1話
この作品は、フィクションです。この作品に登場する人物、団体、組織、地域名は、一切実在のものとは関係ありません。また、更新は不定期です。
世界ができ、やがて生命は誕生した。命あるものはやがて、進化をし、人と言う存在が生まれた。そして、人が知能を持ち、なお、進化を続けようとする中、ソレは、現れた。
五世紀、正確には、四百二十六年、人類の天敵、最大の脅威とも言えるソレは、大地を破壊しながら現れた。突如現れたソレに人類はなす術なく蹂躙された。多くの土地と人命を奪ったソレを、人々は、こう呼んだ。
――「幽賊害蟲」。通称「害蟲」。
そして、四百三十五年、なすすべなく蹂躙されていた人類に希望の光が差した。「黎明の王」、後にそう呼ばれる一人の男が、「幽賊害蟲」に反撃を仕掛けたのだ。そして、「黎明の王」は言う。
「人類は、剣を持って戦うべきだ。このまま虫に蹂躙されていていいわけがない。組織を立ち上げるのだ。奴等と戦うための組織を」
そして、四百三十六年、「対幽賊害蟲部隊」。通称「ネメシス」。そう呼ばれる組織が創られたのだ。
それから百年あまりが過ぎ、「黎明の王」の再来、「漆黒の剣天」と呼ばれた神童が引退してから五年。一人の青年が「ネメシス」に所属した。名を紫雨零士。彼は、「落ち零れ」と揶揄される。これは、そんな、彼のお話。
「対幽賊害蟲部隊」第A支部支部長室。そこには、現在のA支部長である清水将美と副支部長の佐藤直典が居た。
「ねぇ、直典副支部長」
「なんだね、支部長」
まだ二十代くらいの女性と四十代の厳格そうな男。女性の方が支部長で男性の方が副支部長である。
「あの落ち零れ君、どうします。やっぱり隊に居ても迷惑だから、出て行ってもらいませんか」
「ふむ、結論を急ぎすぎるのはよくない。総合評価がD+であっても、成長すれば、可能性はある。それに、あくまで自主性を重んじなくてはならない」
「ですけどね、テストは白紙で出したり、授業中寝たり。そんなことしているんですよ。筋力トレーニングもやっている様子は見られない。魔装大剣も整備してない。これじゃあ、もし、害蟲が襲ってきた時に対応できず、死ぬだけですよ!」
「とりあえず、本人を呼び出すか……」
「そうですねぇ……。いえ、呼び出したところで何ら変わらないのは今までの体験でわかります。周りの人間を呼び出して、彼の私生活を探ってみたらどうでしょう」
「ふむ、そうだな。そうしよう。そうとなれば、まずは、染井桜子、か」
そう言って、副支部長は、電話を取った。そして、ある少女を支部長室に呼び出したのだった。
華奢な体つきの少女が室長室にやってきた。長い髪を耳の上辺りでまとめて縛る、所謂ツインテールと言う髪型の少女。目は大きく、その目を縁取るように長いまつげが伸びている。陶磁のように白い肌。あまりに白すぎて神秘性よりも病気を疑ってしまうほど。常日頃、訓練に外へ出ているのが嘘のようだ。
「お呼びでしょうか、支部長」
「よく来てくれたわね、染井さん」
やってきた少女の名は、染井桜子。彼女は、紫雨零士と言う少年と幼い頃から一緒だった幼馴染である。
「聞きたいことがあるのよ」
「聞きたいこと、でありますか?」
将美は桜子に問う。
「聞きたいことは当然、紫雨零士についてよ」
「零士について、でありますか?」
桜子は、怪訝そうに顔を歪めるが、すぐに元に戻す。
「そう、紫雨について、彼は、もしかしたら、これ以降、襲撃で命を落とす可能性があるわ。それで、彼を辞めさせるべきか否かを調査しているのよ」
桜子は、それを聞き、得心がいったと言うような顔をした。
「そういうことでしたら、問題はありませんよ。零士が死ぬことはありませんよ。むしろ、辞めさせたほうがこちらの被害が大きいと思いますよ」
桜子の言葉に、将美は訝しげに眉を顰める。
「それは、どういう意味かしら?」
「いずれ分かることだと思います。それでは、自分は、これで失礼します」
桜子は、部屋を出て行った。桜子が出て行ってから、暫しして、将美は誰に聞かせるわけでもなく呟く。
「被害が大きい?いずれ分かる?どう言うことなのよ……」