そうでなによりです」
オルビアと将美は、旧知の間柄である。将美がA支部長になる前にD支部で知力指導をしていた頃の教え子である。オルビアが零士とであったときにもいた。ちなみに、同期である詩春だが、特例でオルビアと一緒の年に入隊して、即戦力としてあちらこちらにAランク以上の人間として、引っ張りだこだったため、将美の指導は受けていない。
「元気そうで何よりなのはこっちよ。もう大丈夫なの?」
「はい!」
◇◇◇◇
小一時間ほど支部長室にいたオルビアは、将美との話を終え、屋上にいた。屋上から外の景色を眺めていた。
すると騒がしい声が聞こえてくる。支部の子達かな、とオルビアは扉のほうを見た。そして、入ってきた女性と少女達。
「あっ、詩春ちゃん!」
オルビアは声を上げた。
「えっ、お、オルビア!」
詩春の驚きの声に、周りの少女達が心配そうな顔をする。
「あ、私の同期のオルビア。この間まで、入院してたのよ。ってゆーか、退院したのなら連絡してよね!」
「ごめんごめん。驚かせようと思って」
オルビアの悪戯をした子供のような表情に詩春は和らいだ顔になる。
「アリガトね。色々便宜はかってくれたみたいで」
「ううん、全然気にしないで」
そうして、少女達を交え数人で笑いあってる。璃桜、桜子、獅音、扇。このメンバーは最近のいつものメンバーだった。
二人で笑う中、再び、ドアが開いた。そして、オルビアが驚きの声を上げる。
「えっ……、れ、零士君?」
「ん。よぉ、オルビア。元気そうじゃねぇか」
そのやり取りに、皆が、驚く。
「零士ちゃん。そういえば、オルビアとどう言う関係なの?」
「あ?ああ、まあ、な」
「あははっ、ひ・み・つ、だよ。詩春ちゃん」
二人は、仲よさそうに、まるで姉弟のように笑っていた。
「それにしても零士君。引退したって聞いてたんだけど?」
その問いかけに対し、璃桜たちが、「零士の過去を知ってるの?」とオルビアを見ていたが、オルビアは、気づいていない。
「ああ、まあ、そりゃ」
「うんうん、引退なんてしてないよぉ~。知ってる?この子ってば、あんたが刺されたとき、引退した後だったのに、調査しに言って、色々調べてたんだよ」
「え、そうなの!アリガト、零士君」
満面の笑みのオルビア。零士は照れたように言う。
「いや、いつかの借りを返しただけだ」
「ほれ、これこれ!その後最近だとこんなこともしでかしてるんだから。もぅ~零士ちゃんてば」
詩春が一枚の紙を取り出す。それは新聞だった。A支部で発行されている新聞。見出しには大きく「漆黒の剣天復活か?!」と書かれていた。零士も知らない記事。
「おぉ、見事に写ってる」
その声は、璃桜の背後からだった。璃桜は思わずびっくりして、振り返っていた。周りの桜子や獅音、扇も驚いて背後を振り返っていた。
「ん?清華じゃないか。いたのか?」
「いた。と言うより、ついて来たというところ」
清華を見て、オルビアが大きく驚く。
「え?貴方、確か」
「ああ。三年前はどうもすみませんでした。刺してしまって」
「え、はあ、まあ、」
何かよく分からないやり取りになっている。
「清華。お前、何でここに居るんだよ。親父のとこに行くんじゃなかったのか?」
「はい。そして、戻りました」
零士に事情を説明出だす清華。
「わたしが、家に戻ると、火榮と雷華が絶賛バトル中。そして、わたしが雷華をなだめると、父上が出てきて、皆で『あんた壊れてる』コールをしたら、急に狂ったように笑い出して、『奴』によろしくと言って白い光に消し飛ばされる。これで、説明終了」
「なるほど。で、残りのお前の姉妹はどうした?」
「厄魔が引き取りました。彼もハーレムで喜んでいるはず」
とそんなやり取りをしていると、桜子が、口を挟む。
「あ~、よく分からないけど、つまり、また何か厄介ごとに巻き込まれてたってこと?」
「そう言うことだ。オルビア、オムライス」
零士は、適当にまとめてオルビアに昼食を頼む。
「え~、退院早々の病人をこき使うんですか?まあ、いいですけど。零士君のは、少し大きめに作ってケチャップで文字書いてあげますよ」
笑いながら、二人は、屋上を出て行く。取り残されたものたちは、呆然としていたが、抱いた感情は一緒だった。
『(なんか、恋人って言うより姉弟みたいだなぁ~)』
そんな感想だ。




